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第61回:カッチ・ツアー / ローガンアート

         
  • 公開日:2014年5月29日
  • 最終更新日:2022年6月20日
〔当時のメモより〕
*金額に関しては当時の1ルピー(Rs.と略す)のレートを約1.7円とお考え下さい。

2013年11月21日(木)ブジ 晴

6時前に目が覚める。
窓を閉め切っていたため部屋に陽が差さないので不安だった。
外はまだ暗い。

バナナとクッキー、紅茶の朝食

8:30スタートなので15分前には下に降りる。
ポーランド女性以外は全員そろう。

8:35行動開始
ガイド氏はなかなかいい男。

車は前二列と後部に向かい合わせのシート。
Y棒と二人、後部シートに座る。

まずは近郊のニローナ村
ローガンアートはあまり興味が湧かない。
誰も何も買わなかった。

〔以下メモに解説を加えて〕

2013年11月21日(木)ブジ 晴

6時前に目が覚める。
窓を閉め切っていたため部屋に陽が差さないので不安だった。
外はまだ暗い。

この部屋の窓は鉄格子のみでガラスはなく、寒気や人目から身を守るには木の扉を閉めるしかない。つまり雨戸を閉めたのと同じような状態なので、下手をすると夜が明けたのに気付かないかもしれない。
バナナとクッキー、紅茶の朝食

今日は車で一日観光ツアーなので、トイレを警戒して朝飯は少なめにしておく。

8:30スタートなので15分前には下に降りる。
ポーランド女性以外は全員そろう。

結局ツアー参加は日本人女性二人とポーランド女性一人、それにわれわれ二人の計5人となった。
圧倒的に日本人率の高いグループであるが、それだけに時間には正確なのでとても良い。

8:35行動開始
ガイド氏はなかなかいい男。

ポーランド人女性がなかなか現れないので少し心配したが、5分遅れならまあ合格であろう。

車は前二列と後部に向かい合わせのシート。
Y棒と二人、後部シートに座る。

車は四輪駆動車で、最後部は横向きに座るシートだった。この向きだとシートの背にゆったりもたれてくつろぐということができないが、後ろの景色も見られるのでそれはそれでいいのである。

途中マスタード畑があったので車を停めてもらい、みんなで降りて見た。
畑の周りにはひざ丈ほどのブッシュがあったが、構わず足を踏み入れ写真を撮った。
そして引き返そうとしたその時、足裏の真ん中あたりにチクッと痛みを感じたので、思わず土踏まずを引っ込め、それ以上強く踏み込まないように注意をしながら道まで戻り、サンダル(スポーツサンダル)を脱いで確認したら、長い棘がサンダルの底を貫き1cmほど表に出ていた。
どうやらあのブッシュには長い棘を持つ植物が混ざっていたらしい。(下の写真は別の場所のもの)サンダルとはいえ靴底は比較的丈夫なゴムの層もあるのだが、棘はそんなものはものともせずに貫通していたので、よほどしっかりとした靴底のものでないとうっかりブッシュになど入れないということである。
とにかく足裏の痛点の緊急通報と、それに素早く反応した土踏まずの運動神経のおかげで大事に至らずに済んだが、自分が怪我をしてしまうということもさることながら、グループツアーの予定に影響がでなくてよかったと、そちらの方に胸をなでおろした。
今後軽率な行動は慎むべしと、あらためて肝に銘じたのであった。

まずは近郊のニローナ村

ニローナ村はブジから車で一時間ほどの所にあり、各種工芸の盛んな村である。
そんな工芸の中から、まずはローガン・アートを生業にしている家を見学した。ローガン・アートというのは、樹液を煮て作ったワックスに色を付け、それを細い糸状に伸ばして布に模様を描くというものである。
金属製のニードルにワックスを付け、手のひらでしばらく揉んで柔らかくし、それをすぅーと伸ばしすかさず布の上に線を描いて行く。ワックスは粘着性があり、乾くと布に定着し、洗っても落ちないとのことである。1980年にパキスタンのペシャワールの路上で、同じ手法でハンカチに絵を描いて売っているじいさんを見たことがあるが、今回ここで聞いた話では、この技術を伝えるのは(インドのこの辺りではと言うことだと思うが)もうこの家系のみとのことであった。ローガンアートはあまり興味が湧かない。

しかしどうにも私はこのローガン・アートには心を惹かれなかった。
確かに巧みにワックスの糸を操り、細かい模様を描き出す技はすごいと思うし、壁に飾られた作品を見れば、まるで刺繍と見まごうばかりの美しさであるのだが、はっきり言って刺繍の方が手が掛かっている分価値があると思う。でもまあそういうものは人によって感じ方が違うので、あまりケチをつけるようなことは言うものではない。それに私だって、この技が途絶えてしまうことはとても残念だと思うので、できれば今後もしっかり受け継いでいって頂きたいと思うのである。誰も何も買わなかった。

こうした工芸の家ではその技を見せるとともに、やはり自分の作ったものを買ってもらいたいのである。なにしろそれが「生業」なのだから当然なのである。しかし今回のツアーの面々は私と同じような趣味なのか、誰も何も買わなかった。
こういう状況というのは実に気まずいものである。先ほどまでその技について、家の歴史について、そしてこれまで受けた数々の褒賞について熱く語っていた職人さんもガイド氏も沈黙し、あれほど熱心にシャッターを切っていたツアー参加者もカメラを持つ手をだらりと下げてうつろな目をし、まるで三すくみの様な状況に陥るのである。
そして自分ではまったく買う気がないくせに、「誰かなんか買ってやれよな、なんでもいいからさあ」などと心の中で念じてしまったりするのである。しかしカッチ地方の人々はまだそれほどすれていないのか、見るだけ見て聞くだけ聞いて一パイサもお金を落とさない罪深きわれわれを、静かにやさしく許したもうたのであった。

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