インドで庶民の足として活躍している乗り物にもいろいろあります。
バス、タクシーは日本のものとさほど変わりませんが、オートリキシャと呼ばれる三輪タクシーや、自転車の後ろに人力車を付けたサイクルリキシャ、タンガと呼ばれる馬車などはやはり私たちの目を引きます。
その中でも私が一番好きでよく利用するのはオートリキシャです。
オートリキシャは昔日本でも走っていた「ダイハツ・ミゼット」みたいな三輪自動車で、前部に運転席と後部に客用座席があります。
後部座席は大人二人掛けといった感じの幅しかないのですが、インド人はよく3人くらいで乗っています。
さすがに大の男が3人で座るととても狭く、左右の人は斜に構えて座らなければなりません。たまに4人で乗って左右の人が半身を外にはみ出させながら走っているオートリキシャも見かけます。
更には前部の運転席に乗客が座ることもあります。
たしかに運転席は一人で座るのはもったいないくらいの幅があるのですが、ハンドルは中央に付いているために、運転手は下半身を右寄りにした姿勢で体をくねらせハンドル操作を致します。(インドも日本と同じ左側通行なので、乗客は通常左側から乗ります)
つまりオートリキシャは運転手を含めて6人くらい乗って走ることもあるのです。
その際の一人当たりの車輪占有率を計算して見ますと50%ということになり、その状況を簡単に説明すれば、一輪車に二人乗りしているのと同じなのです。こうなるともはやサーカスの領域です。すごいじゃないですか。
料金はメーター制なのですが、外国人旅行者にはメーターを使わず交渉で運賃を決めることが多く、土地勘のない旅行者はいいカモにされてしまいます。
また安い料金で乗れたと喜んでいると、頼んでもいないのにお土産屋に連れていかれたりします。お土産を買いたかった人には何とも親切なサービスでありますが、考えて見れば自分の行きたい所があるからこそオートリキシャに乗ったのであり、勝手にお土産屋に連れて来るなんてひどいじゃないのよ!
私はその点もう慣れているので、乗ると最初に釘を刺します。
「いいか、私はお土産屋なんかには行かないのだ」と・・・
先日も一台のオートリキシャに乗り、行き先のバザールを告げました。
するとその運転手は「今日はそのバザールは休みだからオレの知っている店に連れて行ってやる」なんて言うのです。
もちろん私はそんなことで騙される間抜けではありませんので、毅然とした態度で「お前の指図は受けん!私の言ったバザールへ行け!」と命じました。
私の強い態度に恐れをなした運転手は目的のバザールへ直行しました。
10分後、オートリキシャはシャッターの閉まった閑散としたバザールに到着したのでした。そして運転手は振り向きもせずに私に言いました。
「さて、これからどうする?」
【教訓】
「親の意見とナスビの花は、千にひとつの無駄もない」
「リキシャマンの言うことは、千にひとつは本当だ」
むやみに人を疑ってはいけません。