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アーマダバードで写真を配る・その1:2013年グジャラートの旅:エピソード編・第5回

         
  • 公開日:2014年1月15日
  • 最終更新日:2022年6月15日

アーマダバードに来るのは三年ぶりである。

実はその三年前、この街の人たちの写真を何枚か撮っていて、今回はそうした写真を配ろうと思い持参した。

全般的にインド人は写真に撮られるのが好きだが、こと観光客の少ないアーマダバードでは外国人が珍しいということもあってか、こちらがカメラを示して「撮ってもいいか?」と聞くとほとんど断られることもなく、ちょっと恥ずかしそうにしながら軽く頷き、じっとシャッターの下りるのを待っていたりする。それでいてほとんどの場合「写真を送ってくれ」などとは言わず、さらにはデジタルカメラの画面での確認さえ求めず、何事もなかったかのように自分の仕事に戻ったり立ち去ったりしてしまうのである。なんともいじらしくも愛すべき人たちではないか。そんな人たちに写真をあげたらさぞかし喜ぶだろう。
だったら住所を聞いて送ってあげたらいいじゃないかと言われるかもしれないが、それだとその人がどれくらい喜んだかを確認できないので、ぜひとも自分の手で渡して喜ぶ顔が見たい。なんともいやらしくもおしつけがましい性格である。

もっともその辺を歩いていた人などを探し出すのは無理がある。
なので配るのは、毎日同じ場所で商売をしている人限定ということになる。

まず手始めは三年前に泊まったホテルのフロントの人である。
何気なくホテルに入って行き「部屋はあるか?」と聞く。
すると相手は私のことを思い出すこともなく「ある」と答える。
料金を聞き部屋を確認し、いよいよ宿帳の記入となったその時、パスポートとともにバッグから取り出した写真をそっと差し出す。
インド、アーマダバードの人々驚く相手。
「おおっ、あなた様はもしや・・・」
「そうよ、思い出してくれたかい。おれはまたこうして戻って来たってことよ。今回もここにやっかいになるから、まあよろしく頼むよ」
となるはずであった。

それがホテルごときれいさっぱり無くなってしまったんじゃあどうしょもない。

気を取り直して串焼きマトンの露店に行って見ることにした。
その店は串刺しのマトンを炭焼きにして、ハンバーガー風にして食べさせる屋台なのだが、賑やかな旧市街のバザールにあってなかなか流行っていたので、きっと今もあるはずである。でもホテルのこともあるからあまり期待はせず、ましてや写真に感激してタダでマトンバーガーをくれるかな、などということも本当にまったくぜんぜんこれっぽっちも期待などしていないのだ。

インド、アーマダバードの人々串焼きマトンの屋台はあった。そしてマトンを焼いているあんちゃんは、写真に写っているその人のようである。これは好都合だ。タダでマトンバーガー・・・いやいや、私は喜ぶ顔が見られればそれだけで充分なのである。

まずは何気なくマトンバーガーを注文した。
相手はちらっとこちらを見たが、私のことを思い出した風でもない。三年ぶりなのだ、まあ無理もなかろう。私は屋台の横に置かれたベンチに座ってマトンバーガーを頬張りながら、頃合いを見計らって写真を取り出し屋台のあんちゃんに手渡した。
あんちゃんは初め不思議そうな顔でしばらくその写真を見つめていたが、やがてそれが三年前のものであるとわかると、そこでようやく笑顔になった。
やった!ひとつめの笑顔ゲットである。あとはマトンバーガーがタダに・・・
一緒に屋台を切り盛りしている仲間も、代わる代わる写真を覗き込んではわいわい言っている。なんだか予想以上の騒ぎになってしまった。
こうなると流れから今回も写真を撮ることになる。でも前回との大きな違いは、写されている人たちがいつかこの写真をもらえるだろうと期待しているであろうことである。しかも今回はたくさん人が写り込んでしまっている。

結局マトンバーガーはタダにはならず、代金はしっかり取られた。
そしてきっと次にここに来るときは、代金の他に数枚の写真を差し出さねばならないのである。
自分で蒔いた種だが、とんだ散財である。

それからこれはホントにどうでもいい余談のちなみになのだが、その翌日もう一度マトンバーガーを食べに行ったが、やはりタダにはならなかった。

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インド先住民族の工芸品ドクラ