「お出かけは、ひと声かけて、鍵かけて」なんて標語がだいぶ昔にありました。
鍵は我々の財産並びに生命を守る大切な道具ですが、最近は犯罪も巧妙化されており、簡単な鍵ならすぐに開けられたり壊されたりするようです。
そこで普段から隣近所のお付き合いをちゃんとしておき、留守をする時には近所にひと声掛け、留守宅に近づく曲者に目を光らせてもらうという方法が、現代社会においてこそ有効な抑止策になるのかもしれません。
さて、旅先の見知らぬ土地で初めて泊まるホテル、しかも従業員の質もどうなんだかよく判断できないようなインドの安ホテルなんかでは、鍵は安全安眠を確保するまさしく「カギ」となります。
で、そんな安ホテルの鍵というのが、この写真にあるような南京錠なわけですよ。部屋のドアの外側には、鉄の棒でできたカンヌキが取り付けられています。
そしてそのカンヌキが動かないようにしているのが、この南京錠なのです。
インドの南京錠の特徴は、フックを本体に押し込んだだけではロックされないということです。押し込んで手を放すと、また開いてしまいます。
ではどうするのかと申しますと、フックを押し込んだ状態で鍵を回してロックするのです。
この方法は一見面倒なように思えますが、「鍵を閉める」という確固たる信念の下に執り行わねば閉めることができないため、何の考えもなしに軽い気持ちでうっかりがちゃりと閉めてしまうことがありません。なので通りがかりの人がつい出来心で南京錠を閉めて逃走してしまうという、いわゆる「ゆかい犯」を作らずに済むので、実に健全な明るい社会づくりに貢献する正義の南京錠とも言えるのです。
ところがこの南京錠は、外側からドアを閉める場合だけに有効なものなのですね。部屋に滞在しているときにはドアの内側にあるカンヌキで閉めますので、南京錠は無用の長物なのです。せいぜいこうして写真を撮るくらいにしか使い道はありません。
さらにこういう構造のドアですと、部屋に滞在中、何者かに外側のカンヌキを掛けられてしまうと、もう部屋から出ることができないのです。泣きながらドアをドンドン叩き、「もうしないから出してよお!おかあちゃ~ん!」などと叫んでもダメなのです。なにしろ外にいるのはおかあちゃんなどではないのです。そう、もしかしたら質の悪い従業員で、開放と引換に何か金品を要求してくるかもしれません。
まあ幸いにも私は、子どもの頃に物入れに閉じ込められたことはあっても、インドのホテルの部屋で閉じ込められた経験はありません。
でも、用心するに越したことはありません。
インドの見知らぬホテルに泊まるときは、日頃から隣近所の部屋の人とお付き合いをしておき、お互いに不良従業員のカンヌキ掛けに目を光らせることも必要かもしれません。
もっとも旅行者の中にも悪いやつがいないとは言い切れませんので、そいつがカンヌキを掛けてしまうかもしれません。
うー、安心して寝られやしない・・・
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