さて、機内食も済んだところで、われらがエアインディアでも映画の時間になります。
エアインディアでは、インドのテレビドラマや洋画などが見られるのですが、これがずーと延々と続くのです。
それは、ようやく食事の世話という重労働から開放された乗務員が、「あとは映画でも見せておけば文句もなかろう」という魂胆から、なるべく長時間の興行にしようとするものと推察されます。
それが証拠に機内が暗くなってからは、呼べど叫べど、たとえスチュワーデスの呼び出しボタンを押そうと、乗務員はまず姿を現しません。ですからエアインディアでは、何でももらえるときに確保しておかなければならないのです。
こうなると、食事の時に食べ残して座席ポケットに入れておいた、パンやミネラルウォーターなどはもはや貴重品となり、乗客同士の間で高く取引されたりするのです。
エアインディアに乗るときは砂漠の旅と同じ装備と覚悟が必要なのです。
まあ映画を見るのもいいのですが、音を聴くためのヘッドセットが旧式のビニールホース式のものなので、たいていどこかがつぶれていて音がよく聴こえません。
乗客はスクリーンを凝視しながらも絶えずビニールホースのつぶれた箇所をこねこねするのですが、手は2本しかないため3箇所以上の閉塞箇所の修復は不可能であり、かといって、どこぞにもぐりこんで冬眠状態になってしまったスチュワーデスに交換を頼むこともできません。
さらにヘッドセットの差込部分は肘掛の内側から自分の方に向かって直角に突き出ているため、体格の立派な方などは自らのお腹で圧迫してしまい、地の底からかすかに聞こえて来るような声に耳を澄まさなければならないのです。
それでもスクリーンを見られる人はまだ恵まれている人たちで、座席によってはまったくスクリーンが見えないという状況も発生しているのです。
最近私はエアインディア以外の航空会社を利用したことがなく、他社のスクリーンの設置状況と改善事例などは分からないのですが、エアインディアでは中央のスクリーンしかないために、トイレのすぐ横の席などになってしまうと全然見えないのです。
機内誌なども満足にないエアインディアでは、映画がだめなら寝るしかありません。日本時間ではまだ夕方の4時前ですが寝るしかありません。
咽が渇いてきましたが寝るしかありません。
あっ、いつの間にか寝てしまったようです。
らくだに揺られてオアシスを探す夢を見てしまいました・・・
気が付くと映画は終わったようです。
少し高度も下がって来たようです。
さあ、まもなく経由地のバンコク・ドンムアン空港に到着です。
はたしてそこはオアシスなのでしょうか?