ジュナーガルでの宿は、以前泊まったことのあるホテル・ハーモニーにした。
場所はバススタンドのすぐ目の前だし、なにより勝手知ったるホテルなので安心なのだ。
とは言え予約してあるわけでもなし、はたして部屋はあるだろうか。
しかしそんな心配は無用であった。まだ時間も昼の一時過ぎと早かったこともあり、すんなり部屋を取ることができた。
部屋は三階の208号室である。
もっともこのホテルはショッピングモールの三階にあるので、フロントを含めすべての部屋が三階なのだ。
フロントでは気が付かなかったが、全面的にリノベーションしたようで、3年前に比べてきれいになっている。
この部屋で一泊1,328ルピー(約2,100円)、二泊する予定なので2,656ルピー(約4200円)となる。
壁にはなにやらカラフルな額が掛けられているし、ベッドシーツと枕カバーも柄物を使っていておしゃれである。インドでもホテルのシーツは白のところが多いのでとても珍しい。
ところがである。
翌日市内をあちこち回ってホテルに帰ってくると、今度はシーツも枕カバーも白になっていた。
私は「なるほど、シーツの柄を毎日変えることで『ちゃんと交換してますよ』と客にアピールをしているのだな」と勝手に解釈して感心していた。
しかしベッドにうつぶせに寝転がって日記を書いていたら、白いシーツの下に見覚えのある柄が透けて見えた。
そう、それは昨日「おっしゃれ~」と思ったシーツの柄なのである。
つまり、
夕べはシーツも枕カバーも無いまんま寝てしまったのである。
たぶん午後一番にチェックインしたので、まだ完全に部屋の準備が終わっていなかったのだろう。
今までどんな安宿でもシーツがなかったことはなかった。ツギが当たっていたり、穴が開いていて足の親指がそこに入ってしまうようなものでも、一応あるにはあった。あんな薄い布一枚で、こんなにも気分が違うとは初めて知った。
それからついでに言うと、二日目は毛布にもカバーがかかっていた。
まあそれは次の日のことで、今はまだ「おっしゃれ~」と思っているので、このまま部屋の紹介を続ける。
バスルームを見たら床も壁もピカピカで、やはりきれいに直したのだなということがよくわかった。
しかしこの便座はどうしたことか・・・
取り付け位置が合わないのはわかるが、なんとかしようとは思わないのか、インド人。
便器の左側に伸びる白いホースは、用便後に尻を洗うための水を出すものである。壁にあるコックを回すと、便座の後ろのノズルから勢いよく水が出る。
いわばインド式ウォシュレットなのだが、ノズルは固定式でウィ~ンと前には出て来ない。そしてノズルから出て来るのはただの水である。
でもこれがあると用便後の始末が実に楽なのだ。気候温暖なインドなので、水でも特に問題はない。
ところがである。
なにがどうなったのかは知らないが、ある時ノズルからお湯が出た。それも結構熱いやつが。シャワーで使うにも熱すぎるくらいのやつである。
もちろん壁のコックは一つだけで、それは間違いなく水のものである。
まさかインドの単純構造ウォシュレットから、いきなり熱いお湯が出るとは思ってもいなかったので、私は度肝を抜かれた。怖い思いをすると尻の穴がすぼむと言うが、こういう時のための無条件反射だったのか。
さらに、便器に水を流したら、その水からももうもうと湯気が立った。
いったいどうすればこのようなことが起こるのか、理解に苦しむ。
まったく、勝手知ったるホテルと安心してはいけないのだった。ここはインドなのだから。
そんなホテル・ハーモニーだが、もちろんどれも悪気があってのことではない。
なのでここは、外国人に「インド」を感じてもらうための「お・も・て・な・し」の一種なのだと考えるべきであろう。
そもそもこのホテルのサービスや雰囲気は決して悪くない。その証拠に、部屋に案内してくれたボーイは、一通りの説明を終えた後で冷たいウエルカム・ドリンクを私にくれた。11月とは言え日中は汗ばむほどの陽気のグジャラートなので、確かにその時私は喉が渇いていた。なかなか気が利くのだ。
もっともそれは、あのジーラ・マサラ(詳しくは「インド版青汁」をご覧ください)ではあったが。
それにしても数ある清涼飲料水の中から、よりによってこれとはなあ・・・
しかし喉の渇きは味覚に打ち勝ち、私は一気にそれを飲み干した。
う~ん・・・不味い。
でも口の中一杯に、確かに「インド」を感じるのであった。
*情報はすべて2016年11月時点のものです。
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