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2003年8月7日:インドにおける象の立場

         
  • 公開日:2003年8月7日
  • 最終更新日:2022年8月5日

「インドを代表する動物」と言ったらやっぱり「象」でしょう。

「いや、牛だろ」という人もいるかもしれません。
でも「インド象」という言葉はあっても、「インド牛」とはいう言い方はあんまりしません。

*最近は近隣諸国の立場を考慮してか「アジア象」などという言い方をすることもあります。

もし「選抜動物甲子園大会」なんていうものがあったら、インド代表は象が選ばれると思います。
選考委員が10人いたら7人は象に票を投じると思います。
ちなみに残りの票は牛に2票、インドトキコウに1票です。

こうして見事甲子園の出場権を獲得したインド象なのですが、はたしてインド国内での知名度、実力度、大事にされ度はどうなのでしょうか?

インドに行かれたことのない人はインドには象がうようよいて、空港でもジャンボジェット機をターミナルビルまで牽いていくのは象の仕事だろうと思っているのではないでしょうか。
隠したってだめです。そうに思っているに決まってます。

それは外国人が日本人はちょんまげをして、すぐにハラキリをすると思っているのと同じです。
ご存知の通り日本人はハラキリどころかハラマキだって最近あんまりしませんし、ちょんまげなんか相撲取りくらいしかしてない上に、肝心の相撲取りだって目立つ人はみんな日本人じゃないんです。

とても分かり易い解説ができて満足したところで先に進みます。

さて、インドにおける象の立場なのですが、少なくとも都市部に於いてはさすがに象は珍しい存在のようです。

デリーで行き付けの路上のとうもろこし屋で、とうもろこしを買って食べていた時のことです。
ちょっと離れたところにある大通りを、大きな荷(木の枝を束ねたものでした)を背中に付けた象が歩いて来ました。
するととうもろこし屋のおばさんの子どもが「ぞうだぁ~、ぞうだぁ~」と叫びながら大通りまで走って見に行ったのです。
私には彼の発した言葉の意味は分からなかったのですが、状況からみてたぶんそうだろうと思いました。
まさか象を見つけて象に走り寄る子どもが「夕べの夢は怖かったよぉ~、ふとんでうんちもらしてかあちゃんに怒られた夢だったんだよぉ~」などと叫ぶはずがないからです。
その光景を見た私は「いくら子どもとはいえインド人なら象くらいで驚いちゃいかんじゃないか」と思ったのですが、考えてみたらやはり普段は象をあまり見かけません。珍しいようです。

バンガロールの駅にほど近い商店街に象が来ていました。
その象には化粧がほどこされていて、荷物の運搬以外の何かをやるようでした。
何をやるのだろうと近くで見ていますと、インド人が順番に象の前に進み出ては象に鼻で頭をなでてもらっています。
中には子どもを抱いて行き、子どもの頭をなでてもらっている人もいました。
おそらく象から「祝福」を受けているのでしょう。
頭をなでてもらった人は、象使いにお金を渡していました。
やはり象は珍しい存在で、しかも尊敬されている動物なのでしょう。

ハイダラバードの動物園はすごく広い動物園です。
園内には白いトラを初めとしていろいろな動物がいます。もちろん我らがインド象だっています。
ただ、インド象は他の動物と待遇面で明らかに違うところがあったのです。
何が違うのかというと、自分たちのえさを自分たちで運んでいたのです。
偉いじゃないですか。いくら飼育係のおじさんの命令とは言え、たくさんの干草をトラックの荷台に載せていました。
もしかしたら自分たちのものだけではなく、他の動物のえさの準備もしていたのかもしれません。
だとすれば、象たちは独立した生計を営んでいることになります。労働の報酬として衣食住を得ているのです。
いえ、さすがに「衣」は得ていないかもしれません。

他にもよく知られているところでは、森で切り出した木材の運搬などに象が活躍しています。象って偉いですね。

さて、私たち外国人がインドで象と触れ合うとしたら、それは観光地などの観光用イベントでしょう。

一番有名なのはジャイプールという街にあるアンベール城の「象のタクシー」かと思います。
私もその昔乗ってみましたが、あんまり良い乗り心地とは言えません。
さすがに高い位置からの見晴らしは素晴らしいのですが、揺れがひどいのです。

先日久しぶりにジャイプールに行くと、アンベール城以外でも象のタクシーが活躍しているのを見ました。

それは市街地と湖の中に建つ「ジャルマハル(水の宮殿)」を往復するコースなのですが、欧米人のカップルが嬉しそうに乗っていました。

私は仕事で行っていたので残念ながら象に乗る時間はありませんでした。
そこで象の歩くコース沿いにあるレストランで外を見ながら食事をすることにしたのです。
ちょうど窓側にあるテーブルが空いていたのでそこにすわり、料理をオーダーした時でした。
大粒の雨が空から落ちて来たかと思うと、あっという間にどしゃ降りになってしまったのです。
道は雨水で川のようになり、人々は逃げ惑っています。普段はのろまなあの牛でさえ、雨宿りの場所を求めて小走りに移動して行くくらいすごい降りでした。
やがてそれぞれに目指す場所に逃げて行ったのか、窓の外の風景から動物がすっかり消えてしまいました。

そこへ登場したのが大きな象でした。
象はどしゃ降りの雨に体を打たれながらも堂々と歩いて来ます。さすがです。
そして背中に乗った観光客はというと、大きなブルーシートをすっぽりかぶせられていました。
あれじゃあ景色なんか何にも見えないし、乗り心地も悪いし、蒸し暑いだろうし、シートをたたく雨の音はうるさいだろうしで大変だなあと思いました。

相変わらず雨は激しく降り続いています。
そして象は相変わらず悠然と歩いています。

その姿は決して急がないインドの姿を象徴しているかのようでした。

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