インドにも車がたくさん走っています。
大気汚染もひどく、毎日のニュースなどで「各都市別今日の汚染濃度」なんてコーナーもあるくらいです。
そんな大都市の大通りは当然車の行き来も多く、道路を横断するのもなかなか大変なのです。
もちろん信号機のついた交差点などでは、日本と同じで青になったら渡ればよいのですが、自分が渡りたい所にいつもそううまい具合に信号機があるわけではありません。
となると、道の向こう側へ行くには、スピードを上げて行き交う車の間隙(かんげき)を縫って渡るしかないのです。
これはとても運動神経が要求されます。西城秀樹くらいは運動神経が必要です。
ヒデキかんげき!って言うくらいですから。
とにかく車はやたらスピードを出しており、歩行者に対しての配慮なんか微塵も見せません。
逆にもたもた横断してようものなら、さらにスピードを上げて迫ってくるくらいです。
わざわざ渡る方向に幅寄せして来るなんてこともあります。
こんな状況で、はたしてヒデキは道を渡れるのでしょうか?
そんな訳でヒデキは、ニューデリーのとある大通りに立っています。
これからこの大通りを渡ろうと言うのです。
行き交う車の間隙を縫って向こう側に渡り、「ヒデキ感激!」と叫ぼうとしているのです。
それにしても車の流れが切れません。
おっ、すこし間があいたぞ。次の車はまだあんなに遠くにいる。
今だ!ヒデキ!渡るんだ!
びゅん!
うわっ!
いやぁ~、危なかったですね。意外とスピードを出していました。日本の街中では考えられません。
やはりここは日本ではなくインドなのです。郷に入っては郷に従え、西城に入ったら西城に従え、野口五郎岳に入ったら遭難しちゃったってな具合です。
とにかくここはインド人に従うのが最善の策と言えるでしょう。
インド人はいったいどうしているのでしょうか?
あ~、結構みんな渡ってますね。
車の動きを見て・・・車道に出て・・・いったん戻る!
車の動きを見て・・・車道に出て・・・いったん戻る!
車の動きを見て・・・車道に出て・・・あっ!渡った渡った!
いやぁ~、渡りました。見事に向こう側へ渡って・・・あっ、「ヒデキ感激」って言ってますよ。
先を越されちゃいましたね、ヒデキさん。
実はこの横断方法は、野球の盗塁と同じ要領なのです。俗に「盗塁横断法」と呼ばれる方法です。
それではヒデキさん、行ってみましょう。
車の動きを見て・・・リードして・・・いったん戻る!
車の動きを見て・・・りー、りー、りー・・・バック!
車の動きを見て・・・りー、りー、りー・・・ゴー!
おっと!車が一瞬早く通り過ぎる!続けて2台目だ!車が切れないぞ!ヒデキ足が止まった!
今度は後をバイクが通り過ぎる!ヒデキの前後を次々と車が通り過ぎる!ヒデキ完全に1、2塁間に挟まれた!万事休すだ!
いやぁ~、ダメでしたね、ヒデキさん。どうしたんですか?
え?「ゴー」がよくなかった・・・
でもこれではいつまでたっても渡れません。
このままでは「ヒデキ感激」どころか、「ヒデキ棺おけ」になってしまいます。
ちょっと待って下さい・・・インドの子供はどうやって渡っているのでしょうか?
あ~、なるほど・・・分かりました。親と一緒に渡っているんですねぇ。
子供は渡るタイミングを自分で判断しないで、親の引く手に頼っていたのです。
親が走れば走る、止まれば止まるという、至って簡単な方法です。
実はこの横断方法は、虎の親子が川を渡るのと同じ要領なのです。
親虎は子虎の川上を歩き、川の流れが子虎に激しく当たらないように自分の体で防ぐのです。
俗に「虎の子渡し横断法」と呼ばれるものです。
それではヒデキさん、誰かに手をつないでもらいましょう。
え?そんなのみっともなくていやだ・・・
それでは仕方ありません。ヒデキさんにはインド人の川下を渡ってもらいましょう。
インド人の影に入って、インド人と同じ動きをして下さい。
いいですか、車の動きではなくてインド人の動きを見るんですよ。
インド人の動きを見て・・・少し前に出て・・・いったん戻る!
インド人の動きを見て・・・少し前に出て・・・いったんもど・・・
あらら・・・インド人だけ渡っちゃいました。
どうしたんですか、ヒデキさん!
次はちゃんとインド人にぴったりくっついて渡って下さいよ。
絶対にインド人から離れちゃいけませんよ!いいですね!
インド人の動きを見て・・・少し前に出て・・・いったん戻る!
インド人の動きを見て・・・少し前に出て・・・走った!
走ったぞ!走った!インド人が走っていく!
ヒデキもぴったりついている!
インド人さらに走る!ヒデキ並走している!がんばれヒデキ!離れるな!
おっと!インド人車に飛びついた!ヒデキも飛びつく!はなすなヒデキ!
どうやらあのインド人はバスを待ってたようです。
二人はバスに飛び乗ってどこかへ行ってしまいました。
それでは私だけここにいてもしかたないので帰ります。
ちょうどオートリキシャが来ました。
「へい旦那、どちらまで?」
「向こう側」
あっ、みなさん。これが一番安全確実な横断方法なのです。
俗に「渡し舟横断法」って言うんです。
さらに料金を負けさせて乗るのを「値切りの渡し」って言うんです。
じゃ、みなさん、ごきげんよう!
♪ついてぇ~おぉ~いでぇ~よ~、ついてぇ~くぅ~るぅ~かぁ~い~
インド人について行くのは、なかなか大変です。