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2003年6月26日:インド眼ビーム

         
  • 公開日:2003年6月26日
  • 最終更新日:2022年8月5日

インドに行くとインド人の視線がとても気になります。
やたらにみんなでジロジロ見るのです。
まあ、慣れてくるとどうってこともなくなり、むしろ芸能人になったようでとても気分がいいものなのですが、やはり初めはちょっと戸惑います。

タクシーなどに乗っていて交差点で停まったときなど、よく隣からの激しい視線に見舞われたりします。
すっごく視線を感じるものですから、あまり顔を曲げずにそーとそちらを伺って見ますと、隣の車の運転手や乗客がこちらをじーっと見ています。
初めの頃はそれだけでビビッてしまい、ひたすら前方を見て無視を決め込むのですが、彼らの視線は想像以上に強く、ついつい視線の発信源に引き寄せられてしまいます。
目と目の間に指を近づけて行ったときに、なんだか分からないけどムズムズしてしまう、そんな感覚とでも言いましょうか。とにかくすごい吸引力です。

こんな時日本人同士だと、「野郎ガン飛ばしてやがる!」と言うことになり、こちらがガンを飛ばし返すとそのまま喧嘩になってしまう可能性もあります。
視線を感じて振り向くにも、かなりの危険性と覚悟が必要となるということです。

それではインドでもそうなのでしょうか?
さっそくやってみましょう。

おっと、左隣のオートリキシャからすっごい視線攻撃が始まりました。
左のコメカミあたりがムズムズします。
さあ、覚悟を決めてガンを飛ばし返してみましょう。

ぎろ!

おや?相手は目をそらせてしまいました・・・

ところがこちらが前を向くとまたまた視線を感じます。

もう一度見てみましょう・・・

ぎろ!

あれ?また相手は目をそらしました。そ知らぬ顔で前方斜め上を見ています。

ははぁーん・・・野郎、小心者だな。

こんな感じでインド人はすごい視線を投げかけておきながら、こちらが見るとたいていは目をそらせてしまいます。
結局悪意など微塵もなく、ただ単に珍しくて見ているだけのようです。

ところがインド人だっていろいろなタイプがいます。小心者と言うほどではない人だっているのです。

またまた視線を感じます。ちょっとそちらに視線を送ってけん制してみましょう。

ぎろ!

おや?この人は視線をそらしませんね。まだじーと見てますよ。

それならこちらも・・・

じーっ!!

あはは、さすがに下に視線を落としました。どうやら私の視線の強さに負けたようです。

このようにインド人は好奇心だけで私たちを見ているのですから、あまりきつい視線で応酬するのは止めましょう。
それではどうするかと言いますと、視線を感じたらニコッと笑って「ハロー」とか「ナマステー」などと言うのです。

それでは実行に移してみましょう。

さっそく視線を感じました。さすが早いです。

ニコッ、「ハロー!」

ほーら、すごく嬉しそうにしています。
手なんか振っています。こちらも振り返しましょう。

おっ、今度の視線はなんだか今までとは違うようです。その数とか角度が全然違います。何でしょう?

あー、スクールバスが隣に停まったんですね。たくさんの子どもたちがバスの窓からこちらを見下ろしています。いっちょやってやりますか。

ニコッ、「ナマステー!」

あはははは、喜んでる喜んでる、バスの反対側に座っている友達にも教えているみたいです。
来た来た、すごい数です。ひとつの窓から顔というより上半身が4つ以上出ています。
みんなニコニコして手を振り口々に何か叫んでいます。

「ナマステー!」
「ハロー!」
「サヨナァーラ!」
「アリガートォ!」
「オハヨーゴジャイマース!」
「ボンジュール!」
「ニーハオ!」
「アロハー!」
「ジャンボー!」
「モーカリマッカ!」

も、もうそのくらいでいいでしょう。分かった分かった、私は芸能人でもなんでもないただの日本人だからね。そろそろ秩序を取り戻しなさい。私も笑いながら挨拶するのにちょっと疲れました。はいはいおしまいおしまい。

自分の蒔いた種とは言え、その想像をはるかに超える収穫に手を焼きながら前方に目を移せば、事故でもあったのか道は渋滞していて車は動きそうにありません。
そして左側からは万国共通の子どもの特徴「限度を知らないしつこさ」を発揮した、情け容赦のない攻撃がまだまだ続くのでした。

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