ここはトリチーで、いえ、インドでも最大規模を誇るシュリー・ランガナタスワーミー寺院です。その敷地は60ヘクタールもあり(ってどのくらいか想像がつかないのですが)、内部には7重の塀が巡らされ、南インドのヒンドゥー寺院の特徴であるゴープラム(塔門)も21あります。
しかしヒンドゥー教徒でない人は一つ目の塀の中までしか入ることができません。
まあそれでももともと大きな寺院ですから、結構広い範囲を見て歩くことができ、こうして極彩色に彩られたゴープラムを間近に見ることもできます。ただし内部は土足厳禁ですので、南インドの強烈な太陽に焼かれた敷石の上を裸足で歩くことになり、神聖なる寺院であるにもかかわらず、つい我慢できずに駆け足になってしまうのであります。
さて、私がこの寺院にやって来たのは、毎日お昼頃行われている参拝風景を見るためでした。
その参拝では、象が信者たちを先導して来るというのです。
あの大きな象がのっしのっしと歩き、その後に信者たちの長い列がおごそかに続いているという光景は、想像しただけでいかにも南インドらしい儀式でわくわくします。
私は参拝の列の邪魔にならないよう、広い通路を見下ろす回廊から眺めることにしました。
12時15分、いよいよ象が登場しました。と、あれれ? 意外と象の歩みが早いぞ。あれじゃ人間ならかなりの早歩きといったスピードだぞ。それに、後ろに信者の列が続いて来ないぞ・・・どうしたんだろ?
と思ったら、私の立ってる回廊を進んで来たぞ!しかもものすごい速足だあ!おまけに太鼓なんかも叩いているう~!なんと信者たちの列は象の後ろに従うのではなく、別ルートでこの回廊を通るようで、激しく打ち鳴らされる太鼓に先導され、猛スピード(あまりの予想外な展開に私にはそう感じました)で迫り来る一団は実に恐ろしく見え、実際にこの後「邪魔だ!どけ!」と一喝された時には本当に震え上がってしまいました。
あっという間に目の前を通り過ぎて行った象と信者の列を追って、私も小走りでみんなの入って行った建物に入って行きました。
何本もの列柱に囲まれた通路を進む信者の列は、中央あたりで左に折れ、これまたあっという間に拝殿らしきところに吸い込まれて行きました。
そしてその曲がり角には先ほどの象が待ち構えていて、通り過ぎる信者に向けて二度三度高らかな鳴き声を上げていました。信者たちの姿が拝殿に消えると、この日の象の仕事はそれでおしまいらしく、今度は来る時よりもさらに速いスピードでご帰宅あそばされて行ったのでありました。その間わずかに1、2分といったところだったでしょうか、何度も言いますが、ホントあっという間でした。
それにしても・・・
私は象があんなにも機敏に動く動物だとはちっとも知りませんでした。
何事も見かけだけで判断しては、真実を見誤るということなのでありますねえ。
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