木は森に隠せ、ブツはブックに隠せ・アンティークな真鍮製ボックス

小学生のころ、探偵小説に夢中になっていた時期がありました。

もともとは友達の影響で読み始めたのですが、すっかりそのトリコになってしまい、当時子供向けに発行されていた怪盗ルパンやシャーロック・ホームズといった本をずいぶん読んだものです。

ポプラ社の少年向け探偵小説集

つい夢中になってしまい、授業中にもこっそり読んだりしていました。

またテレビやマンガなどでも探偵ものやスパイものといった冒険活劇は人気があり、スパイ手帳なるものまで売り出されたりして、あの頃の子供はそういった遊びもよくやりました。

そんな当時の探偵小説やスパイ映画といったものの中に、分厚い本や辞書にピストルを隠すというシーンが出てきました。つまり本のページをピストルの形に切り抜き、そこにピストルを収納して何気なく本棚にさしておくというわけです。まあ偽装というやつですね。

私はそのアイデアにいたく感心いたしました。なにしろそれくらいなら、実際にやれそうではありませんか。
これが腕時計にカメラを仕込むとか、自動車が空を飛ぶとかになると、ちょっと子供では手が出ません。そもそも当時の子供は時計もカメラも持っていませんし、ましてや自動車や飛行機はなおさらです。

それが本を切り抜くというだけならできそうです。
でも家にある厚い本といえば百科事典くらいです。しかしさすがに百科事典を切り抜くわけにはいきません。なにしろ当時の親というのは、子供より物の方が大事でしたから、高価な百科事典を台無しにしたのがバレたら、何回頭を叩かれるか知れたものではありません。頭を良くするための百科事典のせいで、逆に頭が悪くなりそうです。
そこで私は、厚さの充分ある少年マンガの月刊誌を切り抜くことにしました。本当は固い表紙の本がベストなのですが仕方がありません。

早速私は月刊誌の表紙をめくり、1ページ目におもちゃのピストルを置き、その輪郭をマジックペンでなぞって行きました。ピストルを押さえている手と、ペンを動かしている手が交差するときに、ピストルが少し動いてしまいましたが、まあこのくらいは切り抜くときに修正すればいいでしょう。

線が引けたらいよいよカットです。
今みたいによく切れるカッターナイフがあるわけではありません。使うのは「ボンナイフ」と呼ばれる10円のカミソリです。
ボンナイフの四角い刃の先を、引かれた線の上に突き立てぐっと力を入れます。刃先は2、3ページほど紙を貫いたようです。
次はその突き立てた刃先を線に沿って動かすのですが、これが意外に力がいるのです。子供の力ではボンナイフはなかなか動きません。
それでもぐりぐり左右に動かしながら手前に引いて行くと、少しずつ動き出しました。
しかしほんの2、3ページを切り抜くのにこんなに時間をかけていては、ピストルが入る深さにまでするのは大変です。

そこで今度は少しムキになって強く引いてみました。
するとボンナイフからカミソリの刃が外れてしまい、勢い余った刃のない本体の金具が、無残にもページをズタズタに切り裂いて行ってしまいました。
まあ道具も道具ですが、マンガ雑誌の紙質なんてその程度のものです。

それで私はすっかりやる気が失せてしまい、ピストル(おもちゃですが)を本に隠すという偽装作戦はあえなく失敗に終わったのであります。

さて、ずいぶん前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

しかしあれからウン十年、私はついにこんなものを手に入れました。

ブックタイプの真鍮ケース

どこからどう見てもただの本ですが・・・

本です。
はい、もう本以外の何物でもありません。

でもちょっと待ってください。
本にしてはビスが打ってあったり・・・おやおや、鍵穴までありますね。

ブックタイプの真鍮ケース

横にしても本にしか見えませんが・・・

あっ、もしかしたらこれは、中にピストルかなにかを隠してある本なのではないでしょうか。

それでは、注意しながら本の表紙をめくってみましょう。

ブックタイプの真鍮ケース

な、なんと中は・・・

パーン!

おお、びっくりしたあ!

いや、驚かせてしまい大変申し訳ありません。
でも先ほどの「パーン」というのは銃声ではなく、インド庶民に人気のある嗜好品の名前なのです。私が口で言いました。

パーンは古くからインドにある嗜好品で、コショウ科のキンマの葉でカルダモンやクローブなどのスパイス類を包み、丸ごと口に放り込んで噛んで楽しむものです。

インドの嗜好品パーン

パーンは高級レストランでも食事の後に出されたりする。

街中にはこのパーンを商う店がたくさんあり、注文を受けてから葉っぱに石灰の汁を塗り、客の好みに合わせて配合した各種香辛料を包んで渡してくれます。

インド・街中のパーン屋

パーン屋は多数の材料を巧みに組み合わせてパーンを作ってくれる。

というわけで、今回ここでご紹介する「本」は、そんなパーンを家庭で楽しむための材料容れなのです。
これは推定で30年から50年前のもので、実際にインドのどこかのご家庭で使われていたものです。

ブックタイプの真鍮製パーンケース

古いものなので、実際には食品以外の小物入れにご利用ください。

でもわざわざ本の形にしてあるということは、人に隠れてやるような・・・・

いえいえ、パーンは決して麻薬ではありません。ただのスパイスですから、これならガニマール警部だってコロンボ警部だって手出しできません。でももしかしたらペッパー警部は興味を示すかもしれません。

また今回は手提小箱タイプのパーン容れも手に入れました。まあステキ!
こちらも同様に古いもので、もちろん一点物です。

ブックタイプの真鍮製パーンケース

こちらもずっしりどっしりのしっかりした作りです。

そんなアンティークなパーン容れにご興味のある方は「ラクダ隊商パインズクラブ楽天市場店」にて販売しておりますので、ぜひご覧になってください。

*すでに売り切れている場合もございます。その際は何卒ご容赦願います。