2003年5月1日:インドのチャイ屋

わたくし的インド案内

2003/05/01 インドのチャイ屋

インドでは「チャイ」と呼ばれる甘いミルクティーをよく飲みます。
チャイはインド人にとって、なくてはならないもののようです。

ですからインドでは町のいたるところでチャイ屋を見かけます。
それはちゃんとしたお店を構えているものから、露店のものまでさまざまです。
ただ、どこのチャイ屋も常連の溜まり場となっていて、いわば庶民の社交場となっていることには変わりありません。

チャイの作り方も何種類かあるようです。
私の知っている範囲でご説明致します。

まずは、ニューデリーのとあるチャイ屋さんです。

この店は道端の露店なのですが、木と塀(もちろんよそ様の)を利用して頭上にシートを貼り、強い日差しからお客さんと自分(こちらが主眼と思われます)を守っています。

ここのおやじのチャイの作り方は、片手鍋にミルク(なんのミルクかは知りません)と紅茶の葉、砂糖、水、そしてショウガを入れます。
これを強火でジュワジュワ沸騰させるのですが、鍋の底が焦げ付いてしまうのではないかと心配になるくらい、しつこくしつこく熱するのです。
見ている方がじれて来て(それはたぶん私だけで、他のインド人はじっと待っています)、「もう充分なんじゃない?燃料ももったいないしさ、早くちょうだいよ」なんて心の中でぶつぶつ言ってみたりします。それくらい念入りに煮出します。

やがておやじの納得する段階まで煮詰まると、お客の数だけコップを並べ、チャイを分け入れて行きます。
お茶っ葉がコップに入らないよう、金魚すくいの道具みたいな網で漉しながら順番に分け入れて行くのですが、これがみごとに各コップに均等に分配され、鍋には何も残りません。

日本でもラーメン屋さんなどで何人分かの麺をまとめてゆで、最後に網でチャッチャッと麺を丸めながらドンブリに均等に分け入れて行くという職人技を目にすることがありますが、あれと同じような名人芸です。

次はケララ州あたりのチャイ屋さんです。

こちらはミルクで煮出したりせず、水だけでお茶っ葉を煮ます。いわば普通の「紅茶」です。
ミルクは別の鍋で暖めてあり、まずコップに砂糖と暖かいミルクを入れ、そこに熱い「紅茶」を注ぎ込みます。
このとき紅茶は出来るだけ高い位置からコップに投入します。
高い位置から注がれる紅茶は、一本のヒモと化し、まるで命を吹き込まれたようにコップにスルスルッと収まって行きます。
コップの中で紅茶とミルク、そして砂糖が混じり合い、一見「チャイ完成!」かに思われますが、ここのおやじもそんなに簡単に終わりにしません。素人は許しても、プロはそんなものを「チャイ」とは認めないようです。
てやんでい!こちとらちゃきちゃきのインド人でい!そんな生半可なチャイを出せるかってんでい!と言っているのです。

今度はチャイ(素人目に見て)の注がれたコップから、もうひとつの容器に移し替えて行きます。
この時も、注ぎ始めると同時にコップを頭上高く持って行き、チャイ(素人認定)をヒモのように伸ばして行くのです。
そしてさらにもう一度、それをコップに戻して行くのです。もちろんヒモ状態でです。

こうして何度かチャイ(プロ未認定)を移し変えるうちに、紅茶とミルク、そして砂糖が渾然一体となって行き、プロも認める本物の「チャイ」として客人に振舞われるというわけです。てやんでい!

さらにチェンナイのチャイ屋さんをご紹介致しましょう。

チェンナイのチャイ屋さんの作り方は、基本的にケララあたりのものと同じです。
ただ、あの派手な「ヒモ状態」の技はそれほど見せ付けず、もう少しおとなしい淹れ方です。

じゃあ、ここのチャイ屋の特徴は何かと言いますと、コップに注がれたチャイに最後の仕上げとして、別鍋で沸かしてあるミルクの「泡」をすくい取って入れるのです。
それはまるでウインナコーヒーのようで、ちょっと上品に感じられ、美味しさもひとしおです。
でも冷静に考えれば、チャイの上に載せたのはクリームでもなんでもなく、ただのミルクの泡ぶくなのです。美味しく感じられたのも気のせいだったようです。てやんでい!

最後に列車の中で売りに来るチャイ屋さんを紹介しましょう。

列車の中のチャイ屋さんは、揺れ動く列車の中で移動して売り歩かなければならないという状況なので、鍋を火に掛けたり、チャイをスルスルッと伸ばしたりしません。
彼らはすでに暖めたミルクを大きな保温ポットに入れて持ち歩きます。

どうやってチャイを作るかといいますと、まず使い捨てのプラスチック容器に紅茶のティーバッグを入れます。そしてそこに熱いミルクを入れるのです。
たったこれだけです。そのミルクはあらかじめ砂糖が入れられているため、改めて砂糖を入れることもありません。ティーバッグを揺らして紅茶を出すのも客に任せるのです。

さらにこのチャイ屋は、紅茶のティーバッグの代わりに、ネスカフェの粉末をサッと容器に入れてミルクを注ぎ、ミルクコーヒーも作ってしまうのです。

なんとも手抜きで、いい加減なものです。それで料金は街のチャイ屋の倍くらい取るのですから。

今回は簡単にいくつかのチャイ屋さんをご紹介させて頂きましたが、インドには至る所にチャイ屋がありますので、それぞれに秘伝、裏技、新方式が入り混じり、日々過酷なチャイバトルを繰り広げていることと思います。

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