2016年グジャラート再訪・第40回 / ドワルカからジャムナガルへ

ジャムナガルのバススタンドもまた新築工事の真っ最中であった。
造りかけの建物の横にトイレだけはあったので用を済ませておく。

インド、グジャラート州ドワルカのバススタンド

このバススタンドもまた新築工事中であった。

大きなバススタンドには不釣り合いな小さな待合所でバスの到着をしばし待つ。

この時私の目の前に小額紙幣の束を持っている男がいた。バスの車掌と思しき男となにやら話をしていたので、もしかしたらお釣り用の小額紙幣を集める商売なのかもしれない。とにかくその大量の小額紙幣の束が実にうらやましい。できることなら私の500ルピー札と交換してもらいたいところである。

インド、グジャラート州ドワルカのバススタンド

小さな待合所でバスの到着を待つ。

そうこうしているうちに8時45分発のバスがやって来た。
思った通りここから乗る乗客は少なく、席は選び放題である。

インド、グジャラート州営のバス

このバスがジャムナガルまで連れて行ってくれるのである。

さて、グジャラート州営のバスはインターネットでチケットの事前購入と座席の指定ができることは以前にもご紹介したが(その記事はこちら「2016年グジャラート再訪・第8回 / アーマダバードのセントラルバススタンド」)、なにしろバスはぼろっちい普通の路線バスだし、はたして座席を予約して乗る人などいるのだろうかと半信半疑であった。ところがこのバスでその「事前予約」の人を初めて見た。

インド、グジャラート州のバス予約システム

グジャラート州営バスはインターネットで事前のチケット購入および座席の指定ができる。そもそも座席表が二人掛け+三人掛けになっているので、それだけで座席の狭いごく普通の路線バスだということがわかる。

たまたま私のすぐ前の席が「事前予約」されていた席のようであり、そんなこととは知らずその席に座った乗客を、車掌が別の席に移動させていた。ちゃんと予約は車掌に伝わっているというわけなのだ。(まあそりゃそうだろうけど)
そして次のバス停からちょっと身なりの良い夫婦が乗り込んで来ると、車掌の案内でその席に着いたのであった。
しかしその夫婦はあきらかに戸惑っているように見えた。そう、まさかこんなぼろっちい普通の路線バスだとは思わなかったのであろう。その証拠に夫婦は「事前予約」の権利を捨て、まだ空いてる席の中からもう少し居心地のよさそうな場所を見つけそこに移って行った。
事前予約は確実に座れるという点ではいいのだが、バスが空いてる場合はその場の雰囲気で席を選ぶ方が快適である。そしてこれはホテルなどの事前予約にも言えることである。

インド、グジャラート州営のバスの車内

早めに始発のバススタンドに行って乗ればたいてい座れるので、バスの状態や乗り合わせた乗客などを見てから席を決めるといいのだ。まあ座れないという可能性ももちろんあるけど。

このバスの車掌は実に陽気な男であった。
乗客に切符を売りながらもなにやら冗談などを言い笑わせ、車内が込み合って来ると少しでも多くの人が快適に座れるよう調整したり、しまいには車掌用の席まで乗客に与えてしまうほどであった。

インド、グジャラート州営のバスの車内

バス停に止まるたび乗客は増えて行き、車掌も大忙しである。

そんなナイスガイの車掌は私のところにも切符を売りにやって来た。ジャムナガルまでのバス賃は99ルピー(約158円)であった。
私は昨日と同様に財布から500ルピー札を取り出しナイスガイに渡す。
ナイスガイは少し困った顔をして「釣りはない」と言う。
私は空の財布を見せ「それしかないんだよなあ」と返す。
すると車掌は「じゃあ他の乗客からお金を集めたらお釣りを渡す」と言い、私のチケットに「400」と書き入れた。この時点でもう1ルピーの釣りは渡す気がないところが何とも言えないが、まあ500ルピー札が使えるなら1ルピーくらい手数料だと思ってナイスガイにあげてしまっても構わないのだ。

インド、グジャラート州のバスチケット

ジャムナガルまでのバス賃は99ルピーである。

バスが走る道路はカッチ湾に沿っているため、湿地帯が多いらしくあちこちに湖や塩田が見える。

グジャラート州カティアワール半島のフラミンゴ

カッチ湾の最深部は小カッチ湿原と呼ばれる地域だが、全般的に湾の沿岸は湿地が多いようである。

そして湖にはピンク色のフラミンゴがたくさんいる。
もちろんここは行川アイランドではないので野生のフラミンゴである。

グジャラート州カティアワール半島のフラミンゴ

たくさんのフラミンゴが羽を休めたり餌を取ったりしている。

現インド首相モディの地元グジャラート州は幹線道路の整備が進んでいて、このぼろっちいバスでもそれほど揺れず、快走するのであっという間にジャムナガルに近づいて行く。

10:20 ジャムカンバリヤ(JAMKHAMBALIYA)バススタンドに到着。

インド、グジャラート州JAMKAMBALIAのバススタンド

ここまで来ればもうジャムナガルは近い。

この町はわりと大きいのかたくさんの乗客が乗り込んで来た。

インド、グジャラート州JAMKAMBALIAのバススタンド

ここでいままでにないほど大量の乗客が乗り込んで来た。

窓の下に物売りの少年が近づいて来たので、売り物を見せてもらうとポテトチップスであった。

インド、グジャラート州JAMKAMBALIAのバススタンドの物売り

大きなバススタンドにはこうした物売りがいるので便利である。

ジャムナガルまでもうあと少しなので気も楽になり、さっぱり塩味のポテトチップスを買う。値段は10ルピー(約16円)である。

インド、グジャラート州JAMKAMBALIAのバススタンドの物売り

少年の物売りからシンプル塩味のポテトチップスを購入。

さっそくポテトチップスを食べようとしていると、なにやら視線を感じそちらを見てみると、車内に乗り込んで来たポップコーン売りのおやじと目が合った。おやじは私が無類のポップコーン好きだと見抜いたようである。

インド、グジャラート州JAMKAMBALIAのバススタンドの物売り

ポップコーン売りのおやじは、こちらの心を見透かしたようにポップコーンを見せる。

なのでポップコーンも買う。これも10ルピーである。

インド、グジャラート州JAMKAMBALIAのバススタンドの物売り

結局誘惑に負けてポップコーンも買ってしまう。

バスは再び走り出した。もうあと1時間ちょっとでジャムナガルに到着するはずである。
私は大好物のポップコーンを一粒ずつ口に入れ、本来なら至福のひと時とポップコーンをゆったり味わう環境にあるはずなのだが、どうも心の奥がざわついて仕方がない。そう、それは私のチケットのお釣り400ルピーのことである。
先ほどのバススタンドからもたくさんの乗客が乗り込み、すでに車掌の手には私に400ルピーを返しても有り余るほどの札が握られている。そしておそらくこの先それほどたくさんのお釣りが必要になるとも思えない。なのでそろそろ私に400ルピーを返してくれてもよさそうなものである。実際後から乗って来た乗客に100ルピー札のお釣りを渡しているところを何度も見ているのである。

グジャラート州営バスの車掌の札束を握る手

あれだけの乗客に切符を売ったので、これくらいのお金が集まるのは当然であろう。

しかし車掌は極力こちらを見ないようにしているように思われるフシがある。
そして車掌は持ち前の陽気さをさらにパワーアップさせ、かなりの上機嫌で周りの乗客と声高に談笑している。
まるで車掌は臨時収入でも入って嬉しくて仕方がないというようにも見える。
まさかそれは私の400ルピーのことではないだろうな。いや、あのナイスガイがまさかそんな・・・
いいか、お前にあげたのは1ルピーだけなんだからな。

結局車掌から私に対してのアプローチは何らなく、11時52分、バスはジャムナガルのバススタンドに到着してしまった。
あとは車掌がどこぞに消える前にふん捕まえて400ルピーを奪還するのみである。

インド、グジャラート州ジャムナガルのバススタンド

お釣りをもらえないままバスは目的地の到着してしまった。

バスが停止すると車掌はいち早くバスを降りて行ってしまった。
こちらは他の乗客に阻まれて思うように動けない。くそっ、私の400ルピーはやつの豪華な夕食になってしまうのか。

と思ったら、どうやらこのバスはジャムナガル止まりではないらしく、車掌は車外で降りる客と乗る客の整理をしていた。
しかし意図的に私の方を見ないようにしているのは間違いない。
私は素早く車掌に近づくと「400ルピーを返せ」と言った。当然の権利である。
ところが車掌は「何だ?それは?」ととぼけるのである。とんでもないナイスガイだな、お前は。
そこで私はチケットを見せた。そこには青いボールペンで車掌自らが書き入れた「400」の文字があるのだ。

さすがの車掌もそれ以上抵抗しなかった。もしかしたら「もう返しただろう」とか「その数字が何だと言うのだ」とか言って来る可能性もあるなと思ったが、そこはやはり根がナイスガイなのかもしれない。
それでも車掌は先ほどまでのナイスガイぶりはどこへやら、憮然とした表情で少し乱暴に400ルピーを突き出して来たのであった。

インド、グジャラート州ジャムナガルのバススタンド

まあお釣りはもらえたので良しとしようとは思うのだが・・・

今まで何度もこうした路線バスに乗ったが、乗務員たちは総じて親切であった。
なのでこんな嫌な思いをしたのは初めてであり怒り心頭であったが、冷静になって考えれば、3時間ものバスの行程の中、一度もお釣りの催促をしなかったこちらにも非がないとは言えないのかもしれないなとも思った。
そして何より、バスの中で見たあの車掌の働きぶりを思い起こせば、やはり根は悪いやつではないのだろうなと思うことにして、バススタンドを後にしたのであった。

*情報はすべて2016年11月時点のものです。

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インドのマフラー