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礼節を知るにはまず衣食が足りていることが条件なのだ:インドの禁煙啓蒙活動

         
  • 公開日:2014年7月18日
  • 最終更新日:2022年7月25日

「衣食足りて礼節を知る」なんていう通り、人間まずは食べることが第一である。なにしろ何か食べなければ死んでしまうのだから。

そして命をつなぐだけの食事が毎回きちんとできるようになると、そこで初めて味とか素材の良しあしとかが気になり始める。
同じ食べるならおいしく食べられるに越したことはないのだ。

さらにさまざまな食事から選んで食べられる状況に至ると、はたしてその食事が健康に良いものなのかどうかが気になり始める。
せっかく命を維持するために食べているのだから、できるだけ体に良いものを選んで食べ、健康に長生きしたいと思うのは当然である。

ということで、日本も戦後の食うや食わずの状態から見事に脱出し、脱脂粉乳やクジラの竜田揚げを経てついには飽食の時代となり、究極のグルメブームが到来し、まいう~となり、宝石ばっこっやぁ~と並行し、黒酢ニンニクすっぽん卵黄軟骨セサミンコンドロイチンアントシアニン僕イケメンなどがもてはやされている。ご紹介漏れはございませんでしょうか。

で、ここでようやくインドの話になるのだけれど、経済発展著しいインドでも、最近では健康に対する意識が高まっているようなのである。

前回(2013年11月)インドに行ったとき、宿のテレビで洋画を見ていると、時折画面になにやら字幕が出る。
なんだろうと思いつつも、小さなブラウン管テレビを少し離れたベッドの上から眺めているだけなのでなんだかよくわからなかった。

しかししばらく(正確には何日か)見ていると、字幕が出る法則がわかってきた。
どうやらその字幕は、映画の出演者がタバコを吸おうとすると出るようなのだ。
そこで画面に近づいて字幕をよく見てみると、はたしてそれは「喫煙は健康に悪い」という意味の言葉なのであった。
それにしてもその字幕を出すタイミングというのが、まるで先輩がタバコを取り出すと間髪入れずにライターで火をつける後輩のようなのだ。まるで花の応援団みたいなのである。
インド版花の応援団は、俳優がポケットからタバコを取り出し、口にくわえる瞬間を狙って、「オッス!失礼します!」とばかりに字幕を出す。そして吸い終わると字幕をひっこめ、また吸うと出す。
実にせわしないというかけなげというか・・・これじゃインドでは刑事コロンボなど落ち着いて見られたもんじゃないだろうなあ。

さて、詳しい数字は知らないが、おそらくインドは日本より喫煙者率が高いのではないかと思う。少なくともまだまだタバコは、庶民が気軽に楽しめる大切な嗜好品であることに間違いない。

そんな愛煙家の底辺を支えているのが「ビディ」という安タバコである。こいつは葉っぱを刻まず、ただくるくるっと巻いただけのもので、パッケージも安っぽい包装紙で包んだだけである。

そんな安タバコの安っぽい包装紙にも、ついにタバコによる健康被害をわかりやすく伝える広告(?)が入るようになった。
しかもそれはタバコによって害されたと思しき肺のカラー写真と、「SMOKING KILLS」という恐ろしい文言である。インドの安タバコのパッケージう~ん・・・なんだか上のクジャクの羽まで、害されているように思えてしまう。

ということで、インドの庶民もこれからはタバコを覚悟して吸うようになるのであろうが、はたしてその前に充分な食事が取れているかどうか気になるところである。

なにしろ礼節だけでなく、健康も衣食足りて初めて知るものなのだから。