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インド :この気まずい雰囲気はなんなんだ・ラジャスタンのパペットショー

         
  • 公開日:2006年11月29日
  • 最終更新日:2022年6月24日

私はお笑い好きですが、だからといって寄席にはあまり早い時間に行くもんではないですね。
特に平日、開演と同時に入ってごらんなさい、あーた。
客席がまばらなのは言うまでもありませんが、5人くらいしか入ってなかったりしますよ。
でもこちらも貧乏人ですから、ついつい前の方に座っちゃうわけですよ。そうしないと損なような気がしましてね。

で、最初に出て来るのが前座さんなわけです。
まだ羽織なんて着ちゃいません。浴衣みたいななりで舞台にちょこちょこ出てきますので、初めはまさかその人が落語をやるとは思わないわけです。
前座さんは舞台中央まで参りますと、さっと座布団をわきに寄せまして、板張りの舞台の上に直接正座をして語り始めます。
演目は俗に「前座話し」なんて言われている「まんじゅうこわい」とか「じゅげむ」なのですが、これがまあ何と申しますか・・・下手なわけですよ。
でもって前座さん、大変緊張しておりますので、聴いてるこちらも緊張します。緊張の理由は双方とも同じで、話しの途中でとちったりしやしないかってことです。
こうなりますともう誰も笑ったりしません。演者とお客総勢6名の真剣勝負になってしまうのですよ。そりゃあもう、疲れるの何のって・・・

ジャイプールの中級ホテルにチェックインすると、なにやら屋上からにぎやかな音楽が聞こえて来ました。
近くにいたボーイに尋ねると、「パペットショー」だと言うではありませんか。
それはラジャスタン地方の伝統芸能で、糸に操られた人形(王様とかお姫様です)が繰り広げる大活劇といったものなのです。それをこのホテルの屋上で、夕食を食べながら見られるというのです。しかもタダで。

私がテーブルに着いた時にはまだ他のお客は誰もおらず、客待ちの手持ち無沙汰状態で人形遣いのおやじと音曲担当の少年がいるだけでした。
しばらく待って、私の他にお客が来る気配がないのを悟ると、いよいよパペットショーは開演されました。インド、ラジャスタンの操り人形ショー人形の動きはとてもスピード感のあるもので、そして劇の進行もとてもスピード感があるもので、つまりはあっと言う間に終わってしまったわけです。もしかしたら「少数観客用短縮バージョン」だったのかもしれません。

チップを要求するおやじの手にお金を渡すと、屋上にはまた静寂が戻って来ました。
私はショーが見やすいようにと舞台の方向に向いて座っていますので、だまって床に座り込むおやじと少年を眺めながらビールを飲むハメになってしまいました。
しかし、いつまで待っても新たなお客は来ません。来る気配すらありません。
そして次第に、屋上はなんだか気まずいいやぁ~な雰囲気が漂い始めたのであります。
せっかくパペットショーを見ながらビールを楽しもうと思っていた私こそ、とんだ災難です。

こうして私は甘美な酔い心地を楽しむ余裕も無く、人形遣いのおやじたちと同じくらい強い気持ちで、

「早く来いよ! 他のきゃくう!」

と念じなければならないのでありました。

木彫りのガネーシャ