さらば体重計:インドのコイン式体重計シリーズ最終回(たぶん)

私の大好きなインドのもののひとつにコイン式体重計がある。

コイン式体重計は主に駅やバスターミナルなど、人の多く集まる公共交通機関の施設などに設置されており、派手な電飾をびかびか光らせ人心を惑わせ、魅せられた人々はついつい計測台に乗っかりコインを投入してしまうという、なんとも誘蛾灯的またはおにいさん遊んでかない的街娼的な装置なのである。

ところがそんなコイン式体重計が、ここ何年かで急速にその姿を消しているのである。

かつては大きな駅ではそこらじゅうにコイン式体重計が設置されており、光あるところに影があり、柱あるところに体重計ありと言われたほどであったが、いまは柱の根元(?)にはただただ列車の時間まで寝て待つ人々がうずくまっているだけとなった。

しかし私は、デリーにまだコイン式体重計が生息している場所を知っている。
それはデリーの中心地コンノート・プレイス、リーガル・シネマ前なのである。
なので早速そこに行ってみた。

インドのコイン式体重計ほら、あった。

体重計の前にはすぐ横で商売をする露店のおやじが飲料水の入ったジャーなんか置いてしまっているが、なあに、そんなものは体重計マニアの敵ではないわい。
私は横から素早く計測台に乗っかり、それでいて決して慌てたりせず、安定した計測が得られるように充分な時間を空けたのちにコインを入れた。

よっ!おにいさん、通だね!

さあ、下の取り出し口に計測数値が刻印されたカードがポトリと落ちて来る・・・

インドのコイン式体重計はずであったのだが・・・

出てきたのはかつての硬券切符のようなカードではなく、スーパーでもらうレシートのような薄っぺらな紙だった。

う~ん、どうやら機械の中身が変えられてしまったらしい。

姿かたちは以前と変わりないように見えるが、実は性格がすっかり変わってしまった旧友を見るようである。

これではダメなのである。
私の好きな体重計は、体重の重みで回転盤が回り、その回転盤の周囲に配置された数字がカードに押しつけられて下に落とされるという、完全機械式のものなのである。

それがこんなレシートみたいにプリンターで印字されるものになってしまって・・・

なにが「HAVE A NICE DAY」だ、もうがっかりだよ。

インドのコイン式体重計そんな失意の中、とぼとぼと向かいの地下街パリカバザールに移動した私であったが、そこで目に飛び込んで来たのがこの体重計であった。

しかしぬか喜びは禁物である。
やつらは一見昔と変わらぬ風貌で親しげに近づいて来るが、心はすっかり変わってしまっているかもしれないのだ。
もしかしたら宗教やマルチ商法をしつこく勧めて来るかもしれない。

おのおのがた、くれぐれも油断召さるな。

インドのコイン式体重計私は警戒しながら計測台に乗り、コインを投入してみた。

すると機械はかつて見慣れた一連の動きを見せ、やがてポトリとカードを落として来たのである。

おお、お久しぶり!

そんなわけでまだ少数とはいえ、かつての方式のコイン式体重計は生息しているのが確認されたわけであるが、しかしインドの体重計界も流れはすでにデジタル時代へと移行しているのである。
私はそういう最新式のものにまったく興味がないので今まで(たぶん)紹介して来なかったが、かなり前からハイテク(まあ所詮体重を測るだけの機械なので大した技術じゃないが)な体重計も登場しており、中には身長まで同時に測れるものなんてのもあるのである。

とまあ、とにかく旧式の体重計はほぼ絶滅に瀕したといってもよく、従ってインドのコイン式体重計の紹介もおそらくこれが最後になるのではないかと思うのである。

全国のコイン式体重計ファンのみなさん、

コイン式体重計は永遠に不滅です!