「風の宮殿」
デリーから南西に進むこと約260km。そこにラジャスタン州の州都ジャイプールはある。
なんか普通の旅行案内書みたいな書き出しになってしまいました。
「ジャイプールはある」だって・・・なんでしょ・・・くすくす・・・・
えー、まず「ジャイプール」という街なのですが、この街は古い城壁に囲まれた旧市街と、その周辺に広がる新市街からできております。
そしてそういう構造の街ですと、当然観光スポットは旧市街に集中しているわけですね。
なにしろ城壁の外の街は後からできたわけです。できることなら城壁の中に家を建てたかったのですが、そこはすでに手狭になっており、しかたなく城壁の外に新たに造成された物件を家族で見に行き、「おい、どうする?」「あなたの退職金を前借しても、この辺が精一杯ね」「ねえねえ、僕のお部屋もできる?」「子どもは大人の話に口を挟むんじゃない!」「子どもに当たるのはよしてくださいな!」「なにお!お前までこの俺をばかにするのか!俺だってなあ・・・俺だって毎日一生懸命働いてるんだ・・・うっうっうっ」「あなた・・・ごめんなさい・・・・ねえ、この辺もまんざら悪くはないわよ。あんな旧市街のごみごみして空気の悪いところより、ここの方がぜんぜんいいわ。あなた!ここにしましょうよ!」「わーい!ぼくのお部屋、ぼくのおへやあ!」なんてことでローンを組んでめでたくムハマドさん一家は新市街に家を構えたわけでございます。
とまあ、そんな一家団欒を見に行っても仕方がありませんので、やはり正しい観光客は旧市街を目指すわけです。
旧市街は今でも王様の住む「シティーパレス」を中心にできております。あっ、そうそう、ジャイプールの「プール」というのは、「城壁で囲まれた街」という意味なんだそうです。
で、「ジャイ・スィン」という人が作った街なので「ジャイプール」というんですね。
なので、ムハマドさん一家の新居は城壁の外ですので、正確には「プール」ではないわけです。くすくす。
さて、そんな旧市街の中でももっとも人の目を惹きつけるのは、なんといっても「風の宮殿」でしょう。
風の宮殿(ハワーマハル)はシティーパレスの一部でありまして、かつて宮廷に仕える女性たちが街の喧騒を垣間見たと言われているように、バザールに面して建てられています。従いまして通りを歩くわれわれのような庶民の側からも、よおーく見える場所に建っているというわけです。
風の宮殿の名前のいわれは、建物の構造が極端に奥行きのない平べったい形をしている上に、その前面には無数の窓があるためにたいへん風通しがいいというところから来ています。
それでは「百聞は一見にしかず」、まずはその姿を見てみましょう。
はい、これが「風の宮殿」をバザールの側から見たところです。
前面に出窓がたくさん並んでいる・・・というより、出窓のかたまりといった方がいいかもしれません。
まあそれくらいたくさんの窓があるというわけです。
出窓には幾何学模様の透かし彫りが施されているために、外からは中の女性の顔は見えなかったといいます。
私のカメラはあまり広角が利かないもので、バザールと風の宮殿の位置関係がわかりづらいかと思います。
そこでインド政府観光局のパンフから、写真を一枚お借りして載せておきますので、風の宮殿のすぐ目の前が道路だということを確認しておいて下さい。
(ちょっと古そうな写真ですが、まあ今もこんなもんですね)
ではどれくらい薄い(奥行きのない)建物なのかということを、横から見てみましょう。
それではいよいよ風の宮殿の内部に入ってみましょう。 入り口は建物の裏手になります。
内部は中庭を囲む回廊になっていて、目指す部分は中庭の反対側、あの赤い部分です。
しかも作業を行っているのが肝心の中央部分だったために、あの透かし彫りの出窓からバザールを垣間見て往時をしのぶということができませんでした。
建物自体奥行きがありませんから、当然階段なども狭いです。
その外人女性と比較して見て下さい。
階段の途中ですれ違うのは至難の業です。
しかも途中はかなり薄暗いので、スリや痴漢、足の踏み外しなどに注意が必要です。
ここまで上って来ますと、下から見上げた風の宮殿もすぐ目の前です。
手を伸ばせば届きそうなくらいの間近で見られるので、なかなか感動ものなのですが、考えてみたら工事などしていなければ、そこに入ることができたわけです。
ちぇっ、ついてねーの・・・
まあ、そんなことを言っても仕方ありません。
あー、これがかつて宮廷の女性たちが眺めたのと同じ風景なのか・・・ふむふむ・・・
今は車やバイク、オートリキシャにサイクルリキシャなどが行き交っていますが、宮廷の女性たちが見た風景は、いったいどんなだったのでしょうか・・・
ウマにラクダ、ロバなどが行き交い、そのフンの匂いが風に乗ってこの宮殿を吹き抜けていたのでしょうか・・・・・・ちょっと、やだな・・・
先ほどの風の宮殿を真横から写した写真は、この窓の先に見える交差点の角で撮ったものです。
交互に眺め、上と下の両方の視点をお楽しみ下さい。
さて、今回は残念ながら透かし彫りの出窓から外の風景を見ることはできませんでしたが、インド人もそうそういつまでも修復工事をしてないと思います。きっと皆さんが訪れる頃には出窓のところに行けるのではないかと思います。
どうぞお誘い合わせの上、ぜひお出かけ下さい。
それでは最後に、風の宮殿の真下から出窓を見上げてみましょう。
どうです!この美しさ!
あれ?
近くで見ると・・・ちょっとボロが目立つかも・・・
何事も「夜目遠目傘の内」かもね。
ではまた次回!