今回も、インドのホテルに於けるバスルーム事情というものをテーマに、お送りさせて頂こうと思うわけですが、なんでこの写真なんだよ?えっ?このじいさんがバスルームの事情に詳しいのかよ?なあ、おい?と疑問に思われる方もあろーかと思います。ごもっともです。ここはインド亜大陸最南端の街カニャークマリのホテルです。
壁はペパーミントグリーンに塗られ、窓を開けるとさわやかな風が吹き込み、そして海を見渡せるバルコニーまで付いたお部屋です。
そんな南国ビーチリゾート気分満載のホテルで、さぞかし高級なホテルなんだろうなあ、と思ったら大間違いです。
風が吹き込みなかなか快適とはいえ、エアコンというものがないホテルです。
壁も実際は結構薄汚れたりしていますし、部屋に電話機もありません。
はたしてそんなホテルのバスルームとは、いったいどんなものなのでしょうか。
はい、このホテルのバスルームにはシャワーはありません。
さらに、お湯の出る蛇口もありません。
じゃあ、水で行水するのか?と言えばそうではなく、ここで写真のじいさんの出番なのです。
実はこのじいさんはホテルのボーイなのです。
まあどう見ても「少年」ではありませんがボーイなのです。少なくともガールでないのは確かです。
とにかくこのじいさんが、お湯を持って来てくれるのですよ。
じいさんは普段は「ボーイ詰め所」みたいなところに待機しています。
なのでそこに「お湯を持って来て」と連絡を入れると、すぐさま大きなバケツにお湯をたっぷり入れ、えっちらおっちら運んで来てくれるという寸法なのです。
しかし部屋には電話機がありません。
それじゃあどうするかと言いますと、ベッドの枕元の壁にあるスイッチをちょいと押すのです。
そのスイッチは部屋の外のブザーにつながっていて、スイッチを押すと廊下中に「ビー!」というブザー音が響き渡り、ボーイ詰め所のじいさんにも聞こえるというわけなのです。
なので一度目はじいさんは手ぶらでやって来ます。
まあそりゃそうです。ブザー音だけで客の要望がわかるわけありませんから。
そして部屋に来たじいさんに「お湯を持って来てよ」と頼み、じいさんは「あいよ!」と言って、バケツいっぱいのお湯をたぷたぷ運んで来るのであります。
こうしてめでたくお湯が手に入り、ようやく一日の汗と埃を洗い流すことができるわけですが、そこにはまだ問題があるのです。それは、バケツ一杯のお湯で、すべて済ませなければならないということです。つまり、頭の先から足の先まで全部を、その限られた資源でまかなわなければならないということなのです。
ただ幸いなことに、じいさんが持って来てくれたお湯はかなり熱いものなので、水で薄めて使います。なので量が増えるということですね。
それでもやはり無尽蔵にあるわけではありませんので、体を洗うにも計画性が求められるというわけです。
もちろんお湯のお代わりをもらうことは可能です。
でも、頭にシャンプーの泡を載せた状態で、ベッドの枕元にあるブザーを押しに行き、さらにシャンプーが垂れて来て目が痛いのを我慢しながらじいさんの到着を待つなどということが、はたしてできるでしょうか。しかもハダカなのです。
と、そんな他力本願さが不便に思えるお風呂なのですが、ボーイにお湯を運ばせるなんて、考えようによっては大変贅沢なことなのかもしれません。しかも、自分よりはるかに年上の人にです。
なのでせめてバケツ一杯で満足するしかないのです。
とにかくインドで温かいお風呂に入るということは、とてもとても贅沢なのでありますよ。
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