browser icon
You are using an insecure version of your web browser. Please update your browser!
Using an outdated browser makes your computer unsafe. For a safer, faster, more enjoyable user experience, please update your browser today or try a newer browser.

2005年12月16日:インド出張レポート・その3

         
  • 公開日:2005年12月16日
  • 最終更新日:2022年8月5日

【前回までのあらすじ】

出発からして2時間の遅延となり、機内では映画も見られず読書灯もつかず、インド入国審査では1時間も待たされ、予約したホテルは満室で入れず、ようやくたどり着いたホテルはオープン前の工事中というありさま・・・
そんな長い一日目であったが、それでも安らかな眠りに就いた私なのであった。

オープン前の工事中ホテルにも、朝はちゃんとやって来ました。

「朝食付き」という条件での宿泊なので、当然朝飯が付くはずなのですが、昨夜は「眠れるだけの環境」を整えるのに精一杯で、朝食のことを聞き忘れてしまいました。こんな工事中で他の泊り客のいないホテルで、はたして朝食にありつけるのでしょうか?朝食にありつけなかった場合、朝食代としていくら引いてくれるのでしょうか?

とまあ、そんなことを考えていても仕方がないので、フロントに行ってみることにしました。

階段は手すりがないので気を付けなければいけません。そろりそろり・・・

フロントのある小さなロビーはまだ薄暗く、見れば男がソファーで寝ていました。まあこの規模のホテルでは珍しい光景ではなく、ロビーは従業員などが寝泊りする場所になっていることはよくあるのです。

私が降りて来た気配で男は目を覚まし、上半身を起こしました。
いえ、「起こした」というほどのものではありません、涅槃像よりやや頭の位置が高い程度です。当然下半身は毛布をかけたままです。

そんな姿勢の男に、「朝食は食べられるのだろうか?」と問いかけると、男は「何がいい?」と、相変わらず涅槃像のままでオーダーを取るではありませんか。
はたしてあんな半分寝ぼけた状態で本当に大丈夫なのだろうか?という心配をよそに、朝食はちゃんと部屋まで運ばれて来ました。
しかし、チェックアウトの時に「飯代を払え」と、やっぱり寝ぼけたことを言う涅槃像の男だったのであります。

そんなインドでの活動開始は、ホテルの移動からでした。

ホテルまで迎えに来たエージェントの男と一緒に、本来泊まるはずであった「新しくてきれいなホテル」へさっそく移動するわけです。

なるほどそのホテルは新しくてきれいでした。

フロントの対応もとても丁寧で、うやうやしくソファーを勧めてくれ、歓迎の「水」まで出してくれました。

おそらく昨夜の私の予約を蹴ってしまった無礼を詫びる気持ちもあるのでしょう、歓迎ムード満点でのお出迎えではないですかあ!
これならきっと一番いい部屋をくれるぞ、うふふふふ!

ソファーで待つことしばし、フロント係と話し合っていたエージェントの男が戻って来てこう言いました。

「近くに同等のホテルがありますから、そこへ行きましょう」

お、おい! いきなり何を言うのだ!

私の部屋はここにはないのか?

えっ? どーなんだ?

はあ? 宿泊客が宿泊を延ばしたので今夜も満室だあ?

いったい・・・

予約って・・・

なんですかあ?

有無も言わせずホテルの外に迎えの車が到着し、ホテルの従業員の手によって私のスーツケースは車の中に押し込められました。

やけに手際がいいじゃないですか。

厄介払いってわけなのね・・・

次のホテルにはすぐに到着しました。

しかし・・・いったい何を基準に「同等」というのでしょうか?

確かに人は見かけだけで判断してはいけません。
そして思想、信条、宗教、民族、趣味、特技、好きな人のタイプなどで差別されることがあってはなりません。あー、あと、足の臭いなんかでもね。

でも、

ホテルにはランクがあるでしょう。

まあ、もっか宿無しの身分では、贅沢は言えないですけど・・・

とても「同等」とは思えないホテルで見せられた部屋は5階でした。

なかなか広い部屋でしたが、このホテルにはエレベーターがなく、ここまで階段で上って来なければなりません。これはちょっと問題です。

そしてさらに問題なのは、部屋に冷蔵庫がないことでした。
一日の終わりに冷えたビールを飲むことを楽しみにしている私には、冷蔵庫は必須アイテムです。なので私はインドでは、冷蔵庫に敬意を払って「冷蔵庫様」と呼んでいるくらいなのです。
エレベーターがなくてもうまいビールは飲めます。いえ、むしろ階段を上がることで汗をかき、さらにうまいビールが飲めます。
しかし、それもすべて部屋に冷蔵庫様があってのことです。ルームサービスで頼むビールは高く、そしてあまり冷えていないのが普通なのです。

そのことを従業員に言うと、「冷蔵庫はあとで持って来る」と言うではありませんか。

ほうほう、そんなことができるんだ・・・

なかなか融通の利くホテルと判断した私は、もうそれだけで宿泊することを決めてしまいました。

その日の仕事を順調に終え、帰り道で「やや」冷えたビールを手に入れての帰還だったのですが、けしからんことにフロントで手渡されたキイは隣の部屋のキイで、私は5階からフロントまでの余分な一往復をしなければなりませんでした。でもそのおかげで、ビールがさらにおいしく頂けそうです。

さて、やっとの思いで自分の部屋に入ったのですが、なんとまだ冷蔵庫様がご到着あそばされていないではありませんか。

いったい何をしているのだ!

せっかく「やや」冷えたビールを持ち帰り、そいつを素早く冷凍室に押し込み、あわただしくシャワーを浴びたのちに、しゅぽっ!トクトク、うぐぐ、ぷっはあ!としようと思ったのにい!

冷蔵庫様は約10分後にご到着あそばされました。

ノックの音で部屋のドアを開けると、ホコリと汗にまみれた男2名が、両脇から冷蔵庫様を抱えて立っていました。

私はてっきり同じ階の別の部屋から運んで来るのかと思っていたのですが、どうやらこの汗のかき様では、階下から運んで来たようです。もちろん階段を使って・・・ご苦労ご苦労。

冷蔵庫様の設置が終わり汗臭い男たちが部屋を出て行くやいなや、私は今夜飲む分のビールを冷凍室様に突っ込みました。
そして、翌日からの分のビールも冷蔵庫様に入れましたので、いまや冷蔵庫様内のビール保有数はビンビール3本と缶ビール12本という数に達しました。

うふふ、ビールの在庫は心の余裕。
早く冷えろよ、冷えろよビール。

と、口元から笑みをポロポロとこぼしながら、さっそくシャワーを浴びようとしたときです、再びドアにノックの音が響きました。

何だろう?とドアを開けると、先ほど冷蔵庫様を運んで来た男が入ってきて、いきなり冷蔵庫様を開けようとするではありませんか。

やめろ! 冷蔵庫様に近づくな!

いったい何をしようと言うのだ?

男が言うには、庫内がきたないのできれいに拭くとのことでした。

えっ、そんなにきたない冷蔵庫だったの?

おい、この冷蔵庫、どこから持って来たんだよお?

とにかく今開けられては、ビールの冷却効率が落ちてしまいます。
ビールを冷やすためなら少しくらい庫内がきたなくても、たとえさっきまでこの冷蔵庫がノラ犬のすみかになっていたとしても、そんなことは構わないのです。とにかくビールを冷やすのが先決です!

いいからいいから、掃除なんかしなくていいから。
とにかく早く帰りなさい。暗くなるとお母さんが心配するよ、と言いくるめ、ようやくのことで男を帰しました。

私はドアノブの押し込み式の鍵をかけ、ついでにカンヌキ式の鍵もかけ、もう二度と邪魔者が現れないようにし、すばやくシャワーを浴びました。

シャワーを浴び、さっぱりした私は、うやうやしく冷凍室からビールを取り出しました。

あー、ここまでたどり着くにはいろいろ苦労はあったけど、こうして冷えたビールにありつけると、そんな苦労も吹っ飛ぶってえもんだなあ。
それにしてもすごいよなあ、なにしろ冷蔵庫まで用意させちゃうんだから。

と、自分の奮闘振りに満足しながらビールをテーブルの上に置いたその時、

ようやく気づきました。

あっ、

コップがない・・・

こうしてインド第二日目は、なんとかほぼ無事に終わって行きました。

そして翌日からは一旦デリーを離れ、ジャイプールに移動するのですが、そのことが新たなるトラブルを引き起こすとは・・・

今ようやくコップを手に入れ、冷えたビールを飲みながら、のんきにテレビを見ているこの男には、知るよしもなかったのであります。

はい、いかがでしたか?(今回も淀川長冶風に読んで下さい)

またビールの話、出てきましたねえ。

あれほど「ビール以外のインドの話を!」と要望されているというのに、この男、いったい何、考えているのでしょう。

こんな男には、バチ、当たるといいですねえ。

怖い怖いバチ、当たるといいですねえ。

みなさんで、そのこと祈りながら、今回はお別れしましょう。

はい、さいなら、さいなら、さいなら・・・

次のページへ行く目次へ行く前のページへ行く

ページのトップへ戻る