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2001年6月3日:休養 / アンジュナ

         
  • 公開日:2001年6月3日
  • 最終更新日:2022年6月2日

インドな日々

2001/06/03 休養 アンジュナ

あこがれのビーチリゾートである。
椰子の木が生い茂り、青い海、青い空、そしてシーフード。

私はそんな幻想を抱いて、ここアンジュナビーチにやって来た。
なぜ幻想かと言うとオフシーズンだったのである。

北半球は夏至を目前にいよいよ本格的な夏の訪れを迎え、風鈴やスダレ、うちわに蚊取り線香、麦わら帽子にカキ氷器などを出す季節ではないのか?
母親などはタンスの奥にしまっておいた子供の海水パンツなどを引っ張り出して、「あら、これじゃもうサトシには小さいわね。今年は新調してあげなければね。ねえあなた、今度のお給料日に田島屋さんで買って来て下さる」なんて事を言うのだ。

それをなんだ!オフシーズンとは!
空だってこんなに晴れ渡り、風だってさわやかじゃないか。何が不満なのだ?

まあ、そんな事を言ったって、おそらく土地の長老なんかが「今年のオフは5月の25日からってことにするかのぉ」ってな具合で決めてしまったのだろうからしかたがない。

とにかくオフなのでホテルもすぐに見つかった。他に一組くらいしか泊まっていないのだ。
さっそく短パンとサンダルでビーチへと繰り出した。

ここはビーチと言っても岩場が多く、また海辺へは店なんかがある場所から少し下りなければならない。
少しなだらかになっているところを見つけビーチへと下りて行った。

下まで来ても誰もいない。日本の混み合った海水浴場しか知らないと、人のいない海で泳ぎたいなどと思ったりするのだが、こう誰もいないと張り合いがない。やはり人というのは自分の置かれている「地位」と言うものを知るのに、他人との比較が必要なのだ。
たとえば夏の湘南海岸などでも、朝の6時ごろに行けばほとんど人がいない。
一番いい場所にシートを広げ、パラソルを立てたりして陣取りをする。そのうちだんだん人が出始めて来ると、内心「ふふふ、君たち今ごろ来ても遅いんだよね。ウチなんか一等地だよ、一等地」などと他人と比較して自分の地位に満足したりするのだ。
ところが昼に近づくにつれ潮が引き始め、一等地だと思っていた場所は波打ち際からすごく遠ざかってしまう。しかもその間のスペースにぞくぞくと新興勢力のパラソルが立ち始め、大海原の眺望はおろか日照権まで脅かされる始末である。事ここに至っては自分の運命を呪い、楽しいはずの家族小旅行が「お父さんてホント要領悪いんだから」の一言でもろくも崩れて行くのだ。

話をインドの海岸に戻すが、人のいない海では泳ぐどころか足を水につける気にもならず、かといってせっかく来たのに何もしないのではもったいない。

そこで私は岩場の潮溜まりを観察することにした。
もしかしたら日本ではお目にかかれない、めずらしい生物がいるかもしれない。いや、絶対いるはずである。なにしろここはインドなのだから。
しかしスダールやラゴンやゲスラなどは勘弁である。とにかく期待が持てそうである。

私は持ち前の熱心さで小さな潮溜まりを覗いた。

何もいない・・・

次にもう少し大きな潮溜まりを覗いた。

何か動いた・・・・・・カニだ。

見れば日本のイソガニとほとんど同じようなカニである。むしろ真鶴半島あたりのカニのほうが大きいくらいだ。
さらにじっと目を凝らすと魚が見つかった。小さい魚でムツゴロウのような魚である。ここで動物王国のムツゴロウさんのネタを挟むと思ったら大間違いである。
その魚は岩に付いたコケを食べているようだ。
しかしこの程度のことではぜんぜん新発見とは言えず、ノーベル海の生き物賞だって貰える気配すらない。

私はあきらめの早いたちなので、早々にその場を切り上げシーフードを食べにレストランへ行くことにした。
なにしろガイドブックによれば、ここでは日本人の好きなシーフードが沢山食べられるとのことで、カレーに飽きたらここに来いとのことなのである。

レストランでメニューを見ると・・・
あるある、ロブスターにカニか・・・他にもエビを使った料理や魚料理がずらーと並んでいる。

私はとりあえずクラブスープというのを注文しようとした。
しかし店の男は、今はそれは無いと言う。それだけではなく、スープ類は何も無いとの事であった。
それならロブスターはと聞くと、男は首を振る。
じゃ、じゃあ、何なら出来るのだ?と聞けば、男はメニューのひとつを指差した。
それは「フィッシュカレー」であった。

しかたなくそのフィッシュカレーとライスを注文した。

カレーはなかなかおいしかったが、シーフード料理のイメージとはずいぶん違う。所詮はカレー味だ。
カレーの中に入っているのは、イワシを大きくしたような魚のぶつ切りが三切れである。
しかしオフシーズンにも出すくらいの魚なので、きっと土地の名物に違いない。
店の男にこの魚の名前を聞いてみた。
その男は、この魚の名前はメックロールフィッシュといい、他の魚との大きな違いは骨が多いことだと言う。

なんだ!食べづらいだけの魚じゃないか!
ただ単にこの辺で沢山採れる魚らしい。やっぱりイワシじゃないか。

結局私は、このすべてがオフ状態になっているリゾート地で二泊三日もしてしまったのだが、2日目からはもう海にも下りて行かず、ただホテルの部屋でこんな文章を書いて過ごしたのである。

まあ、そういった意味ではいい骨休めとはなった。もっともメックロールフィッシュほど骨は多くないが・・・

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