2001/05/31 インド式エアコンの効果 パナジ
ホテルはエアコン付きの部屋に泊まることにしている。
インドに行ってそんな贅沢をするなと私を責める人もいるであろう。そんな人に言いたい「あー、そうですか!」っだ。
とにかく私はエアコンなんか無くても全然平気なのだが、私の体が必要と言うのだ。
なにしろ体が資本である。体がなければ旅行もできなくなるではないか。
誰が言ったか忘れたが、肉体は精神の乗り物である。大事に使えば一生ものなのである。
パナジという町でもエアコン付きの部屋を借りた。もちろん一番高価な部屋だ。600ルピーもするのだ。
部屋に入るといつも見慣れたインドのエアコンと何だか違う。
何だろう?
近くに行ってよく見ると前面カバーがそっくり無いのだ。冷気の吹出口は四角い穴がぽっかり開いていて、そこからぼーぼーと冷気が出ている。
吸気口は通常フィルターなんかが付いていて、お部屋のホコリがエアコン内に入り込み、それが原因で故障なんかしないように守っていて下さるはずなのだが、それも無い。熱交換器の毛細管がむき出しになっている。
まあとにかく動いていて冷気が出ていれば「エアコン」と呼んで支障はないであろう。外見で判断してはいけないのだ。
子供の頃読んだ「乞食王子」を思い出し、風雪に耐えたエアコンにねぎらいの言葉をかける余裕すらある私であった。
パナジは内陸のデリーに比べれば日中35度くらいとそれほど暑くはないのだが、それでも夜はエアコン無しでは寝苦しい。とにかく夜は休息が必要なのだ。
私は当然、金で買った権利であるエアコンをつけて寝ることにしたのだが、どうもサーモスタットの調子も悪いらしい。
少し冷気を弱くしたいのだが、開けっ放しの吹出口からは相変わらずぼーぼー冷気が出ている。
しかたがないのでそのまま寝ることにした。
やがて睡魔が襲ってきた。5人くらいのスイマーがクロールで泳いで来て、私を眠りの世界へと連れて行ったのである。
夜中にあまりの寒さに目を覚ました。
なにしろこのホテルは毛布を貸してくれないのだ。おまけにただの穴と化した吹出口は、風向きも変えられないので、私の足めがけて寒風を吹き付けるのである。
シーツ一枚しか掛けていない私は、眠りながらもあまりの寒さにその薄い布をしっかりと掛けており、白いシーツに体がくっきり浮き出た姿はまるでミイラのようであった。
とにかくいったんエアコンを止めることにした。
しばらくすると、今度は暑さで目を覚ましてしまった。
再びエアコンのスイッチを入れる。
するとこのポンコツエアコンはすごい音を出した。
音と言うより車で猫を轢いてしまった時のような声を出すのだ。
どうやらベルトか何かがスリップしているらしいのだが、すごい音だ。
真夜中の私の部屋には「ギャー、ギャー、グィァー!」と猫の苦しむ声が響き渡り、あまりの不気味さに暑さも忘れる私であった。