エア・デカン、デラドゥーン行きのちび飛行機の中で、私が機内販売の甘いケーキに難儀しながらもようやく半分まで食べ進めたとき、早くも機は着陸態勢に入ってしまいました。
これはいけません。いくら食べづらいとは言え30ルピーもしたケーキです。なんとか食べてしまわねば・・・
紅茶と一緒に残りのケーキを無理やり喉に流し込み、口の中に残ったカスを舌でもぎょもぎょしているうちにも、ちび飛行機は見る見る高度を下げて行きます。
そして機体を左にかしげて旋回したかと思うと、あっという間に滑走路にどすんと着陸しました。その衝撃は大きなジェット機のものとは違い、尻の骨に直接響くような感じのものでした。なんせ自分の足の下がすぐ滑走路のような感じの低い位置に座っているのです。
それでも無事に着陸に成功したちび飛行機は、ゆっくりと滑走路を移動して行きます。
おー、着いた着いた。
しかし早かったなあ。飛んでた時間は正味30分くらいだったんじゃない。
デラドゥーンという街はウッタランチャル州の州都であり、こうしてちゃんと空港もあるのですが、辺りを見回してもどうも州都を感じさせるものがぜんぜん見当たりません。
周辺には畑が広がり、近くに山を望むとてものどかなところのようです。
そしてこの空港に飛んでくる飛行機も、今乗ってきたちび飛行機が一日に一往復するだけとのことなのです。
やがてちび飛行機は、空港ビルとおぼしき白い建物のそばで止まり、私たちはまた乗ったときと同じ後部昇降口から外へ出ました。
外へ出てみると、すぐそこに空港と外部とを隔てる柵があり、たくさんの人がそこからこちらを見ています。どうやらみんな出迎えの人のようです。
乗客はみな飛行機のかたわらで、自分の荷物が降ろされて来るのをじっと待っているのですが、私とC君は手持ちの荷物しかないためそこで待つ必要もなく、係員の立つ鉄の扉から外へ出てそれでおしまいでした。
いくら国内線とはいえ、空港ビルを通って外に出るとか、なんかそんな儀式みたいなものがあってもいいんじゃない?と、ちょっと物足りない到着と相成ったのであります。
そんな簡単な到着でしたから、私たちを迎えに来てくれたドライバー氏ともすぐに会えました。
なんせ観光客らしき人は私たちふたりだけなのです。
さあ、ここからは約1時間の山越えとなるようです。
なのでその前にぜひトイレくらい済ませておきたいものです。
そのことをドライバー氏に告げると、ドライバー氏は黙ってかたわらの草むらを指差しました。
えっ、いいのか? ここは仮にも州都の空の玄関口なんだぞ。
しかし見ればほかの人たちもみなそこでしているようですので、郷に入ったら郷に従えと、私たちも適当な場所を見つけて用を足しました。
空はよく晴れ渡り、山緑にして水清く・・・じょぼじょぼ・・・
立小便、よくぞ男に生まれけり、かあ~、はぁ~
こうして身も心も軽くなった私たちは、いよいよデラドゥーンからリシュケシへの陸路の旅を始めるのであります。
次回へ続く