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2004年11月5日:パインズクラブ通信 第110号

         
  • 公開日:2022年8月9日
  • 最終更新日:2022年8月20日

暦の上では・・・

11月に突入して早5日、今年も残すところ60日を切りました。
すでに某テーマパークなどではクリスマスのイベントも始まるようです。
お正月に立てた今年の目標など、達成するどころか何を目標にしたのかも思い出せない今日この頃ではありますが、なあに、すぐにまたお正月が来ますので、新しい目標でも考えようではありませんか。


ということで、世の中早くも年末年始モードになりつつありますが、個人的には年末にしなければならないのは、年賀状と大掃除くらいのものでしょうか。

年賀状に関しましては、毎年年賀ハガキの発売と同時に「よし!今年は早めに書いてしまおう!」と意気込むのですが、まあよくあるパターンでズルズル遅れ、結局は郵便局の定める期限を過ぎてからの投函となるわけです。

私も最近ではすっかり手抜きになってきて、年賀状はパソコンで作ってしまいます。市販の年賀状作成ソフトを使うのですが、それでも文面はなるべくオリジナルのものを作ろうと、ソフト付属のイラストなどは使わないように心がけております。

ただ、宛名書きはソフトに全面的に頼ってしまいます。理由は、そのままズバリ「面倒くさい」というのと、字がおそろしく下手なことのふたつなのですが、特に「字が下手」というのは致命傷であります。

お笑いコンビ「いつもここから」のネタ「悲しいとき」でも、「悲しいときぃ~、字が上手いのに勉強ができないヤツを見たときぃ~」というのがありますが、これは世間一般では「字がきれい=勉強ができる」という公式が成り立っていることの表れであります。その逆に字がきたないヤツは「勉強できない」ということになり、さらに「だらしがない」という印象を持たれ、ヘタをすると「字がきたない=鼻くそを食う」などというとんでもないデマが飛ぶ恐れもあるわけです、はい。

さて、字が下手なヒトにとってはありがたい機能満載の年賀状作成ソフトなのですが、あまり頼りすぎると困ったことになることもあります。
それは、古い住所に出してしまうということです。

通常、転居しても1年間は郵便局が新住所に転送してくれますし、もらった年賀状に「引っ越しました」とか書いてあったりします。また、ご丁寧に転居のお知らせをくれるヒトもいます。
で、その情報をすぐにパソコンに入れればいいのですが、そもそも不精ゆえにパソコンに頼っている人間ですので、そんなことをマメにするわけがありません。なにしろせっかく当たった切手シートだって取替えに行かず、また次の年賀状の季節を迎えてしまうくらいですから。
そんなですから、そのまま古いデータを使って宛名書きをしてしまい、年明けには何通か自分で出した「そっけない内容」の年賀状を受け取ることになってしまうわけです。

昨年は3通ほどでした。

やがてそうした相手からも年賀状が来なくなり、お陰様で最近は出す数もめっきり減り、大変助かっております。

 

*このメルマガの後半へ続く

〔本題〕実際のメルマガではここに新着情報などが載ります。

*このメルマガの前半からの続きです。

 

年賀状は書く方も大変ですが、配る方はもっと大変です。

私も高校生の時、年末年始に郵便局でアルバイトをしました。時給は安かったのですが、年末のあの慌しい雰囲気が好きな私には、ぴったりのアルバイトでした。

最初に私がやらされたのは、ポストから郵便物を回収してくる仕事でした。
うしろに赤い大きな箱の付いた自転車で、市内の各ポストを回り、投函されたハガキや手紙を回収するという仕事なのですが、なんとアルバイト初日から冷たい雨が降ってしまい、ゴム合羽を着ての出動となりました。

体はゴム合羽を着ているというものの、手には軍手しかはめておりませんので、冷たい雨が軍手をぬらし手はすぐにかじかんでしまいました。
そんなかじかんだ手でポストを開け、中からハガキや手紙をかき集めては、自転車の後ろの箱に入れるのですが、指の感覚がマヒしており・・・

「あっ!」

と思ったときにはすでに遅く、何通かの手紙が足下の水溜りに落下してしまいました。慌てて手紙を拾い上げたものの、水性ペンで書かれたあて先は少しにじんでしまい、せっかくのきれいな字も台無しです。でもわざと落としたわけではないので、私は決して悪くはないのです。たまたま水溜りの上に落ちてしまったその手紙に運がなかっただけで、まあいわば「不幸な手紙」と言ったところでしょうか。

雨は初日から2日間降り、ようやく雨が上がったと思ったら、私はその郵便物回収の仕事から外されてしまいました。誰かチクリやがったな・・・

郵便物回収の仕事をクビになった私なのですが、配達の方の仕事はすでに各地域にバイトが配置されていて、もう入り込む余地はないようです。
郵便局の局員も、私の取り扱いに困っているようですが、ちゃんと採用されて来てるんだからなんか仕事を下さい。

と、思っているとあちらで局員がおいでおいでをしてるじゃありませんか。行ってみましょう。

その局員は私に細長くて平べったい小包を手渡し、こいつを配達して来いと言いました。

やったぁー!新しい仕事だぞ!

張り切って配達に行こうとする私に、その局員はこう付け加えました。

「あのさ、そいつは住所の判読に手間取って、配達がちょっと遅れたものなので、手渡すときに先方にちょっと謝っておいてくれ」

そう言われてもう一度手渡された小包を見てみますと、外箱が濡れて少しぐにゃっとしています。なるほど住所も濡れてほとんど読めなくなっています。さらに箱の先っぽが破けていて、中身が見えてるじゃありませんか。

あっ、シャケだ・・・中身は新巻ジャケなんだ・・・

中身も分かったところで、もう一度あらためて小包を見直してみますと、どうやらこいつは箱の先っぽが破れているというだけではなく、最低でも一度は中身のシャケが外に踊り出したものであろうということがシロート目にも分かりました。

そこまで分かってしまうと、この任務がいかに困難を極めるか、そして誰もが関わりたくない仕事であるか、そうだ、あそこに仕事にあぶれたバイトがいるから、あいつにこの仕事を任せてしまおう、そうだそうだ、そうしようと局員たちの意見が一致しての「おいでおいで」になったのであろうということが容易に推察されたのです。

あー、参ったなぁー。こんなの渡されて怒らないヒトっていないだろうなぁー。なにしろ中身は半生のシャケで、ビニールは破れているし、箱からも飛び出した形跡があるし、おまけに配達が何日も遅れてるんだからな・・・

かなり暗い気持ちになりながらもその仕事を断る権利がない私は、しかたなく赤い自転車にまたがり、新巻ジャケの配達に向かいました。キーコキーコ・・・

目指す家は古い商家でした。
通りに面したガラス戸を開け、たたきになった薄暗い内部に入ると、すでに商いをやめて久しいのか、がらーんとしてひと気がありません。
何度目かの呼びかけに、中からもそっとおばあさんが出て来ました。
そのおばあさんの姿を見て、私は直感的に、

あっ、やばい・・・

これはとにかく目の前の人間を捕まえて文句を言うタイプのヒトだ・・・

と思いました。

私はここに着くまでの間、自転車をこぎながらも、先方にどう謝ろうかと考えていたのですが、できれば対応に出てくれるヒトが私を「弱い立場のバイトくん」だと理解してくれ、私に怒ってもしょーがないということを分かってくれたらいいなあなどと思っていたのです。しかも対応に出て来たのが、年の頃なら16、7のかわいい女の子で、

「あらっ!なによこれ・・・でもあなたのせいではないから、あなたを怒るわけにはいかないわね。そうだ、このお詫びにわたしと一緒に初詣に行きなさい!」

あっ、えっ?・・・は、はい・・・

なんて、思わず答えちゃうんだよな。そうなると新巻ジャケ様様だな、えへへ・・・

なんてことを妄想して、自分を励ましながら自転車こいで来たとゆーのに・・・
実際に出て来た相手は、このケースで一番手ごわそうなおばあさんだよ・・・

奥から出て来たおばあさんに、言い訳のひとつも言おうとしたら、先に相手が口を開きました。

「しんせきからあらまきじゃけをおくったってれんらくがあったからまってたらなかなかとどかないからおかしいとおもってゆうびんきょくになんどもなんどもでんわしたのにぜんぜんはなしがつうじなくってけっきょくこんなにおそくなってからとどくなんてまったくもうくどくどくどくど・・・・」

どうやらこのおばあさんは、新巻ジャケを送った親戚からの連絡に対して、配達が遅かったので郵便局に問い合わせをしていたらしいのです。だから郵便局もあんなにぐちゃぐちゃになった住所の判読が出来たということだったわけです。

そんな怒りを込めて呪文のように文句を唱えるおばあさんに、さらにこの中身の飛び出してしまった、ぐちゃぐちゃの新巻ジャケの包みを渡したら・・・

それは考えただけでも恐ろしく、私は気が遠くなりそうになりました。

それでも恐る恐るぐちゃぐちゃの小包を、新巻ジャケが飛び出さないように注意しながら手渡すと、案の定包みを受け取ったおばあさんはものすごくびっくりして、一瞬言葉を呑み込みました。

そこで私はチャンス!とばかり、おばあさんが再び言葉を回復する前に、ひとこと「すみませんでした!」と言うや、表にとめた自転車に飛び乗り一目散に郵便局目指してはげしくペダルをこいたのでありました。キコキコキコキコ・・・

いやあ、あのときはホントに怖かったです。中身が鮭で、箱も割けていたので、できればサケたい仕事でありました。

みなさんも何かと腹の立つこともあるかと思いますが、バイトくんにはあまり怒りをぶつけるのはやめましょう。

それでは、また来週!

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