南インドの休日:その25 / トリヴァンドラム空港からデリーへ

今回の南インドの旅はコヴァラム・ビーチが最終目的地であり、ここに三泊も滞在したのであるが、その間の面白いエピソードのようなものはほとんどない。
なんたってリゾート滞在なのだ。通常のインドの旅のようにしょっちゅうトラブルに見舞われていてはのんびりできない。
そのため今回は奮発していつもは泊まらないような高いホテル(と言っても一泊一万円くらいだけど)に泊まったのだ。
そう、インドで起こるトラブルのいくつかは、お金で簡単に防げたりするのである。

ということで、いよいよデリーに戻る日が来た。
帰りはトリヴァンドラム空港から飛行機に乗るのだが、空港までのタクシーはホテルで事前に頼んでおいた。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトコヴァラム・ビーチから空港までは15Km程度の道のりで、タクシー代は750ルピー(約1500円)であった。
タクシーは8時半の約束だったが、ちゃんと早めに来て待っていてくれたので、チェックアウトを済ませるとすぐに出発した。

さすがのゆったりした南インドでも、朝の通勤通学時間は道行く車も結構せかせかしている。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトそんなぷち混雑をすり抜け、タクシーは30分足らずで空港に到着したが、チェックインは9時からとのことなので15分ほど待つことになった。

でもそれでいいのだ。

実は帰りの飛行機は直行便ではなくムンバイ経由なのである。
まあ単なる経由便で乗り換えなどはないのだが、当然ムンバイでの乗降客のための待ち時間もあるため、来た時より機内に長時間拘束されることになる。
それは閉所恐怖症の毛のある私としてはとてもつらいことなのだ。
なので今回はぜひとも足元の広い席を確保したい。来るときにはあちらからのせっかくのご提案をむげに断ってしまったが、今回はこちらから頭を下げてでも広い席が欲しいのである。

ということでめでたく一番乗りでのチェックイン手続きと相成ったのだが、荷物の重量のことで少々もめてしまったため、隣のカウンターでの手続きの方がどんどん進んで行ってしまい気が気ではなかった。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトそれでもまだなんとか広い席が空いていて、プラス600ルピー(約1200円)で快適さを買うことができた。

今回利用するフライトは来た時と同じインディゴ航空の6E-176便というやつで、料金は4500ルピー(約9000円)であった。ちなみに11:00発でデリー到着は16:10の予定である。
そこに快適代600ルピーが加わったので5100ルピーとなるのだが、5時間分の快適さと思えば安いものである。なにしろ一時間当たり120ルピー(約240円)なのだから。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトそしてこれがその一時間120ルピーの快適空間である。
これは非常口のところにある席ゆえのことなので、数に限りがあるので早い者勝ちなのだ。
しかも今回も機内は満席なので、このスペースは値千金なのである。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトなお、この裸足の足は隣のインド人のものであり私のではない。
でも私もサンダル履きで搭乗しており、すでにそのサンダルは前の座席の下に突っ込んであるので私も裸足である。
いくら国内線といっても飛行機なのだから、おっさん二人が仲良く裸足で並んでいるというのはちょっと変かもしれないが、先ほど搭乗口近くでベンチに座っていたら、数人の裸足の男たちが目の前を通り過ぎて行った。彼らはおよそパイロットや空港係員には見えなかったので、おそらく搭乗客だと思われる。裸足のまま空港に来て、そして飛行機に乗ってしまうなど、さすが南インドといった感じであるが、とにかく私や隣のインド人はここまでサンダルを履いて来ているだけマシなのである。
ちなみにムンバイで隣のインド人と入れ替わりに乗り込んで来たビジネスマン風の若い男(いやもうホントに絵に描いたような、笑っちゃうくらいのエリートビジネスマン風で、席に着くやいなやどこぞに電話を掛け、それが済むとおもむろにパソコンを広げてなにやら確認し、さらには新聞をバサバサ広げて読み出したりと、あーあんたはすごく仕事のできる人なのねえ、なのであった)は、機内の異様な雰囲気を敏感に嗅ぎ取り、私に「この飛行機はどこから来たのか?」と聞いて来た。私が「トリヴァンドラムからだ」と答えると、妙に納得した顔になり、それ以降私には何も話しかけて来なかった。

ちょっと話が先に飛んでしまったが元に戻す。

離陸はほぼ定刻だった。
つまり午前11時頃ということで少々小腹が空いてきた。
往きは前の座席の背もたれが自分の額にくっつきそうな(気がする)くらい狭い席だったので何も食べる気がしなかったが、今回はスペースも心もゆったりしているので、機内販売のカップヌードルを注文することにした。

メニューにはノンベジもあったが売り切れとのことでベジタリアンになった。しかしそんな短時間で売り切れたとも思えず、たぶん初めから一種類しか置いていないのだろう。
値段は200ルピー(約400円)とカップ麺にしては高いが、きれいなフライトアテンダントのおねえさんんがお湯を入れてくれるので仕方ないのかもしれない。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトカップヌードルは本当に日清のカップヌードルであった。
容器にはサッカー選手らしき人たちが印刷されていて、その中には日本人みたいな人もいたが、私はサッカーをよく(というかぜんぜん)知らないので誰だかわからない。

ベジタリアン料理と聞くと、日本人はつい優しい味を想像すると思うが、インドをなめてはいけない。
辛い物好きの私が、すっげーかっれー!と思うほどの味であった。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライト二時間ほどでムンバイの街が見えて来た。
この日は11月26日だったのだが、期せずして2008年のムンバイ同時多発テロの起こった日であった。(朝のニュースでやっていてそれと知ったのである)

上空からではあったが、犠牲となられた方々にしばしの黙とうを捧げた。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトムンバイでは結構な人数の人が降りて行き、また同数の人が乗って来た。先述のエリートビジネスマンもここから乗って来たのであるが、つまりここから先もまた機内は満席状態なのである。
よくまあこの広い席が確保できたものだと、あらためて胸をなでおろした。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトさて、ムンバイでは大勢の客の乗降と機内の清掃でだいぶ時間がかかるわけだが、その間トイレを使わせてくれないのには閉口した。
なにしろ飛んでる間は通路側の人(あの裸足のおっさん)に遠慮してトイレには行けなかったのだ。なのであの辛いラーメンを食べるときだって、ちょびっとの水だけしか飲まないようにするという努力までしていたのである。

それでも生理現象はやって来る。人間だもの!

もちろんそういう状況の人は私だけではなく、とっかえひっかえ誰かがトイレに突き進んで行ってはフライトアテンダントに跳ね返されている。

しかしそんな中、ひとりのおばさんがフライトアテンダントのねえちゃんに執拗に食い下がり、ついには無理やりトイレのドアを開けて中に入り込んだではないか。
これはチャンスである。一人がやってしまえばあとは二人やろうが五人やろうが同じようなものだ。
私はすかさずトイレに突き進んで行き、ドアの前に仁王立ちした。もうフライトアテンダントの静止なんか無視なのだ。また普段なら女性が入ってるトイレのすぐ前に立ちはだかるなどという失礼なことは決してしないのだが、今回だけは勘弁である。その代り私は何も聞こえなければ何も匂わないと宣言してもいい。

やがておばさんがトイレから出て来た。
そして私はフライトアテンダントが割り込めないよう体でブロックしながらおばさんとすれ違い、めでたくトイレに入ることができたのである。

トイレから出るとそこには多くの人たちが列を成していた。
事ここに至り、ついにフライトアテンダントは静止をあきらめ、トイレは完全に民衆に解放されたのだった。

最初に先便、いや、先鞭を切ったおばさん、あなたはわれわれのジャンヌ・ダルクだ。季節はずれのミストレルだ。 国民万歳!

とまあこうして一人も怒りや膀胱を爆発させることなくトイレ問題は無事解決し、その後順調にフライトを続けたインディゴ航空6E-176便は、ほぼ定刻にデリー空港に到着したのであった。南インド、トリヴァンドラムからデリーへのフライトこのあとまだ宿までの移動があるのだが、特にここに書くようなトラブルは何も起こらなかったので、これにて「南インドの休日」はおしまいなのである。

長々とお付き合い頂き誠にありがとうございました。

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