ラクダ隊商の隊長こと松本です。
その後いかがお過ごしでしょうか。
暦の上では・・・
四月も下旬に入ろうとしておりますが、なんて寒さなのでしょう。
この時季雨が多いのは例年のことではありますが、あまりの寒さに山を見上げたら、あ~ら、白くなってる・・・
比較的温暖な神奈川県は丹沢山のお話しです。
もっと北の、もっと標高の高い山は、いったいどうなっているのでしょう。
しかしまあ、また今日辺りから温かくなって来るようですので、この寒さもあと少しの辛抱です。
なにしろゴールデン・ウィークももうすぐですし、北海道でもすぐに桜が開花することでしょう。
さて、今週もインドのお話しをさせて頂きます。
はい、砂漠の都市ビカネール旅行の続きです。
ではまず、前回までのあらすじから・・・
【前回までのあらすじ】
砂漠の旅は過酷である。なにが過酷かというと単調な風景ゆえの睡魔との闘いが過酷なのである。決して寝まいと心に誓っても、いつしかまぶたは重く閉ざされてしまう。そしてついに車は、私が寝ている間にビカネールの街に入ってしまったのである。
【あらすじおしまい】
ドライバー氏にビカネールの街に入ったことを知らされ、「あ~あ、ビカネールに入るとこ見たかったのになあ~」などと駄々っ子のようなことを思ったのですが、こうした大きな街はいきなり「ここからがビカネールだよ」と始まるものではなく、なんとなく砂漠の続きに家がちらほら見え始め、あれ?なんだなんだと言う間に街に入ってしまうわけで、起きていたからといって特別何かすごいものを見られたわけでもないでしょう。
ここはまあ、無事に砂漠を乗り越えビカネールに到着したことを喜ぶべきでしょう。よかったよかった。
ではここで、ビカネールという街について簡単にご説明致しましょう。
ビカネールはパキスタンとの国境に広がるタール砂漠に隣接しています。
1488年、そんな砂漠の地に、ジョドプールの創設者の子孫ラーオ・ビーカーによって街が築かれました。
街は高い塀に囲まれ(現在で言うところの「旧市街」です)、隊商の交易ルートに於ける一大中継地として栄えました。
現在のビカネールは旧市街をはるかにしのぐ規模に拡大され、人口も50万人を裕に超えているとのことです。
と、半分ガイドブックの受け売りでのご紹介ではありましたが、とにかく昔はラクダの隊商などが行き交う砂漠のオアシス的な街だったわけです。
そのためかこの街ではラクダをよく見かけます。
車やバイク、オートリキシャといったものに混じって、ラクダに牽かせた荷車がたくさん行き交っています。
ラクダは日本でも有名な動物で、当然その容姿も良く知っているはずなのですが、あらためて間近で見ると、あらまあ実に変な顔をしているじゃあありませんか。
そして今さらながら背中のコブや足のでかさも妙にヘンチクリンに思えて来ました。
しかし、そんな動物が普通に人間と同居しているというところが、なんだかとてもいい感じなのです。エキゾチックというか、月の砂漠をはるばるとというか、まるで夢を見ているような不思議な感覚に陥ります。
さらにビカネールは、パキスタンとの国境が近いということで国境警備隊の基地があり、そのため街の至る所で迷彩服の兵士の姿や、同じく迷彩塗装を施した軍用トラックなどを目にするのです。
そんな風に、一方では昔さながらのラクダの荷車を始めとした動物と人の混在する姿があり、もう一方では最新式の装備で固めた軍隊が行き交い、さらに街中には16世紀に建てられた城塞があったりして、なんだかもうスターウォーズの世界に迷い込んだような街なのです。
*このメルマガの後半に続きます。
〔 中略 〕
*前半からの続きです。
さて、砂漠を6時間もかけてやって来ましたので、まずはこのままホテルに入ることにしました。
私たちがビカネールで予約したホテルは、カルニ・バワン・パレス・ホテルと言うところです。
インドにはパレスと名が付くホテルはたくさんありまして、その中でもウダイプールの湖の中に建つレイク・パレスやジャイプールのランバーグ・パレスなどは、本当にマハラジャが所有していた(所有している)ものを、ビジネスとしてホテル展開しているわけです。
しかしそこは世の常で、ぜんぜんパレスでもないホテルに、パレスの名を冠して営業しているところもあります。
デリーの安宿街メインバザールにもそんな○○パレスなんてえホテルがあるわけです。
それでは私たちが予約したカルニ・バワン・パレスはどうかと言えば、これはレッキとしたマハラジャの建てたパレスなのです。
ただしその造りは古いお城のそれではなく、とてもモダンなデザインで、その広い芝生の前庭とあいまって、私が子どもの頃に見たアメリカ製ホームドラマに出てきそうなお屋敷みたいな感じのホテルなのです。
普段は安いホテルにしか泊まらない私たちですが、このビカネール旅行はあくまでも「休暇」なので、このくらいの贅沢はいいのです。
とにかくいつもよりいいホテルに泊まりますので、なるべくホテルの設備を有効に使おうじゃないか、できるだけ長い時間ホテルに篭り元を取らなきゃいかんいかん、とさっそくホテルへと向かったのであります。
ホテルは街の中心から少し外れたところにありました。
事前に写真で見たのと同じように、広い芝生の庭が広がり、その向こうにモダンなアメリカン・ホームドラマのお屋敷が見えます。
「おお、なかなかいいじゃないか!まるでルーシーとかキャッシーとかネッシーとかが住んでそうだぞ。
よおし!今日は市内見学を早めに切り上げて、ここでゆったり過ごすぞ!」
と、ゆったりしようと心に誓うだけなのに、思わずこぶしを握り締めて力んでしまう私でありました。
車が止まるとすぐさまボーイがドアを開けてくれました。
「うむ、苦しゅうない」
そんな風にすでにマハラジャ気分になって車を降り、ホテルのレセプションに入って行きますと、マリーゴールドの花で作られたネックレスが首にかけられ、さあこちらへどうぞと椅子に座らされ、間髪入れずにウエルカム・ドリンクのサービスがありました。
ああ、極楽極楽。こんなにサービスがいいんじゃ、もう市内観光なんてやめて、今日はこのままホテルでくつろいじゃおうかなあ~
なんてことを、レセプションに隣接する豪華な調度品で飾られたバーと思しき部屋を眺めながら考えていると、ホテルのマネージャーらしき人がなにやらパンフレットを持って現れました。
ん?なんだ? 市内の観光案内でも始めようってのか?
そんなことより、早く部屋に通してもらいたいもんだよなあ。
そんな私たちに向かってマネージャー氏は、こともあろうに
「実は本日、このホテルにはお泊り頂けなくなってしまったのです」
なんてことを言い出したのです。
えっえ~! マジかよ?
つづく
はい、睡魔と闘いながら苦労してたどり着いたビカネール、そしてあこがれのアメリカン・ホームドラマのお屋敷ホテルでありましたが、なんとここでも門前払いをくらってしまいました。
さあ、どうするのだ私たち。
今夜はラクダと一緒におねんねか?
事態は急展開を続けながら次回に続きます!
では、今回はこの辺で失礼致します。
ご機嫌よろしゅう!