びろうな話で恐縮だが、私たちの体から出る「くそ」と呼ばれるいく種類かの物体は、おおよそ自らの力で排泄もしくは除去することができるが、こと耳くそに関してはどうしても素手では取り去ることが難しい。
耳の穴がせめて鼻の穴ほどの大きさがあり、また鼻の穴ほどの柔軟性があれば、人差し指でほじほじできそうなものなのだが、なぜに神はこのような耳の穴をお創りになられたのだろうか。
しかし素手で勝負できない場合、道具を発明するのが人間のすごいところである。そう、人間は直立歩行で両手が使えるようになった時、ついに耳かき棒を発明したのであった。
ところが実際にはこの道具を用いても、自分ではなかなか思うようにできないものなのである。なんか気持ち良さが中途半端だし、ちょっとでも痛いと力を緩めてしまい、なかなか大物が引っ張り出せないのである。
そこで登場したのが耳かきを生業とする人たちである。
ただし日本ではその仕事はもっぱら若いおねえさんたちが担い、ずいぶんと高いお金を取るという。これでは気軽に耳かきをお願いすることができない。
ということで、ここでようやくインドのお話しになるのである。
インドには耳かき屋がいる。あちらの言葉で「カーン・サーフ・ワーラー」という。彼らは赤い帽子をかぶったり鉢巻きをしたりし、そこに耳かき棒を差し込んでいるのですぐにわかる。というか、こちらが気付かなくてもあちらから声を掛けてくれるのですぐにわかる。
彼らは耳かき屋なので耳かき棒一本で勝負をしているかというとそうではなく、いろいろな油の入った薬瓶を収納した小さな箱状のカバンを持っている。
ほら、これがそのカバンであるのだが、なんともかわいらしく、また機能的そうではないか。なんだか小学校の時に学校で購入希望を採った、二種類の絵具箱の高い方みたいで実にうらやましい。ちなみに安い方は持って歩いていると金具が外れ、ちびた絵具がばらばらと路上にばらまかれてしまったものである、くそ!
おっと、耳くその話であった。
そんなインドの耳かきを初めて経験した。
最初耳かき屋はこちらが外国人でカモにできると思って近づいて来たようであったが、地元のインド人が一緒だったために20ルピーでやることになり、ちょっと力が抜けているようであった。
それでもさすがはプロである、なんとも気持ちが良い・・・
細い耳かき棒を巧みに操り、がさがさごそごそと耳の穴をくまなく掃除して行く。
とその時、耳の奥で「カチッ!」という音がした。どうやら耳かき棒の先っちょが、大鉱脈に行き当たったようである。
この感覚は自分でやっている時に何度も経験しているが、自分でやるとどうしても痛さと怖さでそこから先に進めないのである。
さあ、プロならどうする?この状況。
すると耳かき屋、私を座らせていたベンチに片足を乗せた。つまり態勢をぐっと前のめりにし、より耳の穴を覗き込みやすく、そして右手の棒を操りやすくしたのである。
どうやら耳かき屋、プロとしての本能が目覚めたようだな。もしかしたら先ほどの「カチッ!」という音は、耳かき屋のやる気スイッチが入った音だったのかもしれない。
格闘すること一分、あの細く暗い耳の穴の中で細い棒の角度を微妙に変え、さまざまな方向から鉱脈にアプローチした結果、ついにそれが白日の下にさらされたのである。
で、ちょっとピンボケだがこの下にその写真がある。
でもまあ特にそんなの見たくないという方もいれば、絶対見たくない!という人もいるであろうから、こうして無駄に行間を開けることで、写真をなるべく下に持って行こうとしているのである。
でももうそれも限界である・・・
それでは、その写真をご覧頂こう。
これだ!
さすがにこんな大物を耳の穴から引きはがされたので、ちょっとその部分がひりひりするような気もしたが、しきりにその部分に小瓶の油を塗るよう勧める耳かき屋を制して、20ルピーを渡してその場を立ち去ったのであった。
完全に20ルピーの元を取ったど~!
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