2001年6月23日:風の王国 / カニャークマリ-チェンナイ

インドな日々

2001/06/23 風の王国 カニャークマリ-チェンナイ

動き出した列車の座席で、私はほっとしていた。

2日前、1時間並んで買った切符には「RAC」と記してあった。
私は初めそれを「リクライニングシートのエアコン車」かと思っていた。
つまり寝台車希望に対し、リクライニングの座席車しか取れなかったという意味かと思ったのである。
たしかに窓口の係員は、「ベッドは取れない、ウエイティングリストに載せるか?」と聞いて来たので、載せるようお願いした。
しかし決して安くはないお金を取られたので、てっきり椅子席は確保できており、うまくすればベッドを貰えるのかと思ったのだ。

当日、確認のために再び窓口の列に並んだ。
相変わらず混んでいて、前後の人がくっつくように並んでいる。
私はそこで、前の人に「RAC」の意味を聞いてみることにした。

余談ではあるが、インドでは隙あらば列に割り込もうとする輩がいる。
だから列に並んでる人は、このくそ暑いのにもかかわらず、ぴったりとくっついて並んでおり、前後の人々も互いに牽制し合い、時には険悪なムードになってしまったりするのだ。
そこで編み出された方法が「あのーぉ、すみません。○○を教えて下さい」戦法である。

人は誰しも、人から頼られると悪い気はしないであろう。
まして、人にものを教えるという行為は気持ちのいいものである。
特にインド人はこの傾向が強いようである。
そこで周りの人に聞きまくると「あー、こいつはものを知らないかわいそうなやつなんだな」と解釈して、以後気にかけてくれるのである。
ことわざにも「愚者は教えたがり、賢者は学びたがる」というのがある。
つまり、さっきから余談と称しては、こんなことわざまで引っ張り出して説明している私こそ愚・・・

おー!いかん、いかん。本題に戻るぞ!

とにかく私は前の男に「あのーぉ、すみません。このRACって何ですか?」と聞いてみた。
すると男は予想通りの得意顔で「それはレザベーション・アゲンスト・キャンセラレーション、つまりキャンセルが出た時のみ席が確保できるという意味だ」と教えてくれた。

ふふふふふ、作戦成功である。

これで列の中でいじめに会うことはないのだ。あとはリクライニングシート・・・・

えー!それは大変ではないか!
もしかしたら席が貰えないかもしれないのだ。

見れば私のウェイティングリストの順番は6番目である・・・
私はその時初めて、参議院選挙で名簿順位の低い比例区立候補者の気持ちが理解できたのである。

・・・とまあ、インドでは列車に乗るまでにも、このような人間ドラマが繰り広げられるのである。

さて、そんな話から目を窓外に転じると、見なれぬ白い巨大物体が見えるではないか。

ふーむ、どうやら風力発電の装置であるらしい。

その物体はそれぞれ三翔のプロペラをつけ、高い鉄塔の上で風上に向かいゆっくりとその細長い羽をまわしている。
そんな装置が見渡す限り延々と無数に立ち、近未来的で壮観な光景であった。
おそらくこのあたりも年中風が強くて、そこに目を付けたのであろう。これもインドの持つ一面である。
バンガロールの産業技術館で見た風力パワーの模型が、ここに現実として存在しているのである。

私は感動しながらも、ふっと気になったことがあった。
それは産業技術館で見た風力パワーの模型は、たしか風力で粉かなんかを挽いているものだったからである。
もしかしたら、あれは発電機なんかじゃなくて、近未来の粉挽き機ではなかろうか?
いやいや、違うだろう。いくらインドでもそんな馬鹿げたことをするわけがない。

そこで出た結論は、同じく産業技術館で見た「ヒューマンパワー」である。
つまりあれは風で回ってるんじゃなくて、根元で人がペダルを漕ぎ、それを上のプロペラに伝えているのだと言うことだ。
早い話、巨大扇風機なのである。

見ればやはり、すべての装置が南を向いている。カニャークマリの方向である。
だからあの街は常に風が吹き、ホテルにはエアコンなんか必要なかったのだ。

おそるべし!インド・ヒューマンパワー!

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