ちょっと前までインドの列車には非常口というものが無かった。
もっともインドでは長距離列車にせよ近郊通勤電車にせよ、常にドアが開け放たれたままのことが多いので、なにもわざわざ非常口まで作らなくてもいいのではないか、それより高速で走っているときくらい、ドアが開かないようにする方が先決じゃないのとも思ったりする。
しかしインドの列車のもうひとつの特徴として、基本的に窓が閉鎖的であるということがある。
もちろん暑いインドなのだから、エアコンのない一般車両(という言い方が適切かどうかわかんないけど、とにかく安い席のことね)の窓は大きく開くし風もびゅんびゅん入って来る。
しかしどの窓にも鉄格子ががっちり取り付けられていて、少なくとも人の出入りができない。
さらにエアコン付きの車両となると、窓ガラスはすべてはめ殺しでしかもご丁寧に内側にもう一枚ガラスがはめられ、人のみならずアリンコでさえ出入りができないのである。
これが何事もなく運行されているときならもちろんなんら問題はない。先述のように列車のドアはいつでも開けられ、走行中に飛び降りることさえ可能なのだ。
しかし一朝有事の際にはやはり非常口は必要である。
じゃあ一朝有事とはどんな事態が考えられるのかと言えば・・・これは実に悲惨な出来事であったのだが、かつて列車が焼き討ちに遭い、逃げ遅れた乗客がたくさん亡くなったという事件があった。なにしろ出口は長い車両の両端にしかなく、窓には鉄格子がガッチリはめられているのだから・・・
それ以外にも脱線や転覆事故の時など、少しでも早く多くの人が脱出できる非常口は必須であろう。
おそらくそんな事件事故の教訓からだろう、ここ何年かでインドの列車にも非常口となる窓が設置(というか改良)された。
これはエアコン車の窓であるが、車両のほぼ中央の窓は有事の際に開けられるようになった。窓枠もそれが一目でわかるように赤く塗られている。
そしてこちらはエアコンのない車両のものである。
こちらも車両の中央辺りの窓(例外もある)の鉄格子が撤去されている。代わりに内側に梯子状のものが取り付けられているが、これはもちろん有事の際には外されるのである。
とまあ列車の非常口設置などから、インドもだんだん生活の安全基準が上がって来ているのだなあと実感できるのである。
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