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スリランカは果てしなく遠かった・その2:ダヌシュコーディー

         
  • 公開日:2010年12月14日
  • 最終更新日:2022年6月6日

半島の先っちょまで行く四輪駆動の乗り合いトラックは、後から来たグループ客に占有されてしまい、私は置いてきぼりの形でその場に取り残されてしまいました。
さらに乗り合いトラックの係のあんちゃんは、そんな私をまったく気遣う風もなく、善後策を授けるどころかほとんど無視といった状態です。

そんな風にみんなして弱い立場の外国人旅行者につれない素振りをするのなら、私だってもうお前らなんて頼りません。

そう、自分で歩いて行くからいーのです。確かガイドブックには「4kmほど」と書いてあったと思うので、「炎天下の砂浜」という条件を差し引いても、1時間も歩けば着くはずなのです。

ふん! もうあんなボロトラックなんかあてにするもんか!
お前ら途中の砂浜で立ち往生してしまえ!

そんな怒りを歩くパワーに変え、私はどこまでも続く白い砂浜を歩き出しました。と、しばらく歩いたところで前方になにやら大きな物体が・・・

おお!

あれはウミガメだ!ほら見ろ、神様は頑張る人を応援して下さっているのだ。トラックに乗ってしまっていたら、ウミガメを見ることはできなかったことでしょう。

私はウミガメが驚いて海に逃げて行ってしまわぬよう、ゆっくりと近づき写真を撮りました。

写真を撮って一安心した私は、さらにウミガメに近づいてみたのですが、それでもウミガメは逃げようとしません。

・・・・

あっ、死んでる・・・

半分干からびたウミガメを見て、私はにわかに不安になりました。

もしかしたらここは、迷い込んだら二度と生きては出られぬ灼熱砂漠なのかもしれない!

しかしまだ歩き始めて10分やそこらです。こんなところで引き返したら、きっとトラック野郎たちにあざ笑われるに決まってます。

そこで私は気を取り直し、なんにもない砂浜の中のほんのちょっとした目標物を目印にまた歩き始めました。最初に定めた目標物は小さな木造の船でした。

とにかくあそこまで歩いてみよう。

と船の所まで歩いて来ましたら、どうやらこの船は漁船のようです。

こんな漁船があるということは、この辺にも人が住んでいるのでしょうか?

それにしても見渡す限りなにもありません。

ふたたび前方に次の目標物を見つけ、それを目指してひたすら歩きます。

あれはいったいなんだろう・・・暑さでだいぶ疲れて来た私には、この石でできた物体が墓標のように見え、また少し不安になって来ました。そんな「墓標」のはるか向こうには、豆粒ほどの大きさのトラックが2台走って行くのが見えました。

ああ、あのままおとなしくあそこで待っていれば、今頃はトラックに乗れていたのだろうなあ・・・

いやいや、男が一度決めたことなのだから、そんな弱音を吐いたらいかん!

と自分を奮い立たせ、またまた浜辺を歩き出しました。

50分くらいも歩いたでしょうか、とにかく1時間ほどで到着すると思っていたのに、目の前にはまだまだ長い砂浜が続いているだけで、一向に先端らしきところは見えて来ません。さすがに暑さと疲れでかなり体が参って来ました。

そこで後ろを振り返ると、ちょっと前に通り過ぎた小さな建物が目に入りました。う~ん、とりあえずあそこで少し休んで、この先どうするか決めるとするか・・・

少々不本意ではありましたが、私は来た道を戻り建物まで行って見ることにしました。

その建物は教会でした。十字架がなければただの漁師小屋にしか見えないようなみすぼらしい建物でしたが、見渡す限り砂浜と海しかない中にあって、唯一太陽の光を遮ってくれる屋根はとてもありがたく感じました。

日陰に腰をおろしペットボトルの水を飲むと、先ほどまでの緊張感が一気にほぐれたためか、自分でも驚くほど心臓の動悸が高まり呼吸が早くなって来るのがわかりました。
と同時に「はたして今来た道を自力で歩いて帰れるのか?」ということが、今になってものすごく大きな不安となってのしかかって来たのです。

と、とにかく・・・息を整えて気分を落ち着かせ、ゆっくり休もう・・・

そしてもちろん、

ここで引き返そう。

こうして私のダヌシュコーディー単独踏破の夢は打ち砕かれたのでありました。

【教訓】 怒りに任せた突発的かつ無計画な行動は充分に慎みましょう。

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動物の鈴・アニマルベル