5時半起床で7時にホテルをチェックアウトし、昨日降りたバススタンドに向かう。
下痢はまだ続いており、食事は夕べと今朝バナナを一本ずつ食べただけである。
今日の最終目的地はディウ(DIU)という街だが、まずはディウの手前の街ウナ(UNA)行のバスに乗る。
実はバーヴナガルからディウまで行くバスもあるのだが、調べたところでは6時発と10時半発ということだった。わがままを言うわけではないが、それでは帯に短しタスキに長しなのだ。6時発は出発にちょっと早過ぎ、10時半発では到着にちょっと遅すぎる。この時間に来るにも5時半起きなのである。それが6時のバスだと4時半に起きなきゃならない。また到着が遅くなると、あちらでの宿探しに難儀する可能性がある。
なので7時半発のウナ行に乗り、ウナでディウ行のバスに乗り換えようというのである。
なにしろウナとディウは15kmほどしか離れていない。そしてディウはリゾート施設もある観光地で、ウナはその玄関口に当たり、そこからバスが頻繁に出ているはずなのだ。
ということで行先は決まったが、こちらの文字がまったく読めないので、どのバスに乗ればよいのか皆目見当がつかない。
そこで困ったときの人頼み、近くにいたおじさんに尋ねてみた。
困った人を見るとほっとけないのがインド人の美徳、たとえ自分も知らなくても「心配するな」と請け負ってくれる。
私が訪ねたおじさんも、バスが入って来るたびわざわざバスのところに歩み寄り、行先表示を見てくれる。私が一緒に行こうとしても、いいからここで待ってろと制止して、自分一人でせっせと見に行く。
そうこうするうち、ようやく目的のバスが入って来た。
おじさんはそれを確認し、あのバスだと教えてくれた。そして我がことのようにうれしそうな顔をする。
まあこれでもうバスへの往復をしなくてもいいので、それが嬉しいのかもしれないが、とにかくただただ感謝感謝なのである。
他のバスは満員のものも多々あるというのに、ウナ行のバスは空いていた。
後ろの方に座席間の広いシートがあるので、そこを陣取り出発を待つ。
すると前の方から声が掛かる。聞けば「僕もウナまで行くので着いたら教えてあげる。だからこちらの席に来ないか」とのこと。
まあウナは終点なので寝過ごすこともないし、せっかく足元の広い席を確保したということもあり、本当は移動したくなかったのだが、人の親切を無にしてはいけない。そもそもこのバスだって人の親切があってこそ乗れたのである。
前回のバスはまだ前から二列目だったが、今回は最前列となった。
ここは本当に怖い席である。なにしろインドのバスはバカみたいに飛ばす。飛ばすだけでなく他の車を追い越す。もちろん対向車線にはみ出して追い越す。たとえ対向車がかなり近づいて来ていても果敢に追い越すのだ。
7時30分、バスは定刻に出発する。
とにかくこうなりゃもうまな板の鯉である。あとは運転手の腕と判断力、そして日ごろからの信心の賜物を信じるしかない。
バスは市街地を抜け、幹線道路に出る。
するとほらほら、さっそく追い越しにかかる。相手は車長の長いコンテナ牽引車だ。
でももうすっかり身を任せてしまったので好きなようにして。
ちなみに追い抜く際にコンテナを見たら、マジックペンかなにかで「水ヌキ」と日本語が書き込まれていた。
このコンテナの作業をした方、あなたの文字が書かれたコンテナは、しっかりインドの大地を走っていますよ。
9時、タラージャ(TALAJA)のバススタンドに到着。
近くの山の頂上に寺院らしきものが見えるが、ここは有名な巡礼地ででもあるのだろうか。
これで全体の4分の1ほどの距離を来たことになるので、バーヴナガルからウナまでの全工程は約6時間といったところであろうか。
道がだいぶ狭くなって来た。
しかも簡易舗装なので、車がすれ違う時お互い路肩に片輪を落とすことになり、バスなどは大きく傾く。
10時15分、マフーヴァ(MAHUVA)のバススタンド到着。
最初にこのルートを移動しようと計画した時、いきなりバーヴナガルからディウに行くには距離があり過ぎるため、途中の街で一泊しようかと思っていた。そしてその候補地のひとつがこのマフーヴァだったのだが、実際にここに来てバスの窓から街並みを見ると、とくにどうということのない田舎町で、気の利いた宿もなさそうなのでやめてよかったと安堵した。
バスは南下から西進に転じており、私の座っている左側は太陽光線がまともに当たりかなり暑くなって来た。
10時45分、道端の食堂で休憩。
本当になんてことのない小さな食堂だが、みんなそそくさと降りて行く。特に運転手はもう3時間も運転し通しだったので、本当にうれしそうである。
バスは結構込み合って来ていたので、うっかり降りて席を取られてはいけないと、私はバスに留まることにした。幸いトイレにも行きたくないし、何も食べたくない。いつもこうした移動のときは、あまり食事や水分を取らないようにしているので、その成果(?)が発揮されているのだ。
20分ほど休憩し、バスはふたたび走り出す。
運転手もすっかりリフレッシュし、また全力でぶっ飛ばすことであろう。
11時48分、ラジュラ(RAJULA)到着。
ラジュラは幹線道路からやや内陸に入ったところにある。
私の手持ちのグジャラートの地図(30kmの距離が24mmの縮尺で描かれた大雑把なもの)では、ここラジュラ付近の幹線道路はかなり海岸線に近づくはずなのだが、ここまでのところ海はたま~に、しかもはるか向こうに見える程度であった。はたしてこの先、海が見えることはあるのだろうか。
グジャラート州のこの近くにはインドライオンの生息地があり、沿道のところどころにライオンのシルエットが描かれてた道路標識が立っている。日本では黄色に四角の道路標識は警戒標識ということで、ドライバーになんらかの注意を与えるものである。
そうするとこの標識は「ライオン出没注意!」となりそうだが、幸か不幸かインドライオンはそんなに簡単にお目に掛かれるほど頭数がいるわけではない。なのでこれはササンギール自然保護区の看板なのだろう。そこなら確かにインドライオンが生息しており、それを目当てにしたサファリツアーなどもあるのだ。
ただしそこに行ってもそうそうライオンが見られるわけではないらしい。
1時25分、終点のウナバススタンドに到着。
カーティヤーワール半島の東岸から南岸へと辿った旅であったが、結局最後まで海もライオンも目の前に姿を現さなかった。
しかし無事に到着しただけで満足である。それにまだ充分陽が高く、これならディウでの宿探しも問題ないことだろう。
*情報はすべて2016年11月時点のものです。
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