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インド:こそこそ買ってこそこそ飲む・インドの酒屋さん

         
  • 公開日:2006年12月23日
  • 最終更新日:2022年6月24日

明るい店内に並べられた数々のお酒。
ここはインドとしては新しいタイプの酒屋さんです。じゃあ古いタイプの酒屋さんはどんなかといいますと、鉄格子の中にわずかに開いた「窓口」で、お酒とお金のやりとりがこそこそ行われるといった、なんだかパチンコの景品交換所的なものなのです。

今でもそんな店は多いのですが、そのような店では当然お酒を直接手にとってそのラベルを見て「ほおほお、シソを漬け込んだ焼酎なのか」などという品定めなどはできません。窓口に進み出たらすばやく「キングフィッシャー、スリーボトル、ノーノー!ノットストロング」などと自分の要求を言い、あらかじめ用意していた100ルピー札を窓口にねじ込むのです。しかしその時決して札から手を離してはいけません。ビールが窓口から差し出されるのと引換に放すのです。そして必ず「10ルピーバック!」と叫び、自分がちゃんとビールの定価を知っていて、しかも3本くらいなら瞬時に掛け算と引き算を駆使して、おつりの額をはじき出してしまうのだぞ!ばーろー!といった威嚇をしなければならないのです。

さて、無事にビールが手元に来ても安心はできません。
なぜなら、そのビールが冷えているとは限らないからです。いえ、インドでは酒屋で買ったビールは、冷えていないと思った方がいいのです。いえいえそれどころか、レストランで出されるビールでさえあまり冷えていないものがあるくらいなのです!ちゃんと冷やしとけよ!ばーろー!

ここで上の写真をもう一度見て下さい。
客である右側の男が、ビールの缶を持っています。
そして左側の店員が、そのビールを袋に入れようと手を伸ばしています。

この光景を日本的に解説するとこうなります。

客「じゃあ、このビール買っていこうかな」

店員「へい!まいどあり~!」

次に同じシーンを、インドの実情で解説するとこうなります。

客「なんか冷えがイマイチみたいだなあ・・・」

店員「そんなことないっすよ、さあ、袋に入れるから早く渡しなさい」

そうなのです、この客はビールの冷え具合を確かめているのです。だからこの男は缶ビールに手のひらをべったりくっつけているのです。
で、店員の方はあまりその辺を深く詮索されるのがいやなので、手を伸ばして早く袋につめて売ってしまおうと思っているわけですよ。

まだまだ飲酒という行為をこころよく思わない風潮のあるインドでは、お酒が飲めるだけありがたいと思わなければいけません。ビールの冷えがイマイチくらいなんですか。
炎天下のインドの大地を、喉の渇きに耐えながら長距離移動した挙句、たどり着いたレストランで酒がないと言われたあの辛さを思えば、なまぬるいビールだってありがたく飲むことができるのです。

でもまあ人間と言うのは欲望のカタマリですから、ビールがあればあったで、

「なんで冷やしておかなかったんだよ!ばーろー!」

と叫んでしまうのでありますよ。
やだねったら、やだね。