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いよいよ旅は終わりを告げたのだった:ライプールからアラハバードへ

         
  • 公開日:2011年4月21日
  • 最終更新日:2022年6月4日

止まない雨はないのと同じように、いつまでも続く悪路もない。by カーライル(うそ)

ということで、やがて道は幹線道路にふさわしい路面状態を取り戻し、バスもまた元のペースを取り戻しました。このバスに限らずインドの長距離バスは、途中でよくチョイ乗り客を拾います。それが正式なバス会社の収入になるのか、それとも運行乗務員で山分けにするのかはよくわかりませんが、とにかく気がつけば車内はこんな具合に込み合っていて、とてもこれが600kmの道のりを走って来たバスとは思えません。
しかも先ほどの休憩のときなど、私が外で顔を洗って車内に戻ると、太ったおばさんが私の席に座っていてどいてくれないのです。私がシートナンバーの記入されたチケットを見せると、しぶしぶ重い尻、いえ、腰を上げて移動してくれましたが、見れば寝台席の乗客などはスペースを空けてチョイ乗り客を座らせてあげたりしています。インド人はこういうところが実にエライのですが、かといって私の椅子席じゃ、いくら横に寄ってもあのおばさんは座れないよなあ・・・

アラハバードの到着予定時刻は11時と聞いておりましたが、まさしくその11時が近づいた頃、バスは大きな河に差し掛かりました。実はアラハバードはガンジス河とヤムナー河が合流するところで、さらにヒンドゥー教の神話では、人の目には見えないサラスワーティー河もここで合流するとされる聖地なのです。

しかしアラハバードに関する私の知識はそこまでで、頼みの綱のガイドブックも、Mくん持参の黄色いものには一行の記載もなく、私の持ってる青いものは、そのあまりの厚みに恐れおののき、日本で必要な部分だけを破り取って持って来ているために、アラハバードの部分は手元に存在しないのです。

でもまあ聖地なんだから大きな街なのだろうと想像していたのですが、橋を渡る時にその両側を素早く観察したところ、どうもヴァラナシみたいに河岸に貼り付くようにして建ち並ぶ建物群が見当たらないのです。

そこで私は、「これはいっちょこのままヴァラナシまで移動してしまった方が良いのでは・・・」と思ったのです。

なにしろ時刻はまだ午前11時なのです。
長旅の疲れはピークに達してはいましたが、だからこそなおさら、ここで宿を探してまた翌日移動するより、もうちょっとがんばって一気にヴァラナシまで行ってゆっくりした方がいいのではないかと思ったのです。

そこで車掌のおっさんに、「ヴァラナシに行きたいのだが、どこで降りるのが一番良いのか?」ということを聞いたところ、その場所に着いたら教えるからちょっと待っておれ、とのことでした。

やがてバスは橋を渡り切り、左に折れてアラハバードの街らしきところに入りました。

するとそれまでじっと前方を注視していた車掌が、急にわれわれに向かって「ここで降りろ!」と叫ぶのです。

えっ!ずいぶん急じゃない!もう少し早めに言ってくれりゃあいいのにさあ・・・

慌てて座席の下から荷物を引っ張り出し、人をかき分けて前方の出入り口にたどり着くと、車掌は私の荷物を乱暴にふんだくり、外にいたあんちゃんに渡しました。

ああっ、私の荷物をどこへ持っていくんだよお!

わけのわからぬまま、私の荷物を奪い去って行くあんちゃんの後を追って道を渡ると、そこには違うバスが止まっており、あんちゃんに導かれるまま荷物とともにそのバスへと乗り込んだのでした。
その間わずか30秒、移動距離10mほどのとても短いアラハバード滞在でした。で、気が付けばこうしてそのバスに揺られ、ヴァラナシ目指して走っていたというわけなのですが、どうやら車掌のおっさんはすれ違うバスの中からヴァラナシ行を見つけ出し、わざわざそれを止めてわれわれを引き渡してくれたようなのです。

それなのに、いくら慌ただしかったからといってお礼の言葉ひとつ言えなかったことは実に残念でした。

ありがとう!車掌のおっさん!

さあ、あとはこのままヴァラナシへ直行だ!

と思ったら、このバスもやたらあちこちに止まっては客引きをし、場所によってはしばらく止まったまま客待ちしたりすることもあり、なかなかヴァラナシに着かないのです。

しかもどうしたことか、2時間ほど走ったところでまた別のバスに乗り換えさせられたのです。
それまでよく整備された道を、いかにも「ヴァラナシに向かってます」みたいな顔して走ってたくせに、急にU-ターンすると道の反対側に止まっていた小さめのバスを指差し、「あれに乗り換えだ」というのです。

乗り換えって言ってもさあ、あのバス反対方向に向かおうとしてるんだけど・・・

もう不信感でいっぱいです。

今度のバスの車掌はちょっと悪そうな感じの若いあんちゃんでした。人の乗りそうなポイントに近づくと、あんちゃん車掌は開け放したドアから身を乗り出して「おらおらおらあ~!」と叫びます。どうやらそれは「ヴァラナシヴァラナシヴァラナシ~!(もしくはワラナーシィー)」と行先を連呼しているらしいのですが、私にはどうしてもそれが客を引くセリフには聞こえず、逆に人を蹴散らしているようにしか思えませんでした。それほどそのあんちゃんがワルそうに見えたのです。そんな風にしてまた2時間ほど走り、ついにバスはヴァラナシ・ジャンクション駅近くに到着しました。

バスを降りるとあんちゃん車掌が、「これからどこへ行くんだ?」と聞いて来ました。
私が「ガートだ」と答えると、あんちゃん車掌は近くにいたサイクルリキシャのおやじに行先を告げ、料金交渉までしてくれました。

われわれはあんちゃん車掌に促されるままにサイクルリキシャに飛び乗ると、またもやお礼もそこそこにガート目指して走り去って行ったのでありました。おしまい。

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真鍮製のアンティーク弁当箱