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小さく刻むか一気に行くか、ここが思案のしどころなのだ:ライプール

         
  • 公開日:2011年4月13日
  • 最終更新日:2022年6月3日

インド・ライプールからのルート当初私はライプールからは一旦東海岸に出て、海岸沿いのプリーでシーフードに舌鼓を打った後にコルカタへ北上し、そこからヴァラナシ、デリーと西進するつもりでした。
ところがどうしてもライプール-プリーとコルカタ-ヴァラナシの列車の切符が取れず、それでいてプリー-コルカタとヴァラナシ-デリーの切符が取れているという、なんだか点線みたいな実に具合の悪いことになってしまっていたのです。

そこで私はガイドブックに付いているちゃちな地図と、すでに取れている二枚の切符を交互に眺めては、う~んう~んと来る日も来る日も(実際マハーバリプラムに居た時から)ライプールからどう動こうかと、思案にふけっていたのであります。

この頃の私はすでに2ヶ月半に及ぶ旅で体重を7kg落とし、溜まりに溜まった疲れはすでにピークに達しており、さらには旅の一番の目的地であったジャグダルプル訪問を無事に果たせたことでホッとしていたこともあり、あとはもうなるべく楽な方法でデリーへ帰り着きたいと思っていました。

そこでこの際残念ながら「シーフードに舌鼓」はあきらめ、プリー-コルカタの切符はジャグダルプル滞在中にキャンセルしてしまい、残すは切符の取れているヴァラナシにライプールからいかにして移動するかということを考えていたのです。

要は内陸部をバスに乗り継いで移動して行くということになるわけですが、あまり長い距離のバスには乗りたくありません。ましてまず眠ることのできない夜行バスに揺られて行くなどもってのほかです。できるだけ日中の移動だけで済む、数時間以内の距離で刻んで行きたいところなのです。

で、ひとつの案を考え出しました。まずは下の地図を見て下さい。インド・ライプール周辺の地図 地図下部の赤丸がライプールで、ヴァラナシはそのずっと上の赤丸になります。こうして地図で見ると直線ですっと移動すればいいように思いますが、その間には山岳部が横たわりそう簡単には通り抜けられないのです。(たぶん)

で、私が考えたのは、ライプールから一旦真西のナグプール(左下の黄色の丸:Nagpur)に出てそこで一泊し、翌日北上してジャバルプル(その上の黄色の丸:Jabalpur)で一泊するという、まるで送りバントのように塁をひとつずつ進めて行くルートでした。
ここでもまた「なぜライプールから直接ジャバルプルを目指さないのか」と疑問に思われるかもしれませんが、その二都市の間にも険しい山があるので、地図上の距離で見るより実際の所要時間が大幅にかかるだろうとスルドク予想したのです。なんたってそのあたりの山は、インドでトラが見られる確率のいちばん高いと言われるカーナー国立公園があるくらいなのです。だからここは安全策で迂回というわけなのです。

というわけで、そんな消極策を頭に置いてライプールのバスターミナルに下見に行きまして、掲げられている看板から「ナグプール」という名を探したのですが、これがあーた、すべてデーヴァナーガリー文字(ヒンディー語)の表記ばかりでよくわからないのです。そこでターミナル内にあった私設のチケットブースらしきカウンターに行き、中にいたおっさんにナグプール行きのバスのことを聞いたところ、「ナグプールに何しに行くんだ?」と不思議そうな顔で聞くわけですよ。
まあそう聞かれちゃ一応一連の経緯を話しておこうかということで、列車のチケットが取れなかったこと、最終目的地はヴァラナシであること、そのためにナグプール、ジャバルプルとバスを乗り継いで行こうと思っている、ということを説明しました。
さらにMくんがでかしたことにちゃんとした地図を持っていたので、そいつをその場で広げて、ルートを指で追いながら、ほら、こうして、こうやって、こんな風に行こうと思ってるんだけど、まずはナグプール行のバスの時間をおせーて、と聞いたのです。
その頃にはカウンターの中にいた男たち全員(といっても3人くらいですが)が地図の前に集まり、さらにはその辺にいたまったく関係なさそうな人たちもわれわれの周りに集まって、みんなで一枚の地図を覗き込むという大変な騒ぎになっていました。
そして最終目的地がヴァラナシだということを知ると、みんなして「列車で行け」「列車がいいぞ」「列車は寝て行けるから楽だぞ」などと、この話の発端である「列車のチケットが取れなかった」という事実を無視して列車を勧めるのです。極めつけはバスターミナルでバスのチケットを売っているはずのカウンターのおっさんまで、「バスなんか揺れて寝られやしないから、列車にした方がいいぞ」などと言うのです。まったく沢木耕太郎の旅した時代に逆戻りです。

まあみなさん困っている外国人のために親切であれこれ言ってくれているのはわかっておりますのであまり無下にもできないのですが、そういつまでも「列車、列車」と言われていても埒が明きません。そこで私は少々声を大きくして、「だぁ~かぁ~らぁ~、列車のチケットは取れなかったの。で、バスでヴァラナシに行くにはどうするのが一番いいのか?ってことを知りたいわけですよお」と言ったのでした。

するとカウンターのおっさんは、「ここから直接ヴァラナシに行くバスはない・・・だけど、アラハバード行のバスならある」と言うのです。
私がアラハバードという場所がどこなのかわからずにいると、周りから何本もの手が地図の上に延びて来て一点を指し示し、「ここだ、ここ、ここがアラハバードだ」と教えてくれました。(上の地図の紫の丸:Allahabad)

見ればアラハバードはヴァラナシのすぐ近くのようです。周りのみんなも「そこまで行けばヴァラナシは近い」と言っています。

ならばここはいっちょ最後の気力を振り絞って、みなさんが勧めてくれるその「アラハバード行のバス」に乗って一気にヴァラナシまでの距離を縮めることにしますか。

よーし!もう送りバント作戦はやめやめ!
ここは攻めの一手で一気に三塁を目指すのだ!

おっさん、アラハバードまでどのくらいかかる?

えっ・・・19時間・・・・

まあ・・・それで一気に距離を詰められるんだったら、しゃーないか・・・

ということで、次の目的地はアラハバード、出発は明日の午後4時15分と決まったのでありました。

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インドの伝統工芸細密画