「全責任はわしが取る」と職人のおやじは胸を張った
その昔、国防のあり方に関して「鍵かけ論」というのがありました。自宅に鍵を掛けるのと同じように、国に軍備は必要だという理論です。
まあ国レベルの問題はさておきますが、あくまでもわたくし個人のレベルと致しましては、自分の生命並びに財産を守るためには鍵を掛けます。特にインドに行った時などは、カバンのファスナーにまで鍵を掛けたりします。
カバンのファスナーに付けるのは南京錠です。なので正確には「鍵を掛ける」ではなく、「錠(錠前)を掛ける」となります。
でもそれではなんだか「情をかける」みたいに聞こえてしまうので、間違いと思いつつもごく一般的に使われる「鍵を掛ける」という表現を使うのです。
いえ、そんな「正しい日本語講座」みたいなことはどうでもいいのです。それじゃいつまでたっても話が進みません。
オールドデリーのとある錠前屋で、店番をしていたおやじにいろいろな南京錠を見せてもらっていると、突然おやじは「この鍵はわしが作ったんだ!」と大きな声で言いました。びっくりマーク付の言葉ですが、決しておやじは怒っているのではなく、もともと地声がでかいのです。
そりゃあ南京錠だって誰かが作っていて、もしかしたらそれは手作業みたいな作り方をしてるのかもしれませんけど、いきなり「わしが作った」などと言われてもにわかには信じられず、何度も「本当?本当?」と子どものように聞いてしまいました。
そんな私のあまりに無邪気な驚き様に、おやじはすっかり気をよくして、自慢の南京錠についてあれこれ語り始めました。
「いいか!これはこのフックの先端だけでなく!根元の所にも切り込みが入っていて!ダブルでロックするから絶対に破られないんだ!」
とか
「見ろ!この年号の刻印を!これは信頼の証なんだ!この年号までにこの南京錠が破られるようなことがあったら!全部わしが責任を取るんだ!」
と、口に入れたパーン(噛みタバコ)の赤いカスをそこら中にぶり撒きながら、おやじはまさしく声を大にして説明してくれたのです。
お蔭で私は南京錠に関して今まで気づかなかった(気にしてなかった)ことを知ることができ、またそれ以上にこのおやじの燃えるような職人気質を知ることができました。
ただ不思議なのは、このおやじは一切英語を解さずヒンディー語だけでまくし立て、私はといえばヒンディー語は挨拶の言葉くらいしか知らないというのに、なんとか言ってることがわかってしまったということでした。
まあ相手が錠前職人なだけに、双方の理解に掛け違いはないでしょう!
そんなインドの南京錠は「ラクダ隊商パインズクラブ楽天市場店」で販売しております。
*すでに売り切れている場合もございます。その際は何卒ご容赦願います。