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2006年9月14日:リシュケシで身も心も清らかに・その8

         
  • 公開日:2006年9月14日
  • 最終更新日:2022年8月5日

アーユルヴェーダを受け、すっかりお肌がつるつるになった私とC君は、今度は体の中から浄化しようではないかと、レストランへと向かいました。

インド・アーナンダ・イン・ザ・ヒマラヤホテル

暗闇の中幻想的に浮かび上がるレストランは、「飲め」と私を誘うのであった。

レストランはお昼にも軽く食事(と言ってもチキンティッカとビールでしたが)を取っていたのですが、今度は夕食なのです。夕食は英語でディナーと言い、肉をどんどん食べたり酒をばんばん飲んだりしてもいいのです。お昼の時のようにちょっと後ろめたい気分でこそこそとビールを飲まなくてもいいのです。まあお昼も堂々と飲んだんですけどね。

インド・アーナンダ・イン・ザ・ヒマラヤホテル

落ち着いた雰囲気のレストランは、「飲め飲め」と私を誘うのであった。

私は特別辛くしたマトンカレーとナン、そしてビールを頼みました。
C君はお酒を飲まないので、ジュースとサラダ、それにおとなしい味付けのチキン料理を頼んでいました。

C君は「ここはアーユルヴェーダやヨガを目的に来る人が多いので、あまりスパイスの効いた肉料理は好まれず、ましてやビールを注文してるのはこのテーブルくらいのもの」と、暗に私を非難するのです。むむむ・・・

インド・アーナンダ・イン・ザ・ヒマラヤホテル

そしてビールも「お飲みになってと」私を誘う。

う~ん、確かに周りのテーブルでは上品そうな人たちが、ビールやワインなどを飲まずに、この豊かな時間と気分を満喫するかのように静かに食事をしています。
でもさあ、このレストランだってこうして肉料理は出すし、「スパイシーにして」との要望を聞いてその通りに辛目の料理を出してくれるし、だいいちビールだって置いてるんだからさあ。別にいいよねえ、こういう食事をしたってさあ。

そんな風に思いながら、ナンをちぎってカレーソースにつけ、口に運び咀嚼しておりましたら、突然「がりっ!」という音がしたではありませんか。

すぐに噛むのをやめ、舌でその音源を探ってみたところ、噛み砕かれたナンの中に異物を発見しました。
さらに舌でその異物を選別し、向かいの席のC君に気付かれないようにそっと口から出してみますと・・・

あー、歯だ・・・

もちろんそれはナンに混ざっていたのではなく、私の歯のどれかが欠けたのでしょう。

今度は舌でひとつひとつ歯を検査して行きます。

あっ、ここだ。

それは4本の上前歯のすぐ右側の歯で、一部を金属で治療してあった歯でした。
その治療は歯の鞍部を削り、削ったあとを金属でふたをするというものでしたが、その金属を前後から挟み込むようにして残っていた歯の部分が、欠けてしまったのでした。しかもそれはよりによって前面の部分で外からよく見える位置なので、かっこわるいったらありゃしません。

これはもしかしたら、聖地リシュケシを眼下に見下ろすレストランで、肉を喰らい酒を飲んだバチが当たったのかもしれません。

それから私は、欠けた歯を見せまいとあまり口を大きく開けられなくなってしまい、さらに気分も落ち込んでしまったために、急速に酔いが醒める気がして、会話にも力が入らなくなってしまいました。

欠けた歯はそっとポケットに仕舞いこみ、食事を終え部屋に戻るとすぐ、洗面所の鏡で確認しました。

ああ、結構大きく欠けたもんだなあ・・・
ガネーシャは酔って転んだことを笑った月に対して、自分のキバを折って投げつけたという話があるけど、相手がナンじゃなあ。

インド・アーナンダ・イン・ザ・ヒマラヤホテル

遠くリシュケシの街の灯に向かい、私は折れた歯を投げたのだった。

だいたいナンみたいな柔らかいもので欠けてしまう歯なんて、どーしょもないよなあ・・・
あー、ナンよりも弱いので、これが本当の「ナン弱」って言うのかあ。

などとくだらないことを考えながら、私は欠けた歯を持ってベランダに出ると、漆黒の闇の中にそいつを投げたのでありました。

あばよ~!

つづく

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