前回インドのオートリキシャに於けるサイドミラーの車内取付化を、「進化の過程によるものではないか」というようなことをちらっと書いたのですが、あれを書いた後で「ああ、そういえば昔のオートリキシャが写っている写真があったなあ」ということを思い出し、探してみました。
ありました。これです。なにぶん古いポジフィルムをスキャンしたものですので、ちょっと画像が見づらいのですが、何卒ご容赦下さい。
また、色補正も行いましたが、そもそも規範とするものがないので、実際の色とは多少違うかもしれません。その点もご了承願います。
さて、この写真は1960年代の前半に、ニューデリーのインド門近辺で撮られたものです。お客を二人乗せたオートリキシャが、交差点を右折しようとしているところです。
今のオートリキシャと違うところが何点かありますが、まず目に付くのはボディーの色でしょう。
現在デリーに走っているオートリキシャは、グリーンのボディーに黄色い幌というスタイルですが、写真のものはブルーの単色でとても地味です。いかにも昭和30年代、まさしく三丁目の夕日といった感じです。
幌屋根も、現在の立体縫製ぴっちりきっちりシワなしタイプとは違い、なんだかだらしなく垂れ下がり、鉄枠がむきだしになっているところもあります。
そんな風に、細かい相違点を挙げればキリがないのですが、今回注目すべき点はサイドミラーなのであります。
では、そいつを見てみましょう。どれどれ・・・
おお、フロントガラスの横に、なにやら出っ張ったものが付いているではありませんか。
残念ながらこの写真では鮮明には見えませんが、この位置から見て、これはサイドミラー以外の何ものでもないでしょう。
他に考えられるのは「方向指示器」ですが、今でもオートリキシャのドライバーは手信号で済ませていますので、当時そんなシャレたものが付いていたとは考えづらいです。
ただよくわからないのが、手前側の出っ張りに引っ掛けられたワッカです。
色艶から見て金属製のもののようですが、いったいなんなのでしょうか?
駐車違反でもしてしまったのでしょうか?
まあとにかくこれで、昔はオートリキシャも外側にサイドミラーを付けていたということがわかったわけです。
しかしやがてインドにも車が増え始めて参りますと、オートリキシャはその小さな体をフルに生かし、車の渋滞の列に果敢に突入し、割り込み、ねじ込み、かいくぐるといった荒業を行うようになり、その際の車との接触などでサイドミラーが壊れてしまうというようなことがたびたび起こるようになったのでしょう。
そしてその修理を繰り返すうちに、ある日誰かが「それなら今度は壊れないように車内に取り付けてしまおう」という方法を考え付いたわけです。
そのアイデアはオートリキシャ界に万雷の拍手を持って迎え入れられ、瞬く間に各オートリキシャに波及していったのだと想像するわけであります。
そんな無名の修理工やドライバーたちの努力に支えられ、今日もオートリキシャはバタバタと元気に走って行くのであります。
オートリキシャに栄光あれ!