この表紙を見てお分かりになるかと思いますが、これはとても古い本です。日に焼けて色があせたり、汚れがついていたりしております。
それもそのはず、画像に使ったものでも昭和39年(1964年)発行のもので、そもそもが昭和29年(1954年)に出版された本なのです。
このお話はインドの農村が舞台です。
大昔から続く農村の暮らしが、主人公の少年アルーンと愛象モチの交流を通して語られます。
アルーンとその家族は、土の家に親戚と一緒に住む大家族です。牛の乳を搾り、牛の糞で煮炊きをし、そして牛で田を耕す。そんな暮らしが何百年と続いているのです。
やがて季節は乾季となり、川や田、井戸からも水が姿を消してしまいます。
人々は飢えと渇きに耐えながら、じっと雨季の到来を待つしかありません。
これもまた、何百年と繰り返されて来たことなのです。
しかしそんなある日、アルーンはダムの建設現場を目にすることになります。
そしてそのダム建設の技師から、こんな説明を聞きました。
「いままで使えなかった土地が、日照りのときにも使えるようになるし、雨の季節でも、ダムさえあれば、大水なんか出なくなる」
何百年もの間、自然に逆らうことなく、同じ暮らしをして来た者にとっては、まさに夢のような話です。
さらに技師は続けます。
「このダムの水が電気をおこす。また、小さなせんをひねれば、どこの家でも泉のように、水がジャージャー、出るようになるよ」
そんな話を、アルーン少年は目を輝かせて聞き入るのでした。
現代では、自然破壊や環境汚染の観点から、とかく批判を浴びる巨大プロジェクトではありますが、強大な自然の猛威から少しでも身を守るため、そんなプロジェクトが必要な人々がいて、必要な時代があったということも事実でしょう。
この本が書かれたのは、第二次世界大戦が終わり、アジアの国々では独立が相次ぎ、日本に於いても焦土からの再建に力を注いでいた、そんな活気あふれる時代でした。きっとアジアは、その時元気な「青年期」を迎えていたのではないでしょうか。
そしてこの本も、そんな時代を表すアルーンの言葉で締めくくられています。
アルーンは、モチの大きな耳に、そっと、ささやきました。
「いま、インドでは、大事業がすすんでいるんだ。
これから、ぼくたちは、その手伝いをするんだよ」
なんだかあまり元気を感じられなくなってしまった最近の日本ですが、また「あの頃」を思い出し、祖国再建のためにみんなで元気に青春しようじゃありませんか!
と、この本を読み直してそんなことを思ったのであります。
【参考・・・になるかどーだか・・・】
題 名:「村にダムができる」
文と絵:クレーヤ・ロードン、ジョージ・ロードン
訳 者:不明
出版社:岩波書店
価 格:170円(1964年当時)
*きっととっくの昔に絶版になっていると思います。
興味のある方は図書館などで探してみて下さい。
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