細密画その2

絵具もキャンバスもいろいろあるのだ

子どもの頃は絵具というものは初めから「絵具」として存在していて、文房具屋に行けば手に入るものとの認識しかなく、もう少しがんばって深く考えたところで、せいぜい絵具工場の大きなタンクの中にどろどろとした各色の絵具が詰まっていて、そいつをアルミニュームのチューブに充てんして出来上がるというくらいしか思い浮かびませんでした。

それがまさか・・・絵具は生まれながらにして絵具というわけではなく、何か別の物質の色を利用していたなんて!

まっ、考えてみればそれほど驚くことではないわけです。何にだって原料はあるわけですから。

インドの細密画の絵具で、インドの細密画はいったいどんな絵具を使っているかと言えば、そのほとんどは鉱物を砕いて作ったものです。
たとえば赤はガーネットやルビー、緑はマラカイトやエメラルド、青はラピスラズリやサファイアといった具合です。
ただ今挙げた例ですと、前者と後者ではだいぶお値段に開きがあります。ガーネットとルビーでは(質にもよりますが)桁が違うほどの差があるわけですね。
じゃあそれらをどうのように使い分けるかと言えば、イメージとする色の再現性もさることながら、やはりその絵にどれだけの価値を置くかということになろうかと思うわけです。つまり力作にはそれなりにいいものを使うということですね。

インドの細密画の画布同じことはキャンバスとなる材質にも言えることで、その昔は高級品は薄い象牙の板に描いたものなどがありました。
それは別に象牙が絵具の乗りが良いとか発色が良くなるというようなことではなく、象牙自体の持つ価値に加え、さらにそこに繊細にして流麗なる絵を描くことによって相乗効果的価値を創出しようというわけです。いわば絶品の料理を極上の器に盛り付けるようなものでしょうか。

しかし現在ではワシントン条約によって象牙の取引が禁止されていますので、インドでも象牙を使ったものはまず見かけません。

では今は何に描いているのかと申しますと、シルクの布や紙、それから木や石の板といったところになります。

一般的によく見かけ、値段もお手頃なのはシルクの布に描いたものです。ただこいつは薄い布であるために柔軟性があり、それがために表面の絵具がはがれてしまうことがあります。もっとも折れ曲がらないようにしっかり管理したり、額装してしまえばそういう心配もなくなるのですが、品質管理の意識の低いインド人の手にあるうちにすでに損傷してしまっているものもありますので、選ぶ際にはその点が要注意なのです。

またマーブル(大理石)の薄板に描かれたものもなかなかきれいです。お土産屋などでは裏側から灯りで透かして見せ、その良さをアピールしたりなんかしています。でも石は重くてもろいので、日本に持ち帰るのもなかなか大変なわけです。

とまあ、画布材質にもいろいろ特徴があるのですが、腕のいい画家がよく使う材料のひとつに「古紙」があります。
これはもともとは昔の書物だったり書類だったりしたものをキャンバスとして利用し、その一部を残して絵で埋めてしまうというものです。一部を残すのはその紙が古い書物だということがわかるようにするためです。またそこに書かれている文言を活かすという意味もあるようです。
で、そうした古い書物自体ある程度の価値がある(少なくとも普通の紙に比べたら貴重)ため、まだたいした絵が描けない画家はそういうのは使わないわけで、従って「古紙に描かれたもの」というだけでも価値判断の基準にはなります。

一方普通の紙に描かれたものの中には「えっ、これ本気で売ろうと思ってんの?」というレベルのものもあり、それを描いた本人やその関係者から感想を聞かれても返答に困るという代物もあります。
細密画の盛んな街ではそこらじゅうに工房があり、そこはまた実戦式絵画塾みたいな役割も持っていて、若き弟子たちが毎日せっせと絵筆を動かしています。そしてそういうまだ未熟な「弟子のまた弟子」みたいな人が描いたものまで、あわよくば売ってしまおうとするから恐ろしいのです。

こちとらアニメ大国ニッポンの人なんだからな!あんまなめんなよ!

そういう下手くそな人は古紙なんか使うのは百年早いわけで、古紙ならぬ反古紙にでも描いていればいいのであります。

でまあ、ちゃんとした人の描いた細密画は「ラクダ隊商パインズクラブ楽天市場店」にありますので、ぜひ見てちょーだいとお願いする次第なのであります。

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