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2003年2月20日:インド初めの一歩・その5・待機編

         
  • 公開日:2003年2月20日
  • 最終更新日:2022年8月5日

バンコク・ドンムアン空港に着陸したわれらがエアインディアは、所定の位置に駐機するとドアを開け放ちました。
とたんにタイのむわっとした熱気が機内に流れ込んで来ます。

あっと言う間に、出口へ向かう乗客の長い列ができ、それに付き従い出口に向かおうとするのですが、どうも様子がおかしいのです。
何でしょう?

実はここで飛行機から出られるのは、バンコク行きの乗客だけなのです。
デリーやムンバイまでの乗客は、機内で待機しなけらばならないのです。

ここまでのフライトは日本人乗客が大半を占めていたのですが、実はそのほとんどがバンコクまでの乗客だったのです。
どうりでみんな余裕の表情で、いかにもバカンスに向かうような気軽さが感じられたわけです。これからさらに飛行機を乗り継いでプーケットかなんかに行くのでしょう。
若者はビーチリゾートへ、おじさんはゴルフ三昧ですか・・・

そんな彼らを送り出し、がらーんとなった機内を眺め回して見ますと、そこにいるのは当然インドへ行く人たちです。
学生らしい若い人が多いのですが、どこか表情に緊張感が走り、ともすれば悲壮感さえ漂って来ます。さっき降りていった男女6人のバカンス組とは明らかに一線を画しているではないですか。

ちょっと横道にそれますが(それっぱなしかもしれませんが)、この行き先別緊張感というのはすでに成田の待合室から始まっていて、それぞれの表情や持ち物、グループ構成などから行き先を推理するのも面白いものです。

若者の場合、タイに行く人は服装もどことなくラフで、かばんなどもしゃれたデザインのものを持っていたりします。
また、数人で連れ立って行くパターンも多く、勢い話し声なんかも大きくなり、いかにも「これから楽しい時間を過ごすんだ!待ってろよ!青い海!白い砂!」などという期待感が感じられます。

一方、何の因果かインド行きを選んでしまった若者は、たいてい一人旅かせいぜい二人連れです。
比較的やせた人が多く、ヒゲなんかも生やしていたりします。
持ち物もしっかりした作りのリュックが多く、間違ってもヴィトンのセカンドバッグを小脇に抱えていたりしません。
少しうつむき加減で椅子に座っており、声高に話をする人はまずいません。(もっとも一人旅の人が声高に独り言を言っていたら怖いですが)

おそらくインドに行ったことのある先輩などの話に触発されて、インド行きを決めたのでしょう。
しかもその先輩は、「インドだよね、やっぱ。人生観変わるよ。なるべくさあ、若いうちに行くのがいいんだよね。ひとりでさあ、行き先なんか決めずにさあ、成り行き任せで行くんだよね」などと、なぜか「さあ」を多用しながら、「一人旅」と「無計画」をさりげなく強要するのです。
まだ若くて純情な澤井君は、先輩の話ですっかりその気になり、友達に誘われていたサイパン旅行を断って、インドに行くことにしてしまったのです。
そんな澤井君ですから今夜泊まる宿も予約なんかしていないはずです。そりゃ不安にもなりますよね。
せめて無事、安宿ひしめく最初の目的地「メインバザール」に着けるといいんですけどね。

さて、澤井君のような若者がこの後どういうことになるかは、また別の機会にお話しすると致しまして、話をバンコク・ドンムアン空港に駐機中のエアインディアに戻しましょう。

バカンス客が降りてしまいがらーんとなった機内には、入れ替わりに白い開襟シャツを着た若い男女が入って来ました。
彼らは機内清掃の仕事をする人たちで、手際よく作業を分担しながら移動して来ます。
これをただの「掃除」と考え、「うざってぇ~なぁ~、早く終わりにしろよ」などと思ってはいけません。明日の日本を背負って立つ「国際人」であるならば、機内から出られず唯一許されたタイと直接触れ合う貴重な瞬間を、無駄にしてはいけないのです。
だからと言ってむやみに彼らに話しかけ、仕事の妨げになってはいけません。
静かに彼らを観察しつつ、タイの若者が抱える悩みや希望、喜び悲しみ、好き嫌いなどを想像し、タイを知った気分になりましょう。
タイについてはそのくらいでいいでしょう。なにしろわれわれの目的地はインドなのですから。

清掃作業が進む中、今度は紺のブレザーを着た若者の登場です。
この人たちは、乗客名簿と実際の乗客数の確認をする人たちで、手にカウンターを持ち、声を出して乗客の数を数えながら歩いて来ます。
この時、席を立ってふらふらしてはいけません。数が分からなくなってしまうからです。
さらには別の係官が、棚の荷物と持ち主の照らし合わせをしに来ますので、自分の席におとなしく座っていましょう。係官が近くに来たら、自分から進んで荷物を指差し、「マイ、バッグ」などと言い、ニッと笑いましょう。
そうです、タイは「微笑みの国」なのです。

こうして待つこと1時間、バンコクからの乗客が乗り込んで来ました。

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