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2003年6月26日:パインズクラブ通信 第36号

         
  • 公開日:2022年8月6日
  • 最終更新日:2022年8月20日

暦の上では・・・

関東地方はまだまだ梅雨真っ只中、昨日も雨模様でした。

そんな中、新宿5丁目交差点近くのカレーショップで朝食を食べておりましたところ、なにやら道に百円玉をばら撒いたような音が聞こえて来ました。

ガラス張りのドア近くに座っていたものですから音のする方に視線をやると、目の前の靖国通りを平べったい物体がシャリシャリいいながらすべるように走って行きます。

その平べったい物体は幅の広い横断歩道を過ぎ、赤信号の手前で止まりました。

運動を停止した平べったい物体をよく見ると、それは倒れたバイクでした。
そして少し腰を浮かせて死角になっていたあたりを見ると、革ジャンを着たおにいさんがまるまって落ちていました。

私のするどい想像力でこの事態を判断したところ、赤信号で止まろうとしたバイクが滑ってバランスを崩し、おにいさんを道に落としたままバイクは平べったい物体と化してすべるように走って行ったということのようです。

百円玉をばら撒いたんじゃなかったようです。

結局おにいさんはバイクのところまで歩いて行きました。
歩きたくないからバイクで移動していたのでしょうに、歩くハメになってしまいちょっとかわいそうな光景でした。

そう言えば私も駅までバイクで行ったのに、帰りにはそのことを忘れてバスで帰ってしまったことがありました。
バスの窓から見えた私のバイクはなんだかとても寂しそうで、これもちょっとかわいそうな光景でした。
でも本当にかわいそうなのは、自分のバイクを車窓から発見し、「あっ!今日は駅までバイクで来たんだった!」と気付いたにもかかわらず、一つ目のバス停で降りると、なんだか私が間抜けな忘れ物でもしてしまったばかな人間だと思われるといけないと思い、二つ目のバス停で降りて歩いて駅まで歩いて戻ったこの私なのです。

それから比べればそのおにいさんが歩いた距離などたかがしれています。
まったく同情の余地なし!と言ったところです。反省しなさい。

まあそんなことを言いましたが、本当は私もそのバイクのおにいさんが立ち上がるまでは心配して見守っていたのです。
ですからそのおにいさんがよろよろと立ち上がったときには、本当に嬉しくて感動の涙が出そうでした。たぶん馬のお産に立ち会うとこんな感じを味わうのではないでしょうか。

さて、事故は本当に怖いものです。
私も今までに何度か交通事故に遭いました。
そんな不幸をみなさんにお知らせして、少しは同情して頂こうと思います。
今回は「ちょっと怖いかもしんないお話」です。

あれはもう15年くらい前の今頃、梅雨の晴れ間が広がった日じゃった・・・

その頃の私は今とは別の仕事をしていて、毎日同じ道を車で往復していました。車は貨物用のワンボックスカーでした。

その日も私は重要な任務を終え、帰路についておりました。
そして「あの峠」にさしかかったのでございます。

そこは峠と言っても山道などではなく、ちゃんと舗装された国道です。
でも、そのあたりは通称「J君(仮名)道路」と呼ばれており、何かとうわさの絶えない場所でもあったのです。

これは余談ですが、テレビ番組で某アイドルグループがその峠のトンネルの手前にある電話ボックスにまつわる怖い話を検証すべく、夜半にロケを行ったという場所でもあります。(内容に関しては省略・・・というか忘れました。すみません)

その道路がなぜ「J君(仮名)道路」と呼ばれるようになったかと言いますと、今をさかのぼる事30年とちょっと前、その峠で事故死した青年J君(仮名)を悼み、ご両親がその沿道に「もう死なないでJ(仮名)」という看板を立てたことに始まります。そしてその看板は事故を知らない人々にも、そこでJ君が亡くなったという事実を永く知らせる役目を果たしたのです。

さて、道路に事故はどうしてもつきものです。ですから私はそのひとりの青年の死とその付近で起こる事故の因果関係については語りません。
私はただ、自分の身に起こった事実だけを伝えるだけなのです。

*このメルマガの後半へ続く

〔本題〕実際のメルマガではここに新着情報などが載ります。

*このメルマガの前半からの続きです。

その峠にさしかかったのはたしか午後3時くらいだったでしょうか。もちろん昼間です。雨も降っておりませんし、天候は穏やかでした。

私は車の調子も快調に頂上のトンネル目指して坂道を登っておりました。
前後にまったく車はなく、対向車すらありません。
国道の周りは山ばかりでほとんど民家もなく、沿道には人影もありません。
つまり、その時間にそのあたりにいたのは私だけだったということです。
犬もいません。サルもいません。キジもいません。桃太郎もいませんでした。

やがて前方にトンネルが見えて来ました。
そのトンネルを抜けると私の住む町です。あと少しで今日も無事に帰宅できるのです。

その時です!

いきなり「ピシッ!」という音が聞こえたかと思うと、フロントガラスが見る見る真っ白になってしまいました。
そうです、ヒビが入ったのです。

車のフロントガラスは万一の事故に備え、普通のガラスのように鋭角に割れたりせず、小さなブロック状に割れるようにできています。
そして私の運転する車のフロントガラスも小さなブロック状に割れて行き、その細かいヒビのために視界が遮られてしまったのです。

幸い前後に車がなかったので、私はブレーキを踏んでスピードを落とすと、車を歩道に乗り上げさせました。
そして粉々になりながらもまだ一枚のガラスのようにつながり、それでいて車内に向かってその中央部をたるませている「元フロントガラス」を私は叩き落しました。

ひとつ残らずガラスを取り除くと前方の視界はすごく良好になりました。
まったく曇りひとつなく、まるで自分の美しい心を映し出しているようでした。
ただワイパーだけがそのよりどころをなくし所在なげではありましたが。

さて、視界が良好なのは良いのですが、この先はガラスなしで走らなければなりません。いくら雨が降っていないとは言え、何か飛んできたら危ないです。

それでもいつまでもここにいるわけにもいかず、私はそろそろと車を走らせました。

私としてはスピードを出さずにゆっくり走りたいのですが、片側1車線の道路では後の車が許してくれません。最低でも法定速度+10kmくらいは出さないと世間様が許さないのです。

しかたなく私は徐々にスピードを上げて行きました。
すると前方からの風は予想を上回る強さです。とにかくすごい風圧なのです。
後続車に強要され50Kmくらいまでスピードを上げると、その強風でまず口が開いて来ました。しかもいったん開き始めるとますます風が入り、口は大きく開いて四角くなって来ました。
そして目は口とは逆に開けられなくなって来ます。
涙なんかも出てきて、髪の毛はバサバサなびき、なんだかすごい顔になっていそうでした。

結局ガラスが割れてしまった原因は分かりませんでした。
でもその事実は私の心に少しばかりの恐怖心を残しました。
そしてその日その沿道の人たちは、口を四角く大きく開け、髪を振り乱し泣きながら車を運転する男を見て、もっと強い恐怖心を抱いたことだと思います。

世の中には科学で解明できない不思議なことってあるんですね。
まさか口が四角く開くとは思ってもいませんでした。

それではみなさん、くれぐれも事故には気を付けて下さい。
それから万一、口を四角く開けなければならなくなってしまったときのために、毎日歯だけは磨きましょう。

それでは、また来週!

*このメルマガでは、皆様の体験した怖い話などは募集しておりません。怖いので絶対送りつけて来ないで下さい。(特に心霊写真、やめれ!)

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