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2003年6月12日:インド報告「本当に『飛ぶ鳥落とす勢い』なのか?えっ!」

         
  • 公開日:2003年6月12日
  • 最終更新日:2022年8月5日

あれは最高気温が45℃を超えたと思われる日の昼下がりでした。

私のチャーターした車(軽のワンボックス、ルーフキャリア付き、エアコンなし、フロントガラスヒビ入り)は快適に走行しておりました。
窓からは心地よいドライヤーのような風がぶんぶん吹き込んで来て、これなら頭を洗ったままでもOKさ!とご機嫌な私でした。

すると突然頭の上で「どん!」という音がしたのです。

何かが車の屋根に落ちて来たようです。
ドライバーも一瞬びっくりして少しブレーキを踏みましたが、結局そのまま走り続けました。

やがて車は信号で停まり、車窓からぼんやり外の景色を眺めていた私の目の前を上から下に何かが横切りました。
道路に落ちたその「何か」を見ると、それは1羽の鳩でした。

なるほど、さっきの音の犯人はてめえだな、鳩!神妙にお縄を頂戴しやがれ!

鳩は道路の上でばたばたもがいているのですが、車に激突したために右の羽が傷ついているらしく、体が右回転で回ってしまいます。
鳩はそうしてくるくると回転しながら、隣に停まっていたオートリキシャの下に入って行ってしまいました。

あーっ!このまま信号が青になってしまったら、オートリキシャの後輪右側に轢かれてしまう!
危うし!はと!もっとくるくる回ってそのまま空に飛んで行け!

仏の様な私は(どうでもいいけど「仏」と「私」って似てますね)無益な殺生が目の前で繰り広げられるのに我慢できません。
かと言ってオートリキシャの下に手を突っ込んで鳩を救出しようとして、私の手が轢かれてしまうのはもっと我慢できません。

なすすべもなく鳩の安否を気遣っていると、なんと!

なんとオートリキシャのドライバーが鳩に気付いたのです。
普段はあんなにクソ野郎のリキシャマンがハンドルを左に一杯に切り、鳩の上から車体をずらしたではないですか!

彼は救われるでしょう。
観光客を騙し10ルピーで行く距離を100ルピーと言い、勝手にお土産屋に連れて行き、悪の限りをつくした男ですが、きっと救われます。
一本の蜘蛛の糸が地獄に下りて・・・・あっ、助けたのは蜘蛛じゃなかった。
じゃあだめかもしんないね。

まあなにはともあれ周囲に居た人々は、みな一様に胸をなで下ろしたのでした。

どうです、インドの暑さは飛ぶ鳥をも落とすのです。すごいでしょ。

えっ?何ですか?「その鳩はその後どうしたのか?」ですって。

インドには殺生を極端に嫌うジャイナ教という宗教があります。
その宗教は傷ついた鳥などを治療する病院も運営しています。
その鳩をそこに連れて行き、治療に専念させるという手もあったのですが・・・

その必要がね・・・なくなっちゃったんです。

オートリキシャが鳩を避けるために左に幅寄せしたので、私の車とオートリキシャの間にはちょっとした間隔ができたのです。

そしたらですね。その間隔にバイクが走り込んできて・・・・

はと、踏まれちゃいました。

この話を読んで「まあ!かわいそうじゃない!」とお怒りのあなた。
少なくとも私はなんにも悪くないです。バイクの人に怒って下さい。

それからついでに話しておきますと、お祭の日などはカゴに入った鳩を持っている人をよく見かけます。
家族で鳩を持ち歩いている風景も見られ、みんなすごく嬉しそうにはしゃいでいます。
そして足早に家路に着くのです。

そりゃあもちろん、夕餉を楽しみにしてです。

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