コヴァラムの漁師が行っているのは主に地引網漁です。地引網漁とは、船で沖合に投入した網を、浜辺にいる人たちが延々と引っ張り引き上げるというものです。
その引き揚げ作業は、こんな写真のヒトコマ分では表せないくらい大変なものなのですが、あえてここでは割愛させて頂きます。
ということで、これが浜に引き上げられた網なのですが、なにが獲れているかは開けて見てのお楽しみ。これこれそこのおっさん、一人だけ先に覗いて見ようなんてしてはいけません。
さあ、それではみなさんの注目が集まる中、いよいよ網のご開帳と参りましょう。作業は漁師のみなさんが一斉に同じペースで網をめくり上げて行きます。
こうして網の途中に引っ掛かっている魚を中央に落として行くわけです。
おっ、獲物が見えて来ました。
なかなかしっかり入っているではありませんか。日本で言えばアジといった感じの魚が多いようです。でもそんな中にも大物がちらほら見え隠れしてますねえ。
そんな「大物」は「その他」のものから選り分けられ、別枠としてセリが行われます。これがその別枠の魚たちです。で、残ったものはこうしてふた山に分けられました。このひと山分が、この辺りの仲買人が扱うのにちょうどいい量なのでしょうか。
そしてセリが始まりました。
この奥の白い布を頭に乗せているのが仲買人で、手前のピンクの布を頭に巻いているのが漁師頭です。仲買人はかなり押しが強そうなおっさんで、無理やり漁師頭にお札を握らせ、「なっ、これでいいよな!」みたいなことを言うのですが、漁師頭のおっさんも負けてはおらず、手渡されたお札を突き返しながら、「これっぽっちじゃ話にならん!」みたいなことを言い返すのです。
セリと知らずに見てたら、ケンカと間違えそうです。
そんなやり取りが何度か続き、やがて話はまとまりました。この時は結局仲買人が折れて、財布からあらたなお札を出し、さきほどのお金に乗っけて渡しておりました。
「さあ、早く出しなよ」
「あ~あ、財布からっぽになっちゃったよ・・・」
こうして目出度く取引は成立し、競り落とされた魚は箱に移され、どこぞへ運ばれて行きました。もしかしたらこの中の魚が、今夜あたりライトハウス・ビーチのシーフードレストランの店頭に並ぶのかもしれません。
これでセリは終わりました。
しかし漁師たちの仕事はこれで終わったわけではありません。
まだこうして漁船を浜の高い所に押し上げたり、使った漁網の手入れなどの仕事がたくさん残っているのです。漁師って一見荒々しい仕事に見え(実際そうなのでしょうが)、それと同時にこうした細かい作業もあるわけで、なかなか守備範囲の広い大変な仕事だなあと思いました。南インド随一の美しさと言われ、外国からもたくさんのリゾート客が訪れるコヴァラム・ビーチなのですが、地元の漁師たちは、来る日も来る日もこうした日々を過ごしている、というお話でありました。
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