異邦人が思う白い朝:デリーの環境対策

まだ私が若かりし頃、「異邦人」という歌がずいぶん流行った。
あの異国情緒あふれるメロディーと詩に、まだ見ぬ世界(特に中東あたり)に想いを馳せたものである。

その歌の中に「私を置きざりに過ぎてゆく白い朝」という歌詞が出て来るのだが、そもそもあの歌のタイトルは「白い朝」というものだったそうである。

異国で迎える白い朝。なんてロマンティックなんだろう。
こんな感じだろうか・・・

デリーの大気汚染

白く煙るデリーの街 / 2017年11月8日のニュースサイトより

急激に発展を続けるインドでは、深刻な大気汚染(それだけじゃないが)が進んでいる。上の画像はそんな大気汚染で煙るデリーの街である。ぜんぜんロマンティックなんかじゃないのだ。

そのニュースはたびたび日本でも報道されるが、ついにデリー市内の全小学校が、大気汚染による臨時休校という事態にまでなった(2017年11月7日)。なんでもWHOの定める安全基準の30倍近くにも達する大気汚染だというから、まさに異常事態である。

もちろんインド政府もただ手をこまねいているだけではなく、ずいぶん前から環境汚染対策は行ってはいる。

その第一弾とも言うのが、2001年に始まった公共交通機関のCNG化だった。
これはガソリンより環境にやさしいCNG(圧縮天然ガス)を燃料とするというもので、デリーなどの大都市から規制が始まった。

インド、CNG燃料で走るオートリキシャ

これが大気汚染の切り札になるかと思われたのだが・・・

しかしそんな対策も、車の普及のスピードには追い付かなかったようである。
燃料を変えても内燃機関を使用している限り、この大気汚染は止められないのだろう。ついにインド政府はこの6月(2017年)、2030年までに電気自動車以外の車両販売を中止すると発表したのだった。

まあその実現の可否は別にしても、すでにデリーでは数年前から電動のオートリキシャが走り始めている。
でも私は従前の(特に古いタイプの)オートリキシャが好きなので、ここでは特に紹介して来なかっただけなのだ。
でまあ、今さらではあるが、これがその電動式オートリキシャである。

デリーの電動式オートリキシャ

はたして救世主となるかどうかはわからないが、いずれは全部これに置き換えられるのだろう。

ドライバー氏のなんと晴れがましい笑顔であろうか。自分が新しい時代の担い手であることを自覚しているようである。

でもインドでは環境にやさしい乗り物はもっともっと昔からある。

上の写真でも右端に写っているが、自転車を改良したサイクルリキシャである。
これならいくら走っても、出るのは漕ぎ手の汗と息、それからウ〇コくらいなので、それほど環境に悪くない。

そしてもう一つ、やはり上の写真の右奥に写っている赤い丸の書かれた看板なのだが、これはデリーメトロの駅を示すものである。

デリーメトロは2002年から営業を始めた電車である。
開業当初は路線も限定的だったこともあり、車内はいつもガラガラだったが、今ではラッシュ時の主要駅では乗り切れないほどの乗客でごった返している。
とにかく今やデリーメトロは庶民の重要な足となり、他の大都市でも同様の路線建設が進んでいるので、少しは車離れにつながることであろう。

インドのデリーメトロ

これはもうラッシュアワーが終わったあとのホーム。

とまあ、なかなか大気汚染の進行を食い止めるまでには至らないインドであるが、その一方でまだまだ人力や動物の動力なども使用されており、そうした新旧入り混じった対策を進めて行けば、きっと今にきれいな空を取り戻すことができるのではないかと、かなりの期待を込めてそう信じたい。

まあ所詮私は、ちょっとふり向いてみただけの異邦人ではあるのだが。

ブロックプリントの版木

快適な空の旅・日本航空デリー便

昨年(2016年)秋の渡印の際は日本航空を利用した。

以前はエア・インディアをよく利用していたが、それはただ単に「安い」というだけの理由であり、別にエア・インディアのファンだったわけではない。本当は毎回日本航空(以下JALと記す)に乗りたいのである。

それが今ではJALでも安いチケットを出すようになったので、最安日を選んで早めに予約した。
料金は税やらなんやらすべて含めて8万4百円であった。しかもJALのサイトから座席の指定もできるので、私は中央(4人分が並んでるところね)の通路側を押さえておいた。

さて出発当日、成田空港のJALカウンターに行くと、職員の対応が何やらおかしい。穏やかな笑顔と丁寧な口調で申し分のない接客態度なのだが、私のチケットを見るや、こそこそとどこぞへ連絡をするのである。
こちらとしては特にやましいところは何もないのだが、今日の乗客の中でおそらく一番お金を払っていないシケた客だということが少々気がかりではある。何か無理難題を押し付けられるのかもしれない。

日本航空のデリー便

やはり日本人には日本の航空会社が肌に合うのだ。

やがて連絡を終えた職員は私に向き直り、「実は本日のフライトは団体のお客様で大変込み合っておりまして・・・」と言うのである。

ほ~ら来た、私はどうすりゃいいのだ。補助席か?それとも立ってつり革か?

しかし天下のJALはそんなことは言わなかった。

「できればプレミアム・エコノミーのお席にお移り頂けないでしょうか」と来たもんだ。

ただ悲しいかな、私はそういう席が世の中にあるということを知らなかった。なので一瞬何を言われているのか意味がわからなかったのである。

しかし天下のJALのきれいなおねえさんが、微笑みをたたえながら丁寧な口調でそう申すのである。おそらくそれは私に不利になることではあるまい。これがエア・インディアの不愛想な太ったおばちゃんに言われたら、即座に大声で「ノー!ノー!」と叫び、なんとしても自分の指定した席に座らせろと全力で主張したことであろう。

やはり私の感は当たっていた。プレミアム・エコノミーという席は、エコノミーよりグレードが上だった。
私は急に自分がお金持ちになったような気分になり、意気揚々と飛行機に乗り込んだ。乗り込むときも、フライトアテンダントの人にプレミアム・エコノミーの搭乗券を自慢げに提示した。

さすがにプレミアム・エコノミーである。シートは通常のものより幅があり、前の座席との間隔も広く、あまつさえフットレストなんてものまでついている。

日本航空のプレミアム・エコノミーの席

なんだか天下を取ったような気分である。

お飲み物のサービスではシャンパンをもらった。なにしろプレミアム・エコノミーだもんな。

日本航空デリー便、プレミアム・エコノミーのドリンクサービス

飛行機はまだ広島の上空だが、誠に快適な空の旅となりそうである。

機内食もいつもより上等のようである。

日本航空デリー便、プレミアム・エコノミーの機内食

私は機内食があまり好きではないので、内容の良し悪しはあまりよくわからない。でもトレイに余裕があるところがエコノミーと違うというのはわかる。

モニター画面も大きいので、いつもはロクに見ない機内上映の映画も見た。「君の名は。」だったが、見て泣いてしまった。

デリー到着前の軽食も、なにやら上等そうなものが出た。

日本航空デリー便、プレミアム・エコノミーの機内食

プレミアム・エコノミーではこれ以外にもカップ麺のサービスなどもあるらしい。後から知ったので利用できなかったのが残念だった。

私はあまり飛行機が好きではなく、特に往きのデリー便は昼間飛んでいくので寝ることもできず、毎回その長い時間を苦痛に感じているのだが、今回初めて苦痛を味わうことなく快適に過ごせた。

ああ、世の中にはこんなすばらしい世界があったのだなあ。

この体験に味を占めた私は、次回からは少しお金を足してでもプレミアム・エコノミーにしようかなと思い、さっそくJALのサイトで料金を確認したら、あ~ら、ずいぶんお高いのねえ。やだわ、お金を少し足せば済むどころか、三回くらい往復できる金額じゃないのよぉ。

かくなる上は帰国便も団体客で込み合っていただき、「誠に申し訳ないのですが、プレミアム・エコノミーのお席に・・・」となることを願うしかない。

帰国時、デリー空港のチェックインは何事もなくスムーズに行われた。
そして私は、プレミアム・エコノミーより小さなモニターで「君の名は。」をもう一度見た。

席は狭く、画面は小さかったが、涙がとめどなく流れるのは同じであった。

シンプルデザインの真鍮製シンギングボウル

石もて追われるようなことは決してするでないぞ:インドの列車への狼藉

前回前々回に続いてシャタブディ・エクスプレスの話である。

今までインドの列車には何度も乗ったが、今回初めて気づいたことがあった。

それがこれ、窓ガラスのヒビである。
インド・列車への投石まあ常日頃から物の取り扱いが荒っぽく(特に自分の物ではない場合など)、またメンテナンスの行き届かないインドでは、列車の窓ガラスにヒビが入っていて、それがしばらく放置されていても特に不思議ではない。

なので今までこういう光景を見てもあまり気にならなかっただけなのかもしれない。

インド・列車への投石しかし同じ列車の同じ車両で、いくつもの窓ガラスにヒビが入っているのを見たら、さすがにこれは異常と思わざるを得ない。いくらインドといってもである。

ほら、こちらは並んで二つ、まるで銃撃を受けた防弾ガラスのようになっている。

これはおそらく、いやまず間違いなく投石によるものであろう。

列車への投石に関しては、その昔チェンナイ滞在中にちょっとした暴動騒ぎがあり、その際暴徒らによる駅のチケットカウンターの焼き討ちと並んで、列車への投石があったというニュースを見た。
そして最近も、列車への投石が問題となっているというニュースを聞きかじってはいたが、こうして実際に窓ガラスのおびただしい数の損傷個所を目にすると、なるほど投石はなにも暴動の時だけでなく、もはや日常茶飯事と化しているのだなあと実感したのである。

窓ガラスが壊れるのも困るが、窓を開けっぱなしにしているところを狙われたらそれこそ大変である。なにしろインドの列車は今でも冷房がなく、窓を開け放している車両が大半なのであるから、石が体に当たれば大けがあるいは死に至ることだってありとても危険である。

でもたぶんその可能性は低いのだろうと思う。そもそも暴徒の行動でもわかるように、こうした投石の要因は日ごろの不満の表れであり、その矛先は上級列車(上級車両)に向かうであろうと思われるからである。

インド・列車への投石そこで狙われるのが、シャタブディやラージダニのような上級車両だけで編成されている列車であろう。

しかもご丁寧なことにシャタブディは水色、ラージダニは赤と、他の列車との違いを車両の塗装で表しているのだから、狙う方からすればこんな好都合なことはないのである。

と、今回のインドの旅では初めての乗車列車となったシャタブディ・エクスプレスでそんなことを思ったのであるが、期せずして最後の乗車列車となったのもまたシャタブディ・エクスプレスであった。

20時30分、ラクナウからニューデリーに向かっていたその列車は、30分ほど遅れてアリガル・ジャンクション駅に到着する直前であったが、突然バシッ!というするどい音が車内に響いた。

インド・列車への投石私は驚いて斜め前方の窓(ひとつ前の席の窓)を眺めると、あらら、なんとまあ窓ガラスにヒビが入っているじゃないの。しかもその真ん中には穴まであいているじゃないのよ。
それにしてもまさか自分の乗ってるすぐそばに投石されるとは思ってもみなかった。

まあ窓は二重ガラスになっているので、外側のガラスが割れただけで車内には特に影響はなかったが、その席は若夫婦と小さい子供が座っており、もし万が一石やガラスの破片が車内に飛び散ったらと思うと実に怖かった。

証拠もなくこうした仕業を貧困層の人たちによるものだと決めつけるのはよくないが、大きな駅の近くの線路際がスラム化していることも事実である。

で、これはあくまでひとつの仮説として言うのだが、もしそうした貧困層の子供が列車に向かって投石しているのであるなら、ぜひそのピッチング技術をクリケットの練習につぎ込み、プロ・クリケット選手になることを目指して欲しいと切に願う次第である。

あの天上に輝く明星がプロリーグの星だ!

あの星まで駆け上がれ!

インド先住民族の工芸品ドクラ